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【ミレニアル世代のマネー学】資産運用の結果に影響を及ぼす「金融商品のコスト・税金」

  • 2021.3.22
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銀行にお金を預けても、お金はほとんど増えません。ミレニアル世代・Z世代と呼ばれるみなさんがこれからお金を増やしたいならば、投資をすることが欠かせません。

投資をするというと、つい「いくら儲かるか」「どのくらい増やせるか」に目が行きがちです。その気持ちはわかるのですが、それよりも気にしてほしいことがあります。それは、「金融商品のコスト・税金」です。なぜなら、金融商品のコストや税金が、資産運用の結果に影響を及ぼすからです。

今回は、金融商品のコスト・税金について解説していきます。

取引手数料を甘く見てはいけない! 投資信託は「信託報酬」に要注意

投資では、主に商品を買うとき・商品を保有しているとき・商品を売るときに所定の手数料がかかります。

主な金融資産の取引手数料
主な金融資産の取引手数料

表:筆者作成(2021年3月2日時点)

上の表のとおり、取引手数料は商品の種類や投資を行う金融機関によって異なります。ただ、共通しているのは、基本的には手数料の分だけ損になるということです。ですから、手数料は安いに越したことはありません。

しかも、取引手数料はどの金融機関を選ぶかによっても異なってきます。

たとえば、株式投資の際にかかる売買手数料。多くの金融機関では、ひとつの注文が成立(約定)するごとに手数料がかかる「約定ごと」のプランと、1日の約定代金の合計額で手数料が決まる「定額」のプランの2つを用意しています。

主なネット証券の取引手数料

1注文ごとの約定代金に応じた手数料(現物取引)

1注文ごとの約定代金に応じた手数料(現物取引)

表:筆者作成(2021年3月2日現在、税抜き)

1日の約定代金合計額に応じた手数料(現物取引)

1日の約定代金合計額に応じた手数料(現物取引)

表:筆者作成(2021年3月2日現在、税抜き)

約定ごとに手数料がかかるプランの場合、株式を買うとき・売るときにそれぞれ手数料がかかります。
たとえば、300万円の株式を買って売った場合(価格変動はなかったものとします)、楽天証券やSBI証券の手数料の合計は1842円なのに対し、マネックス証券では9000円かかります。7000円以上の差があるのです。

また、定額のプランの場合、最近は「1日100万円まで0円」とする証券会社が増えてきました。
以前は「取引回数が少ないなら約定ごと、多いなら定額制」とお話ししていましたが、頻繁に取引をしない方でも、定額制を選んだ方が手数料を節約できるケースがあります。自分がどんな取引をするかで選ぶといいでしょう。

以前の記事(【ミレニアル世代のマネー学】金融商品の特徴と、リスク、リターンを教えて!)でおすすめした投資信託では、買うときに購入時手数料(販売手数料)・保有中に信託報酬、そして売るときに信託財産留保額という手数料がかかります。

このなかで、投資信託を買う際に最も重要なのは、信託報酬です。
信託報酬は、投資信託を持っている間ずっと、資産から少しずつ引かれていきます。投資信託は、長期・積立・分散投資で長期間にわたって保有することが多いので、ほんの少しの差が大きな利益の差となることがあるのです。

たとえば、信託報酬が0.8%のファンドAと、信託報酬が1.5%のファンドBがあったとします。この2本の投資信託は、どちらも年3%の運用利回りを得ることができました。この2本の投資信託に毎月3万円ずつ積み立てをした場合、リターンにどのくらい差がつくと思いますか。

信託報酬の差は30年後にどう表れる?

運用利回り3%のファンドに、毎月3万円の積み立てをした場合(※税金は考慮せず、複利計算)

運用利回り3%、毎月3万円の積み立てケース

グラフ:筆者作成

ファンドAの資産総額は1526万円だったのに対し、ファンドBの資産総額は1360万円。たった0.7%の違いが、30年で166万円もの違いを生んだのです。

こうしてみると、信託報酬は少しでも安い商品を選んだほうがいいことがわかりますね。

なお、購入時手数料は購入する金融機関によってかかる場合・かからない場合があるので要注意。最近は購入時手数料のかからない「ノーロード」と呼ばれる投資信託が増えてきています。また、売るときの信託財産留保額は、投資信託の運用を安定させるための手数料なので、長期保有する前提であれば、あったほうがいいともいえます(ない投資信託も多くあります)。

外国債券を売買するとき、外貨預金をするとき、FX(外国為替証拠金取引)をするときなどには、為替手数料がかかります。
為替手数料は、他の通貨への両替にかかる手数料です。たとえば円をドルに交換するときいくら、ドルを円に交換するときにいくら、という具合にかかります。通貨の価値は
日々変動しています。その変動によって、利益が変わってくることもあります。

外国債券や外貨預金の場合は、購入時(預け入れ時)にいくら、売却時(引き出し時)にいくらという具合に、金融機関ごとに定められた金額を支払います。たとえば三菱UFJ銀行のネットバンキングで1万ドルを預金する場合の為替手数料は、25銭×1万ドル=2500円となります。
FXの場合は、通貨を買うときの為替レートと売るときの為替レートに差があります。この差(スプレッド)が手数料になります。スプレッドは原則として固定されていることがほとんどですが、相場が急変したときなどに広がる(大きくなる)ことがあります。

さらに、実は生命保険でも販売手数料を支払っています。
生命保険に支払う保険料には、将来の保険金支払いに充てられる「純保険料」と、保険会社の経費となる「付加保険料」が含まれています。純保険料はどの保険会社も同じですが、付加保険料は保険会社が自由に決められます。この付加保険料の中に含まれるのが販売手数料です。
生命保険の販売手数料は商品によりまちまちで、公表されていないケースも多くあります。一般的には、円建ての保険でおおよそ2〜3%、外貨建ての保険で6〜8%。他の投資に比べて高くなっています。

投資の利益には税金がかかる!

手数料と並んで大切なのが、税金です。投資で得られた利益には、所定の税金がかかります。

主な金融資産の利益にかかる税金
主な金融資産の利益にかかる税金

表:筆者作成

表にあるとおり、預貯金・株式・債券・投資信託・外貨預金・FXの利益には、20.315%の税金がかかります。これは「源泉分離課税」といって、他の所得とは関係なく税金がかかることになります。1年間で得られた利益(資産を売るなどして生じた「実現益」)が20万円以下の場合は、原則として税金はかかりません。しかし、20万円を超える場合には、20.315%の税金がかかるというわけです。

「預貯金でも税金がかかるの!」と驚かれる方もいるかもしれませんが、預貯金で得られる利息にも20.315%の税金がかかり、源泉徴収されます。たとえば預金金利が年0.001%のとき、100万円預けて得られる利息は年10円。この10円にも税金がかかるので、実際に振り込まれる利息はわずか8円になってしまうのです。

不動産投資・仮想通貨・ソーシャルレンディングといった投資では、「総合課税」という方法で課税されます。これは、働いて得た給料など、他の所得と合わせて課税される投資です。
このうち、住民税はほとんどの場合一律で10%ですが、所得税は合計の所得によって税率が5%〜10%の7段階に変わります。所得が少なければ、所得税5%・住民税10%、合計15%で済むかもしれません。しかし、仮に大儲けした場合は最大で所得税45%・住民税10%、合計で55%も課税されることに。なんと税金だけで半分以上も引かれてしまいます。

また、生命保険の満期保険金や死亡保険金、個人年金などには、契約者・被保険者・保険金の受取人などの関係に応じて、贈与税や相続税がかかる場合もあります。贈与税や相続税は、一定の金額まで非課税になる「基礎控除額」が定められています。受け取る金額がこの範囲内ならば税金はかかりませんが、この金額を上回る場合は、税金がかかってしまいます。

さらに、生命保険の解約返戻金(生命保険を解約したときに戻ってくるお金)が払い込んだ保険料よりも多かった場合にも、利益の部分には税金がかかります(利益がない場合はかかりません)。こちらも、贈与税や相続税と同様に、一定の金額まで非課税になる「特別控除」が定められており、その範囲内で収まるならば税金はかかりませんが、上回る場合は税金がかかります。

話を投資信託に戻しますが、投資信託は「源泉分離課税」ですから、利益に対して20.315%の税金がかかることになります。

単純計算ですが、前項で紹介したファンドAを全額売った場合、1526万円から元手の1080万円を引いた446万円(利益)に対して20.315%の税金がかかることになるので、税額はなんと約90.6万円! 最終的な手取りの利益は355万円ほどになってしまいます。確かに資産は増えましたが、90万円以上も引かれてしまうのはもったいなく感じるのではないでしょうか。

税金を減らすことができる「NISA」と「iDeCo」

実は、この20.315%の税金をゼロにして、利益を丸ごと受け取れる制度があります。NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)とiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。

NISAは投資で得られた利益にかかる税金がゼロにできる制度。
たとえば、投資で100万円の利益が出た場合、通常ならば約20万円が税金で引かれてしまうので、残りは80万円に満たない金額になってしまいます。しかし、NISAを使って売買をすると、100万円が丸ごと受け取れるのです。

また、iDeCoは老後の年金を上乗せするための制度。60歳までの間、毎月一定の掛金を支払って自分で運用し、資産を増やします。そして増えたお金を、老後(60歳以降)に受け取ります。iDeCoの場合は、運用益が非課税になるだけでなく、所得税や住民税が安くできたり、資産を受け取るときに優遇が受けられたりするメリットがあります。

NISAとiDeCoはぜひ使うべき制度です。とはいえ、ミレニアル世代・Z世代のみなさんは、まだそれほど貯蓄が多くないかもしれませんし、毎月投資に回せるお金も少ないかもしれません。ですから、まずは途中で引き出せるNISAを利用し、毎月の貯蓄金額が増えてきたらiDeCoも利用するというのがおすすめです。

投資の手数料と税金についてお話ししてきました。増やすことももちろん大切ですが、それよりもまずは手数料や税金に注目すべき理由がお分かりいただけたのではと思います。
投資の手数料も税金も、どちらも利益を減らしてしまうコストですから、少しでもなくす方法を考え、利用していきましょう。

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