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水川あさみ×山田真歩に惹かれずにはいられない 『ナイルパーチの女子会』が描く恐怖と共感

  • 2021.3.20
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(c)「ナイルパーチの女子会」製作委員会2021

BSテレ東で放送中の『ナイルパーチの女子会』は、柚木麻子の原作を、水川あさみと山田真歩をメインキャストにドラマ化したものだ。地上波の放送ではないが、次の放送が気になって仕方のない番組のひとつになっている。

水川演じる大手総合商社に勤めるキャリアウーマンの志村栄利子は、主婦インフルエンサーのSNS日記「おひょうのダメ奥さん日記」を楽しみに読んでいた。ある日、偶然その作者の丸尾翔子(山田真歩)と出会うところから物語はスタートする。

お互いに女友達がいない2人は意気投合。出会ったその日には、連絡先を交換し、自転車に2人乗りをして、また会おうと約束をして別れたのだった。

しかし、次に栄利子が連絡をすると、翔子はいっこうに電話に出ない。そのことで嫌われたのではないかと疑心暗鬼になった栄利子は、何度も何度も電話をし、SNSをすみからすみまで読み、持ち前の仕事能力を発揮し、市場調査と偽って翔子の夫の勤め先と思われるスーパーにまでしらみつぶしに電話をかける。結果、翔子の家を突き止める。

その行動に疑問を感じた翔子だったが、せっかくできた友人が心配してくれているからと、付き合いを続けていく。しかし、栄利子の行動はエスカレート。翔子のストーカーのようになっていき、ついには翔子のブログを乗っ取り、商社の仕事にも身が入らなくなってしまう。

本作のタイトルにある「ナイルパーチ」というのは、スズキの代用品として、日本でもよく食されている魚で、その狂暴性で生態系を壊してしまう恐れのあるほどの生き物である。実際、水産資源、つまり人間が食べるために、元々いたアフリカ・ヴィクトリア湖に放流されると、その生態系を壊してしまったという事実もある。また、その姿が美しいと鑑賞魚としても人気があるのだという。

栄利子が商社で扱っているのも、そのナイルパーチであり、彼女はナイルパーチに重ねられている。彼女は仕事もできて美しく、誰もがうらやむような生活をしているように見えるが、人間関係で納得がいかないことが起こると獰猛化し、そのコミュニティを崩しながら生きてきた。

栄利子自身もそのことに気づいている。栄利子が翔子を半ば脅迫して無理やり旅行しているときに、ナイルパーチは外来種は人間に(無理やり放流されて)競争させられてきたけれど、女性も同じで、女性たちに団結されると困る男性社会によって、競争させられたのだと説く。

「女はおろかで協力できない生き物だって刷り込まれてきた」「なんとかして他の女とは違う人間になって、男たちに認められたい、対等になりたいって思ってきた」と栄利子が翔子に語るシーンは視聴者として共感できるものがあった。だが、翔子には「言ってることはわかるけど、すごく意識高いんだね」と言われてしまうシーンを見てはっとさせらるものがあった。

栄利子が翔子にしてきたことは、恐怖すら感じるほどのことであるから、この言葉にどんなに真実味があっても、簡単には乗っかることはできない。また、栄利子のような立場ではない人にとっては、すごく遠い言葉なのかもしれない。そして、人が簡単に分かり合えたり、共感できるということは、理想であり、実際には難しいことなのかもしれないと気づかされる。

2021年になり、シスターフッドを描いた作品も多くなってきた。そういうものに勇気づけられる面も多かったが、『ナイルパーチの女子会』には、正直、痛みと恐怖がある。観ていて、他人事とは思えない部分も多く、自分自身も削られるような部分もある。冒頭で栄利子と翔子が自転車に2人乗りをしているシーンについて書いたが、それも北野武監督作『キッズ・リターン』や現在公開中の映画『あのこは貴族』の2人乗りとはまるで異なる意味となっている。それだけに、一体この作品がどこに向かうのだろうと思えてくる。

第6話、第7話では、翔子もまた栄利子のように、連絡がつかない憧れの主婦ブロガーに執着を始めそうになっているシーンが描かれる。誰でも、同じような過ちを起こすということが示唆されていることで、悲しい方向性ではあるが、翔子と栄利子が近づいているようにも思えてしまった。

柚木麻子の作品は、テレビドラマ・映画化された『伊藤くん A to E』を観ても、女性たちが、社会の中でしなくてもいい競争をさせられている痛々しい状況を突き放して描き、そこを乗り越えたところに光が見えるものも多い。『ナイルパーチの女子会』も、栄利子が翔子が、どのようなところに行きつくのか、最後まで見守りたいと思わせられた。(西森路代)

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