1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 【ミレニアル世代のマネー学】老後資金2000万円問題とはなんだったのか。本当に必要な資金はいくら?どう準備する?

【ミレニアル世代のマネー学】老後資金2000万円問題とはなんだったのか。本当に必要な資金はいくら?どう準備する?

  • 2021.3.4
  • 4576 views

銀行にお金を預けても、お金はほとんど増えません。ミレニアル世代・Z世代と呼ばれるみなさんがこれからお金を増やしたいならば、投資をすることが欠かせません。

老若男女関係なく、筆者がよく相談を受けるのが老後資金の問題です。「生涯お金に困ることなく生活できるのだろうか」。ミレニアル世代・Z世代のみなさんも、そんな漠然とした不安をお持ちなのではないでしょうか。

そこで今回は、2019年に話題になった「老後資金2000万円問題」を取り上げ、本当に必要な資金はいくらなのか、みなさんが老後に備えるためにどうしたらいいのかを解説します。

「老後資金2000万円問題」とはなんだったのか

老後資金2000万円問題の発端は、2019年6月に金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループから出された「高齢社会における資産形成・管理」という報告書でした。ひとことでいうと、人口減少・高齢化が進む社会のなかで、高齢社会の金融サービスのあり方を専門家が議論し、まとめた報告書です。

この報告書のなかに、次のような一文があります。

「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。」
(金融審議会「高齢社会における資産形成・管理」より)

このような試算の結果が大きく話題となり、連日テレビをはじめとする各メディアで報道されました。その後、Twitterなどを中心とするSNSでも拡散され、広く知られるようになりました。
「老後資金は公的年金だけでは2000万円足りない!」
「足りない分は自分で用意しなければならない!」
「急に2000万円用意しろと言われても困る!」
などという具合です。

もっとも、公的年金だけでは老後の資金はまかなえないということは、これよりもずいぶん前から専門家の間では知られていたことでした。
報告書は後になって撤回されてしまいましたが、公的年金だけでは足りないことは事実です。筆者も、「老後資金2000万円問題」が起こる前から、相談・取材・講演・記事などで折に触れてお伝えしていました。ですから、改めてクローズアップされたことに驚いたことを覚えています。

では、老後資金は本当に2000万円足りないのでしょうか。

最新の家計調査報告で計算するといくらになるのか

先の報告書で「2000万円不足する」という計算の根拠となったのは、総務省の「家計調査報告」の2017年のデータです。60歳以上の高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の平均収入は約20万9000円になっているのに対し、支出は約26万4000円です。つまり、差し引き毎月約5万5000円の赤字となります。
そして、65歳から30年間生きるとすると、5.5万円×12ヶ月×30年間=1980万円。おおよそ2000万円、支出の方が多くなるというわけです。

この計算を、本稿執筆時の最新データ、2019年の家計調査報告に当てはめると、次のようになります。

高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の生活費
高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の生活費

図:総務省「家計調査報告」(2019)
高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の支出は約23万8000円、支出は27万1000円ですので、差し引き毎月3.3万円の赤字です。赤字ではありますが、2017年時点と比べて赤字の額は減っています。
ここから30年間の不足額を計算すると、3.3万円×12ヶ月×30年=1188万円です。

シングル世帯(高齢無職世帯)の場合は、次のようになります。

高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の生活費
高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の生活費

図:総務省「家計調査報告」(2019)
高齢無職世帯の1ヶ月の支出は約12万5000円、支出は15万2000円ですので、差し引き毎月2.7万円の赤字です。
同様に、ここから30年間の不足額を計算すると、2.7万円×12ヶ月×30年=972万円です。

なお、こちらのデータは老後生活を送る、最低限の生活費であることに注意が必要です。住居費の割合が低いことから「持家」を前提にしていることも見逃せません。ゆとりある老後を送りたければもっとお金がかかると考えておくべきです。
用意すべき老後資金の金額は、人によって異なります。場合によっては、少なくて済む方もいるかもしれません。

「なんだ、結局2000万円も必要ないのか」そう思った方もいるかもしれません。また、ミレニアル世代・Z世代の方の中には「先のことすぎてピンとこない」と思われるかもしれません。しかし、老後資金のことは、若いうちから考えておくべきです。なぜなら、これから「受け取れる年金の額が減る」「支給開始年齢が遅れる」可能性が高いからです。

加速する人口減少・少子高齢化
加速する人口減少・少子高齢化

65歳以上の高齢者1人に対して15歳以上65歳未満の人数
データ出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

平均寿命の伸張
平均寿命の伸張

データ出典:内閣府「令和2年版高齢社会白書」

100歳以上人口の推移
100歳以上人口の推移

データ出典:厚生労働省「令和2年 百歳以上高齢者等について」

日本は猛スピードで人口減少・少子高齢化が進んでいます。「令和2年版高齢社会白書」によると、1965年には約10.8人の現役世代(15歳~64歳まで)で1人の高齢者(65歳以上)を支えていました。しかし、それが2065年にはわずか1.3人の現役世代で1人の高齢者を支えることになると見られています。

公的年金は「賦課方式」をとっており、これは、「その時の現役世代の収める年金保険料」で「年金を受け取っている人たちの年金額を賄う」というものです。ですから、現役世代の割合が少なくなれば、受け取れる年金も少なくなるでしょうし、支給開始年齢を引き上げざるを得ないということです。

また、平均寿命も伸び続けています。2019年時点の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。「LIFE SHIFT」(東洋経済)によると、2007年生まれの2人に1人が107歳まで生きるようになると推計しています。事実、100歳以上の人口も年を追って増え続けていて、2020年時点で約8万人(うち9割が女性)います。

上で紹介した生活費の中には、怪我や病気など、万が一のときの備えが含まれていません。介護や入院が必要になると、急にお金が必要になります。

このように、今後年金の受給金額が減ったり、もっと長生きになったり、もしもの費用を含めたりすれば、必要な金額はさらに増えていきます。これに対応するには、早めの準備が欠かせないのです。

実際に、自分が老後までに用意すべき老後資金はどのくらいか、計算してみましょう。

自分の老後資金を計算してみよう

まずは65歳以上の収入です。みなさんは、将来どのくらい公的年金をもらえるかご存じですか。毎年誕生日近くに届く「ねんきん定期便」には、50歳未満の方の場合は「現時点で受け取った場合の年金の金額」しか書かれていません。ですので、老後にもらえる金額とはずいぶんと違う(安い)はずです。詳しいシミュレーションは「ねんきんネット」でできますが、ここは、下で紹介する早見表を使ってざっくりと計算してみましょう。

公的年金には、20歳以上の国民が加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金があります。このうち、国民年金は40年間フルで年金保険料を支払った場合、受け取れる年金の額は78万900円(2021年度)です。

対する厚生年金は、加入期間と年収によって、概算の金額が異なります。そこで使っていただきたいのが次の表です。

もらえる年金額の早見表(国民年金+厚生年金)
もらえる年金額の早見表(国民年金+厚生年金)

※国民年金満額(780,900円)と厚生年金の合計金額
※計算結果は目安です

たとえば、平均年収400万円の方が厚生年金に35年加入していた場合、65歳から毎年もらえる年金額はおよそ1,540,600円となります(国民年金の満額780,900円を含んだ金額)。これを12で割って月額換算すると、約128,000円とわかります。

対する毎年の老後の支出は、おそらく想像がつかないでしょう。総務省「家計調査」(2019年)によると、老後(70歳以上)の生活費は現役世代(50〜59歳)の生活費の68.1%と示されているので、大まかに今の生活費の70%で計算すればいいでしょう。

毎年の老後の収入から老後の支出を引くと、年金では足りない金額がわかります。また、95歳まで30年間生きると仮定して、毎年の不足分を30倍すると、65歳から95 歳までで不足する金額がわかります。退職金がある場合は、この金額から引いてください。

さらに、もしもの病気や介護に備えるお金として、できれば、1人500万円を見込んでおきたいところです。シングルなら500万円、夫婦なら1,000万円という具合です。

これらを合計した金額が、みなさんが老後に用意したい老後資金となります。

老後まで貯めたいお金はいくら?
老後まで貯めたいお金

※65歳まで働き、退職金がない場合で試算

老後資金を準備するにはどうすればいい?

老後資金は年金だけでは足りなくなることを紹介しました。では、老後資金を用意するためにはどうすればいいのでしょうか。キーワードは2つあります。「長く働き続ける」と「お金自身に働いてもらう」の2つです。

①長く働き続ける
「人生100年時代」と呼ばれるようになった今、60歳で定年を迎えても、100歳までまだ40年もあります。そのなかで、長く働くことがひとつの鍵となります。すでに「高年齢者雇用安定法」によって希望すれば65歳まで働けるようになっていますし、2021年4月からは企業に70歳までの就業機会を確保することが努力義務となります。働いて、年金とは別の収入があれば、その分生活が安定するでしょう。

また、65歳からの年金の受け取りを後回しにする(繰下げ受給)をすると、1ヶ月繰り下げることで将来受け取れる年金額が1ヶ月あたり0.7%増えます。現状、最大70歳まで繰り下げることで、年金を65歳受け取り時点より42%増やすことが可能です(2022年4月より、最大75歳まで繰り下げ可能。年金額は84%増加します)。受け取れる年金が増えれば、その分ゆとりもできます。

もっとも、歳を重ねてなお働き続けるには、社会にとって必要とされる存在でなくてはなりません。知識やスキルを磨くとともに、人間関係や信頼関係といった、見えない資産を築き続けることが必要です。さらにもちろん、健康であることも大切です。自分を磨き続けることが必要となります。

②お金自身に働いてもらい、老後資金を増やす
冒頭でも触れているとおり、お金は銀行に預けるだけではまったく増えません。投資をすることで、自助努力で老後資金を増やすのもひとつの方法です。

なかでも、税金を減らしながらじっくりとお金を用意できる制度を使うのがおすすめです。その代表として、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とつみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)があります

iDeCo

公的年金をカバーするために、公的年金に上乗せできる「私的年金」の制度がいくつかあります。iDeCoは、そうした私的年金の制度のひとつです。
iDeCoでは、毎月一定の掛金を支払って自分で運用し、資産を増やします。そして増えたお金を、老後(60歳以降)に受け取ることができます。20歳から60歳までの方であれば、ほぼ誰でも加入できます。

iDeCoの大きなメリットは、3つのタイミングで税金が節約できることです。
まず、毎月支払う掛金が全額所得控除になります。つまり、毎年の所得税や住民税を減らすことができます。自分のためにお金を貯めながら、税金も減らせるのです。
次に、運用によって生まれた利益が非課税になります。通常、投資の利益には20.315%の税金がかかるのですが、それがゼロになるので、効率よくお金が増やせます。
そして、受取時に「退職所得控除」または「公的年金等控除」という税制優遇を受けることで、税金の節約ができます。

60歳まで引き出せないことがデメリットと語られることもありますが、老後資金を貯める目的ならばむしろ好都合。老後のお金を堅実に用意できます。

つみたてNISA

つみたてNISAも、投資で得られた利益を非課税にできる制度。年間40万円までの投資で得られた利益を最長20年間非課税にできます。
つみたてNISAで投資できるのは、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)。長期間積み立てと分散投資ができる商品のみです。これにコツコツと、積立投資をしていきます。金融庁の基準を満たすから絶対値上がりする、というものではありません。しかし、手数料が安くてシンプルな商品が多く、資産を堅実に増やすのに向いています。

つみたてNISAには掛金の控除や受取時の優遇はありませんが、預けたお金は自由に引き出し可能。老後資金を貯めるためにスタートしたものの、急にどうしてもお金が必要になった…という場合にも対応可能です。

今回はミレニアル世代にも関心が大きい「老後資金」について、お話ししてきました。
老後資金2000万円問題とはなんだったのか。本当に必要な資金はいくらなのか、どう準備すれば良いのか、本記事が参考になれば幸いです。
若いうちから時間をかけて取り組むことで、老後資金は堅実に貯められます。ぜひ投資をスタートさせてください。

元記事で読む
の記事をもっとみる