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<試写室>反骨のお笑い求道者・村本大輔の目指すものとは? テレビ界を覆う“空気”の本質にも迫った意欲作「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」

  • 2021.3.19
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ウーマンラッシュアワー・村本大輔の近年の活動を通して、お笑いとメディアの役割と可能性を問うドキュメンタリー番組、BS12スペシャル「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」が、3月19日(金)夜9:00よりBS12 トゥエルビにて放送される。

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芸人・村本大輔の本質に迫ったドキュメンタリー、BS12スペシャル「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」がいよいよ放送!
芸人・村本大輔の本質に迫ったドキュメンタリー、BS12スペシャル「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」がいよいよ放送!

2013年の「THE MANZAI」(フジテレビ系)で優勝し、一躍売れっ子お笑い芸人の仲間入りを果たした村本。定評のあるネタだけでなく、テレビでも持ち前のキャラクターが人気を博し、冠番組を担当するなど芸人として着実な歩みを進めていた。

だが、原発や沖縄の基地問題などの社会問題を漫才のネタにし始めた2017年頃からテレビ出演が激減。2020年のテレビ出演はたった1本だった。そんな中で、彼はジャーナリストさながらに福島や沖縄などへ足を運び、そこで暮らす人々の“生の声”を聞いて回り、人々の思いを“笑い”に変え続けていた。

果たして彼のネタの何が心に響くのか? 番組では、常にお笑いのネタを探し続ける村本の姿に密着する。さらに、村本が「テレビから消えた理由」を関係者に取材。見えてきたのは、テレビの制作現場に漂う空気、そして社会におけるお笑いの役割と可能性だった。

テレビから消えた一人の芸人を通して、「テレビ」というメディアのあり方を見つめ直す同番組を、今回「WEBザテレビジョン」が一足先に視聴。オリジナルレビューで番組の魅力を紹介する。

テレビから消えた村本大輔の“現在”とは?

テレビ出演が激減する中、村本は全国を回り精力的に独演会を行なっていた
テレビ出演が激減する中、村本は全国を回り精力的に独演会を行なっていた

ウーマンラッシュアワーというコンビ、そして村本大輔というお笑い芸人に対して、どのようなイメージをお持ちだろうか。「ファンに手を出すゲスキャラ」、「社会問題をネタに笑いを生む杞憂な芸人」、「何かと炎上を繰り返す男」など、それぞれ思うことはあるだろう。

裏を返せば、それだけテレビ界に強烈なインパクトを残した芸人であり、その実力が広く認められていたとも言えるが、そんな彼をテレビで目にする機会は近年急激に減ってきている。番組内でも年ごとの番組出演本数について言及されているが、ある時期を境に状況が一変したことが数字にハッキリと表れているのはなかなかショッキングだ。

そんな「テレビから消えた」村本は、全国各地を精力的にめぐり、自ら会場を手配し“独演会”を行っていた。この番組の撮影を始めた2019年、村本は1年で600回以上のライブを行ったという。そして会場はいつでも満員の客であふれていた。村本の笑いを支持する観客は、全国にたくさんいるのだ。

ではなぜ、村本はテレビから消えてしまったのか。村本は「(テレビに出演することで)自分が犠牲になっている感じがした」と、テレビ番組の中で自身が求められる役割に対して疑問を感じていたことを明かしたが、多くの視聴者は彼が自らテレビと距離を置こうとしたとは考えていないだろう。

テレビで「映してはいけないもの」は誰が決めるのか

人気タレントがテレビに出演しなくなる、いわゆる「干される」という状況に対して、近年は多くの視聴者が過敏に反応するようになった。村本についても、彼の政治的発言や社会問題への言及に対して「何らかの“忖度”が働いている」と見る向きは少なくない。

そんな中、村本の番組出演が減ることになった“ある事件”当時のマネージャーや、村本の番組を企画していたテレビ制作会社のプロデューサーが、それぞれの立場から当時目の当たりにしたことや、感じていた「難しさ」を語っていく。そこで浮かび上がってくるのは、制作の現場に漂う“空気”の存在だ。

「コンプライアンスというより『面倒くさいから止めとこう』というのが一番大きい気がする」という制作サイドの言葉からは、そこに明確な意志が存在せず、何が問題と思っているのかさえ判然としないまま「何となく」避けられていくタレントや、うやむやになった企画が多数存在することを伺わせる。

そんな制作サイドの思いを知ってか知らずか、村本はある日のライブ終わり、カメラに対してこんなことをこぼしていた。

「『人を傷つけないお笑い』ブームみたいなこと言われてますけど、そんなの存在するわけない。食材使わずに料理するようなもんです。人間の感性なんて無限ですから、誰かは絶対(傷ついている)。(そんなことを)全員が気にし始めたら、お笑いなんて終わるんじゃないですか」

そして、番組は「テレビのルールを決めるのは誰なのか?」という素朴な疑問から、放送法そのものにも切り込んでいく。果たして法律が規定しているものは何なのか、法解釈の観点から読み解きながら、マスメディアが向き合わなければならない「表現の自由」をめぐる問題にも触れていく。

エンターテイメントの本場・アメリカで、村本の笑いは通用するのか?

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また、2019年夏にアメリカ・ニューヨークを訪れた際もカメラが密着。村本は本場の“スタンダップコメディー”に挑戦するため、アメリカへの移住を計画していた。渡辺直美や綾部祐二といった芸人仲間とは異なるアプローチで“笑い”に没頭しようとする村本の姿を映し出す。

スタンダップコメディーとは、たった一人でマイクの前に立ち、さまざまな「タブー」をネタにするというもの。アメリカにおける“笑い”はこれが主流で、村本は偉大な先人たちのパフォーマンスをYoutubeで目にして以来、強い憧れを抱いたという。

訪れたコメディークラブでは、黒人女性のコメディアンが「人種」や「性」といったデリケートな話題を臆すことなく笑いに変えていく様子も紹介。その光景を見れば、村本が求めているものがここにあることは明白だが、その中でコメディアンたちが果たすべき役割についても言及されている。

そんな村本が、「オープンマイク」と呼ばれるコメディアンたちのネタ見せの場に参加することに。自らの“笑い”をダイレクトに届けるため、村本は拙いながらも英語でネタを披露していく。その受け止められ方には、「なぜ日本ではこれが許容されないのか」という思いもよぎることだろう。

宮城、沖縄、そしてお台場…村本が笑いに込めた思いとは

2019年10月の台風で甚大な被害を受けた宮城・丸森町を訪れた村本は、半年が経っても復興が進まない現状に胸を痛める
2019年10月の台風で甚大な被害を受けた宮城・丸森町を訪れた村本は、半年が経っても復興が進まない現状に胸を痛める

テレビが村本を「遠ざけた」要因として語られるのは、村本自身の政治や社会問題に対する関心の高さだ。きっかけはインターネットテレビ局で報道番組を担当したことだったが、村本は番組を通じて全国を取材する中で、現地の人々とたくさん対話をしたことが大きな「気付き」になったと明かす。

ライブのため訪れた宮城では、2019年10月の台風で甚大な被害を受けた丸森町に足を運ぶ場面も。報道が減り、人々の中で「無かったこと」のようになる中、まるで復興が進まない現状を目の当たりにした村本の姿からは、地上波では見せたことのない一人の人間としての感情があふれ出る。

また、沖縄では「まーちゃん」こと小波津正光と対面。沖縄の抱えるさまざまな問題を笑いに変えてきたまーちゃんとの対話などを経て、村本が移動中に語った言葉が印象的だ。

「丸森町の被害が、もう終わったかのように、テレビで扱わなくなった。原発の問題も沖縄の基地の話も『いつまで言ってるんだ』って、一生懸命過去のものにして風化させようとするんですけど。(みんな)平和だと思い込んでる。だから、平和じゃない所を指差して、平和だと思っている(みんなの)安心を傷つけたい(笑)」

そうして村本は、相方・中川パラダイスと共に2020年最初で最後のテレビ出演へと向かっていく。とうに腹を括った彼が、ゴールデンタイムに叩きつけた笑いはどのようなものとなったのか。ぜひその目で見届けてほしい。

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