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「僕はミスコンに出る」性を隠して参加した男性の結末と夢の大切さ

  • 2021.2.26
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何かと忙しい生活を送っていると、つい忘れがちなのは自分の夢について考える時間。みなさんは、子どもの頃に持っていた夢を覚えていますか? その夢を実現した人もいれば、諦めた人もいるかもしれませんが、一度立ち止まって、自分の夢について改めて振り返るのは大事なこと。そこで、そんなときにオススメの話題作をご紹介します。

『MISS ミス・フランスになりたい!』

【映画、ときどき私】 vol. 363

パリの場末にあるボクシングジムで手伝いをしていた青年アレックスは、事故で両親を亡くして以来、自信を失っていた。ところがある日、ボクサーとして夢を叶えた幼なじみと再会したことで、もう一度自分の夢へと向かう決意をする。

その夢とは、少年時代に抱いていた「ミス・フランスになる」というものだった。そこでアレックスは、下宿先の家主や同居している個性豊かな仲間たちの力を借りて、無謀とも思える夢に挑戦することに。男性であることを隠してコンテストを受けたアレックスが迎える結末とは……。

ミスコンテストというきらびやかな世界を舞台に、真の美しさとは何かを教えてくれる本作。今回は、こちらの方に見どころをおうかがいしてきました。

ルーベン・アウヴェス監督

監督・原案・共同脚本を務めているアウヴェス監督。俳優としてもさまざまな作品に出演しており、幅広い才能を発揮している注目の存在です。そこで、作品誕生の裏側や外見を重視する社会のなかで訴えたい思いなどについて、語っていただきました。

―何年も前から、トランスジェンダーをテーマにした作品を考えていたそうですが、きっかけはどのようなことだったのでしょうか?

監督 実は、私の友人で性転換した人がいたことがこの作品の出発点となりました。ただ、僕が語りたかったのは性転換についてではなく、自分探しにおける精神と身体との調和にいたる際の感情的な道のりについて。それが興味深いと思いましたし、重要でもあると感じました。

そんななかで出会ったのが、主人公のアレックスを演じてくれた“ユニセックスモデル”として活躍しているアレクサンドル・ヴェテール。彼は女性になろうとするのではなく、自分自身がどちらの性にもとらわれず、ファッションにおけるパフォーマンスにおいて、自分のなかにある女性性を前に打ち出している人です。彼は自分でいることを幸せに思いながら女性らしい自分を生きているので、その姿をすばらしいと感じて今回の脚本を書き始めました。

ミスコンテストの裏側で発見もたくさんあった

―そんなアレクサンドルさんの存在がストーリーにも大きな影響を与えていると思いますが、実際に彼の体験したことをエピソードとして反映しているところもありますか?

監督 具体的なエピソードとしては特に投影されていませんが、この映画のいたるところにアレクサンドルの息吹があると言っても過言ではないですね。なぜなら、作品の感情面においてもインスピレーションとしても、最初から最後まですべてを彼が背負っているからです。

とはいえ、本作は完全なフィクションなので、主人公のアレックスとアレクサンドルのキャラクターはまったく違いますけどね。実際、アレックスは少し暗くて、自分がどうしたらいいのかわからない人物ですが、アレクサンドルはほかとは少し違うことを受け入れ、愛してくれる両親がいて、明るくポジティブな性格ですから。

ただ、「女性でいるときのほうが、自分が強くいられるのを感じられる」というセリフひと言だけは、アレクサンドルがパフォーマンスをしていたときに話していた言葉からもらっています。

―ミスコンテストについての描写も非常に興味深かったですが、実際にリサーチするなかでその実情に驚かされたことはありましたか?

監督 今回、ミス・フランスの実行委員会が門戸を開いてくれたおかげで、コンテストの様子を観察しながら脚本を書くことができました。そのなかで私が発見したのは、ミス・フランスの裏側で働いている人たちが、ひとつの世界を構成していること。ものすごい数のボランティアがいたり、異なる世代の人たちに統一感をもたらしていたりと、みんながミス・フランスという夢の世界で生きるために情熱を込めているんです。その姿を見るのは、とても気持ちのいいものでもありました。

それから、私が魅了されたのは、コンテストに参加している若い女性たち。ミス・フランスの候補になったことで自分の生きる道を見つけることができて助かったと話している子がいれば、自分が何をしているのかわかっていない子がいるといった具合に、さまざまな女性がいたので、本当にいろいろな発見がありました。

今回はミスコンテストを批判する映画ではありませんが、やはりコンテストは戦いですし、女性同士の関係は優しいものばかりではないので、この作品は「ハイヒールを履いたロッキーの映画」という側面もあると感じています(笑)。

体と精神の調和がとれている人は美しい

―では、映画でも描かれていたように、女同士ならではの“戦い”を目にしたこともあったのでしょうか?

監督 というよりも、コンテストの現実は、人生の現実と同じだと感じました。人はいつもグループに属したいと思うんだけど、そのなかに入るのはなかなか難しいこともありますよね。そういったリアルさをこの映画でも描いています。

実際、コンテストの裏側でも、おとなしい女の子が派手な女の子たちのグループに入りたがっていたけれど入れてもらえないとか、強い人が弱い人を押しつぶそうとしていたというような現実を目の当たりにすることもありました。

でも、それは狩りをするライオンの間を知性やずる賢さを使って切り抜けていくサバンナの法則のように、現実世界でも同じことが起きているだけではないでしょうか。それは、明らかなことだと思いました。

―なるほど。コンテストでは厳しい美の規範がいくつもありますが、監督が思う“真の美しさ”とは?

監督 とてもいい質問ですね。僕にとって美しさの基準とは、精神的にも外見的にも自分が誰なのかを知り、受け入れ、そして自分自身に対して責任を持っていることだと思います。すなわち、自分の体と精神の調和が完全にとれているとき、人は美しくなれるのです。

人生と自分自身に対して、微笑みかけられるのは美しいこと。だからこそ、アレクサンドルと出会ったときに、彼のことを本当に美しい人だと感じたんだと思います。彼はすべてにおいてプラスの見方をしていて、完全に自分を受け入れ、光の部分だけを持っているような存在ですから。

外見だけを重視する社会は危険だと感じる

―そう感じた具体的な出来事などもあったのでしょうか?

監督 あるとき、彼と街を歩いていると、彼のことを変な目で見る人たちと遭遇することがありました。でも、彼はすれ違う人たちにどんな目で見られても、相手に対して偏見を持つことなく、大きな微笑みを返していたのです。その姿は本当に美しかったですし、そういうところから学ぶことは多かったと思います。だからこそ、自分自身を受け入れているとき、人は美しくなれるのだと気づかされました。

―監督は俳優としても活躍されているので、普通の人よりも、外見で判断されたりする経験が多いかと思います。いまは外見を重視する社会だと思いますが、そのなかで監督が意識されていることがあれば、教えてください。

監督 確かに、いまの時代はどんどん難しくなっているなと感じています。だからこそ、僕の映画は外見だけを重視する社会に対する皮肉にもなっているんですよ。なぜなら、SNSが発達したことでつねに外見が重視され、いつでも最高の状態でいなければならないと思い込むのは、危険なことだからです。

僕は表現ができる自由な世界にいますが、どんなにイマジネーションの世界を楽しんでいたとしても、片方の足は必ず現実にしっかり置いた状態にしなければならないと考えています。気をつけなければならないのは、イメージのなかだけの世界に囚われてバランスを失ってしまうこと。新しい世代の人たちは、外見の美しさばかりを重視しているところがありますが、それは本当に危険なことなんです。

劇中でも、ミス・フランス委員会のディレクターであるアマンダが、「形式だけを重視しすぎてはいけない」といったことを言いますが、それこそがまさに私がこの映画で言いたいことでもありました。僕自身は幸運なことに、そうしたバランスを崩したことは一度もないので、意識しているとすればそのあたりだと思います。

夢を実現させる秘訣は、違いを力にすること

―それでは最後に、自分の夢をつかもうとがんばっている人や悩んでいる人に向けてアドバイスがあればお願いします。

監督 今回、夢について描くためにこの映画を作りましたが、実は僕自身は人生を生きることに一生懸命であまり夢を見たことがない人間なんです(笑)。でも、「自分の信じている夢を実現すべきだ」というのは、この作品で訴えたいと思って作りました。

たとえそれがどんなにクレイジーなものであっても、自分を信じていれば、夢はきっと叶えられるということを伝えたかったのです。主人公のアレックスも、男の子なのにミス・フランスになりたいというのは、クレイジーな夢ですからね。

これから夢を叶えたい人にアドバイスをするとすれば、平凡な言葉になってしまうかもしれませんが、まずは自分を信じること。そして、自分が持っている“違い”を力にしてください、ということです。ときには、その違いから人に指をさされることもあるかもしれませんが、その違いこそが力となり、自分が思っているところよりも遠くへと進むことができ、夢を実現できるはずですから。まとめると「差異を力にせよ!」というのがアドバイスですね。

あと、ひとつ付け加えるとすれば、自分の周りを善意と愛で固めるのも大事なこと。他人が下す判断で立ち止まることなく、自分を愛し、良いことを願ってくれる人たちと一緒に前進してほしいと思います。

夢は人生を輝かせるスポットライト!

誰の人生においても、夢を持つこと、そして叶えることがいかに大切なものかを思い出させてくれる本作。心震えるラストシーンで見せるアレックスの勇気と美しさには、思わず息を飲み、そして拍手を贈らずにはいられないはずです。胸に秘めている夢があるのなら、まずは一歩を踏み出してみては?

取材、文・志村昌美

美しい予告編はこちら!

作品情報

『MISS ミス・フランスになりたい!』
2月26日(金)シネスイッチ銀座ほか全国公開
配給:彩プロ

©2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

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