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倉悠貴が『おちょやん』で与えたインパクト 無言でも映える独特の雰囲気

  • 2021.3.11
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NHK連続テレビ小説『おちょやん』(写真提供=NHK)

杉咲花主演のNHK連続テレビ小説『おちょやん』で、主人公・竹井千代の弟・ヨシヲ役として、大きな話題を呼んだ倉悠貴。俳優デビューしてまだ2年だけに、彼がどういった役者なのか知らない方も多いはず。そこで、これまでのフィルモグラフィーを振り返り、今後どんな俳優になっていくのか予想してみたい。

倉の俳優デビューは、2019年の錦戸亮主演の連続ドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)。主人公・真野礼二(錦戸亮)が家族の死の真相を探る物語で、倉は礼二の兄・源義一役を演じ、両親と妹を刺殺した後に自殺したとされる、物語の重要人物を演じている。無造作ヘアに悲しい目が印象的で、壮絶なイジメに遭い、追い込まれていく人の心の闇を抱える難役を、デビュー作でしっかりと見せた。

間も無く出演した『his~恋するつもりなんてなかった~』(メ~テレ)は、江ノ島で出会った男子高校生2人に芽生えた友情が、やがて恋に発展していく恋愛物語。倉は同性に恋をするサーフィン好きの訳あり高校生役を演じている。高校生らしい初々しさと、もどかしいやりとりなど、演技がまだ洗練されていない分、自分のアイデンティティーに悩む思春期の心が伝わる、甘く切ない演技を見せている。

その後も、カメラマンの蜷川実花が監督を務める2020年のNetflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』に出演し、直接の共演シーンはなかったものの、ヒロインを演じた池田エライザの目に留まり、池田が原案・初監督を務めた映画『夏、至るころ』の主演に抜擢。『夏、至るころ』は、幼い頃からの親友で、同じ高校に通う倉演じる翔と泰我(石内呂依)が、夏祭りを前に初めて自分の人生と向き合う青春物語。無自覚だった高校生たちが現実に気づく、心の迷いや虚無感など、池田自身の演出でもあったそうだが、セリフを言いたくなるまで言わせず、噛み砕いてから発するという、感情を伝えるまでに時間がかかる演技が、自身のキャラクターと相重なり、不器用な青春時代の高校生をリアルに表現している。

これらの作品を観る限り、倉は、どこか儚さと色気を持つ俳優で、山田孝之や柳楽優弥の若い頃であったり、近年では山崎賢人や吉村界人が持つような、独特のダークさを漂わせる目が印象的。無言でも間が持つアンニュイな雰囲気がある役者と言える。

『おちょやん』で演じた竹井ヨシヲは、千代が9歳の頃に道頓堀の芝居茶屋「岡安」へ奉公に出された為に、千代とは生き別れとなった弟。その間、消息不明となっていたが、劇団の「鶴亀家庭劇」で女優として活躍するようになった千代の前に突如現れ、舞台上で千代にキスをした天海一平(成田凌)を、町中で突如殴るという衝撃的な登場を果たした。一見立派に成長した大人に見えるが、実際は体に刺青を入れたヤクザ者。「鶴亀家庭劇」に脅迫電話を入れ、仲間と芝居小屋を放火しようと企むなど、かなりショッキングな変わりようだ。

刺青姿がすでに壮絶な人生を歩んできたことを表現していたが、それ以上に、成功している姉に対しての妬みなのか、自分に対する虚しさなのか、ヨシヲの表情や雰囲気がいつも儚く、それでいて、ヤクザとは言え拾ってくれた恩義を感じるなど弟らしい真面目さと可愛らしさが見え隠れし、その雰囲気が極道の道に行かざるを得なかった悲しき運命を物語っていたように思う。成田凌が「お前はなんもしなくていいから」「表面的な悪いキャラじゃなく、やりたいようにやったらいいよ」とアドバイスされたと公式インタビューで語っていたが、わざと悪ぶった役作りでないからこそ、ヨシヲの人生の重さを感じることができる。もしかしたら、成田もまた前述したような倉独自のキャラクター性を見抜いていたのかもしれない。倉にまだ馴染みのない視聴者も多かっただけに、変に先入観を持つことなく、ヨシヲとしての人生が想像できるから、よりキャラにも感情移入ができる。功を奏したキャスティングだったのではないだろうか。

昔を思い出し、千代が作った茶がゆを食べるシーンは、色んな思いが交差し、観ていて涙がでてくる。しかし、千代から家族の優しさを知ったために、極道を続けるにしても、抜けるにしても、これまで以上の壮絶な人生が待ち受けていると考えると心が痛む。次に登場する時を期待したいが、どんな姿を見せるのか。

現在公開中の映画『樹海村』では金髪姿でお調子者という新たなイメージの役を演じ、3月19日公開『まともじゃないのは君も一緒』では成田凌と再共演するなど、他にも出演作が控え、今年ブレイクが期待される倉。デビューからまだ2年という早さだが、儚さと色気、そしてどこか純真な心を持った役を演じさせるとハマる倉は、どこか高良健吾のような、変幻自在にその役柄に魂を落とし込む、いい意味で“芝居”を感じさせない役者になっていくと考える。今や山田裕貴や磯村勇斗など、『HiGH&LOW』世代のギラギラした役者が最前線で活躍しているが、その次世代を担うことになるかもしれない。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。 (文=本 手)

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