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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.24 喜怒哀楽の示し方

  • 2021.3.19
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クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.23 アミ 小さな宇宙人

vol.24 喜怒哀楽の示し方

湯船に浸かりながらネットサーフィンをしていると、スマホの画面に表示された
「バッテリー残量が少なくなっています」の文字。

あと20%なら余裕でしょ、と低電力モードではなく“閉じる”を選択しYouTubeを開いた。

再生する動画を決めあぐねたままスクロールを続けていると、不意に頭の奥が痛む。

パソコン仕事にLINEの返信、食事しながら流し観するT V。浴室にまでiPhoneを持ち込んでいるのだから、眼精疲労にならない方がおかしいのだけど。

左手で素早くサイドボタンを押しスリープモード。

真っ暗になった画面からも電磁波が発せられている気がして、お風呂の蓋の上のタオルにiPhoneを置き、こめかみの辺りを人差し指と親指でゆっくり揉み解しながら目を閉じた。

人間は目で受けた光の像を神経信号に変換し、それを脳へと伝達して物を見ている。

だから、目だけじゃなくてその奥の頭も痛くなっちゃうのかなぁとぼんやり。

お風呂から上がった後、流石にもうブルーライトを浴びる気にはなれず、眠くなるまで読書をすることにした。

リビングのダウンライトを適当な暗さに調節し、お香を焚く。

考えるより先に、樹木希林さんの本を手に取っていた。この前観た映画『日日是好日』に出演なさっていたから、自然に手が動いてしまったみたいだ。

ページをめくりながら、以前にもましてあるエピソードが私を捉えて離さなかった。

「若い頃の私は、裡(うち)にマグマみたいな激しい感情や自我を抱えていて、「こんな状態でどうやって生きて行けばいいんだろう」と戸惑っていた。そんな時更に激しい自我を持つ内田に出会ったのね。彼と一緒にいると、自分は意外とまともなんじゃないかと、楽な気持ちになれた。だから、実は救われたのは私のほうなんです。」

「DVが酷くて、こっちもやり返すものだから大変だったのよ。」って、本当に苦労なさった方ほどその経験をなんでもない風に話してしまうから恐ろしい。

人間模様って、好きなものが似ていたり、その逆で、自分と全く重なる部分がないから惹かれたりって、考えていたけど。

上手に言えないけど、相手と好みが似てる、とか、正反対とかは、生活する中で、案外と解決策はありそうだけど、生きる熱量感、というのは調節しようがない、というか。

生きる熱量感、エネルギー数に決して優劣はなくて、人生の一本道を全力で駆け抜けたい人もいれば、のんびり歩きたい人もいる。それが個性。

たとえばエネルギー100の人とエネルギー30の人が付き合ったら。

100の人は気持ちを伝えても、相手からの手応えを感じずに傷付いたり、自分のなんでもない言動が30の人にしてみれば強い激しさで、知らずに追いつめていたことを反省したり。

30の人は、向き合いたいけど付き合いきれなくなったり、感情の引き出しが自分は少ないのかな?って俯いたり。

パーソナルエネルギーの差がありすぎると、どうしても、お互い活かし合えない。

折角一緒にいるのに、それぞれがいじけちゃうなんて、本当に勿体ない。

だから、側、じゃなくて、中。

その人と自分の内側には、どんなエネルギーが流れているのか感じることが大事な気がする。

樹木希林さんと内田裕也さんの熱量って、本当にとてつもないものがあったんだろうなぁ。実際に見てみたかったような、遠慮しておいた方が良さそうな。笑

お二人が天国でも、この調子で過ごされていますように。

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