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井之脇海、変化した芝居への意識 「人生最後のシーンになったとしても後悔しないように」

  • 2021.3.12
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『俺の家の話』(c)TBS

脚本・宮藤官九郎、主演・長瀬智也の“黄金タッグ”によるドラマ『俺の家の話』が現在放送中だ。二十七世観山流宗家であり重要無形文化財「能楽」保持者の人間国宝である観山寿三郎(西田敏行)を父に持ちながら、“ブリザード寿”のリングネームでプロレスラーとして活躍していた寿一(長瀬智也)が、父の介護のため実家に戻るところから始まった本作。「能」と「プロレス」という2つの世界を舞台に、家族の物語が紡がれている。

寿一が所属する「さんたまプロレス」に、プロレス界のレジェンド・長州力が同名役で登場しているほか、現役の武藤敬司、蝶野正洋らも登場するなど、“本物のレスラー”たちが映し出されている。そんな一流のプロレスラーたちと一緒に、プロレスラー・プリティ原として出演しているのが井之脇海だ。その演技力は数々の作品で証明されているが、ここまで肉体改造を行って挑んだ役は本作が初。体重は15キロも増量したという。縁のある長瀬智也との共演、そして宮藤官九郎作品の魅力まで話を聞いた。

●いつものテンションの幅から1つ飛び出して

ーー身体が一回り以上大きくなっていてびっくりしました。プロレスラーとしての肉体改造はどんなことをされていたんですか?

井之脇海(以下、井之脇):体重は60キロ程度だったのですが、今は75キロまで増えました。プロレスラーとして見えないといけないので、長瀬さんをはじめプロレスチームの方々と相談しながら準備しました。ウエイトトレーニングと食トレを徹底的にやって。1日6食を基本にして、もう食べ物を見るのが嫌になるぐらい食べていました。1カ月弱で10キロ程度増やして、クランクインを迎えてからもトレーニングを継続しながらさらに5~6キロ増やしました。ゆるゆると成長している感じです。

ーープリティ原は長瀬智也さん演じる寿一に憧れてプロレスラーを目指したという設定です。寿一とは師弟関係にありますが、長瀬さんとの共演は?

井之脇:過去に長瀬さんの青年期を演じたことがあるんです(『華麗なるスパイ』(日本テレビ系))。その時は現場でお会いできなかったんですけど。その時から勝手に意識していたといいますか、長瀬さんみたいな大人になりたいなとずっと思っていたんです。本作でようやくご一緒できて、本当に嬉しかったですね。印象通りの“格好いいお兄ちゃん”です。プロレスラーとしての体作りも、「プリティはプリティのペースでやればいいんだよ」といつも声をかけていただきました。長瀬さんにそう言っていただけたからこそ、「もっと頑張らなきゃ」とモチベーションにも繋がりました。本当に現場では常に助けていただいています。

ーー本作には本物のプロレスラーの方々も多数出演されています。特に長州力さんとは一緒のシーンも多いと思うのですが、現場の雰囲気はいかがですか?

井之脇:現場はオンオフがきちっとしていて本当にいい雰囲気です。待ち時間はみんなでワイワイと話をしているんですが、プロレスシーンでは皆さんの集中力がグッと増して。本当に素敵な先輩方です。長州さん、蝶野(正洋)さん、武藤(敬司)さんは本当にお芝居に真摯で。待ち時間でもずっと台本を読み込まれて、みんなで自主練もされていたんです。その姿を見て、自分の仕事に対する向き合い方がどこかなぁなぁになっていたのではないかと見つめ直すきっかけにもなりました。

ーープロレスラー・プリティ原としての試合シーンもすごいですね。

井之脇:練習でDDTさんのリングに初めて上がったんですが、男心をくすぐられるといいますか、ワクワクして、すごいドキドキしたのを覚えています。実際に撮影をしていても、普段テレビで見ていたリングの上に、自分が立っているというのがすごく不思議な感覚です。

ーープリティ原を演じる上でのこだわりはありますか?

井之脇:プリティは宮藤(官九郎)さんの脚本作によくいる“おバカキャラ”ですよね。本人は一生懸命だけど、傍から見るとおバカな行動や発言をしてしまう。僕が今まで演じていなかったようなキャラクターなので、いつもの自分のテンションの幅から1つ飛び出して演じてみようと思って撮影に挑んでいます。プロレスラーシーンも含めて、物語のスパイスになれるような存在になれたらなと。あとは“プリティ”なので、視聴者の皆さんに“かわいい”と思っていただけるように頑張っています(笑)。

●自粛期間を経て変わった芝居への意識

ーー確かにこんな“プリティ”な井之脇さんは初めてです(笑)。自身に近い役柄、遠い役柄、どちらの方が演じやすいと感じますか?

井之脇:どんな役柄でも1人の人生と向き合うことが僕の役者としてのテーマなので、演じやすい/演じにくいというのはないですね。でも、普段の僕と違うような役をやるのはすごく楽しいです。プリティ原という人間を通して、僕自身も新しい自分を発見できるところもありますね。

ーー演じた役柄が自分の中に蓄積されてプラスされていくと。

井之脇:そうですね。普通に生きているだけでは得られない体験をできるのが役者という仕事の魅力のひとつだと思います。僕自身、いろんな役柄を演じさせていただいて、いろんな考え方ができるようになったと感じます。

ーー約1年半前にインタビューをさせていただいときはコロナ禍に入る直前でした(参考:井之脇海、薬剤師を演じて気づいた感謝の思い 「『ありがとう』が増えてくれたら」)。この1年半で井之脇さんの芝居がまた変化していたように感じるのですが、なにか心境の変化があったのでしょうか?

井之脇:強く思ったのは最初の緊急事態宣言の際、2カ月間全くお仕事がなくなったんです。もちろん、それまでも全力で仕事には取り組んでいたのですが、このまま一生仕事ができませんと突きつけられたら、後悔してもしきれないと思ったんですよね。どこか全力を出しきれていなかったり、集団の中で自分の意見を言っていなかったんじゃないかって。撮影が再開できるようになってからは、今撮っているシーンが役者人生最後のシーンになったとしても後悔しないように取り組むようになりました。演じる役、作品に、より全力で取り組まなければいけないと改めて強く思いました。

ーー宮藤さんの作品は映画『中学生円山』、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)に続き、3作品目の出演です。井之脇さんが感じる宮藤脚本の面白さ、魅力を教えていただけますか。

井之脇:『中学生円山』も『いだてん』も、すごくコミカルで面白い脚本なのに、ほろっと泣けるところだったり心温まるエピソードが盛り込まれていました。1時間のドラマ、2時間の映画の中に、その時間以上の物語が濃縮されている脚本だなと思います。今も次の台本が届くのが本当に楽しみで。こんなに次の台本が待ち遠しい現場もなかなかありません。『俺の家の話』も人間への愛が本当に詰め込まれているドラマです。現在もコロナ禍でかつてのように当たり前に人と触れ合うことができません。そんな状況の中で、『俺の家の話』はとても濃密な人と人の触れ合いが描かれています。疑似体験ではないですが、きっと視聴者の皆さんにも、やっぱり家族っていいよな、人と人がつながることっていいよな、と改めて感じていただけるのではないかと。こんな状況ではありますが、作品を通して少しでも生きていくための力を受け取っていただけたらと願うばかりです。(取材・文=石井達也)

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