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2022年4月、年金手帳廃止へ。今後の手続きはどう変わる?

  • 2021.2.24
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2020年6月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度機能強化法」※1) が公布されました。これにより、2022年4月以降、年金手帳が廃止されることになります。
長年にわたり大切なものと認識されてきたはずの年金手帳。一体なぜ廃止になるのか、そもそも何のために持っていたのか。
今回はいままで年金手帳が果たしてきた役割と、廃止になった後どうなるのか説明します。
※1:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

2020年6月に年金制度改正法が成立

今後ますます寿命が延びて、少子高齢化が加速すると、年金制度を支える現役世代の人口が急激に減少すると言われています。そのため若い人は、自分が高齢者になったときに、本当に年金がもらえるかどうか不安に思うでしょう。

こういった将来の不安を解消するために政府は、高齢者や女性にもできるだけ働いてもらって、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたって働きやすい形で働けるような社会になることを目指しています。
こうした社会の変化を年金制度に反映して、長くなるであろうリタイア後に経済的に充実してもらいたいとして2020年6月に年金制度改正法が成立※2しました。

今回の改正では、主に下記の4つの見直しが行われることになりました。

①被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大
②在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
③年金の受給開始時期の選択肢の拡大
④確定拠出年金の加入可能要件の見直し

このような年金制度の見直しが行われる一環として、年金手帳の廃止も行われることになったのです。
※2:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html

年金手帳ってなに? なぜ廃止されることになったのか

年金手帳は1974年11月以降、交付されて※3きました。20歳になると国民年金の被保険者となるので、20歳以上の人は下記のいずれかの年金手帳を持っているはずです。

年金手帳
年金手帳

(出典:日本年金機構ホームページ※4より)

年金手帳は、発行された年によって表紙の色が異なります。
例えば、1960年10月~1974年10月に国民年金の被保険者資格の取得手続をおこなった人には、茶色の手帳(写真左)が発行されていました。
また、1974年11月から1996年12月までに被保険者資格の取得手続きをおこなった人には、オレンジ色の手帳(写真中央)が発行されていました。
そして、1997年1月以降は青色の手帳(写真右)が発行されています。現在の発行者は、「日本年金機構」ですが、1997年1月から2009年12月までに発行されたものは、発行者が「社会保険庁」となっています。

このように、長年にわたり交付されていた年金手帳ですが、主に2つの役割がありました。

①保険料納付の領収の証明
②基礎年金番号の本人通知

しかし、最近では被保険者情報が既にシステムで管理されていることと、個人番号(以下、マイナンバー)の導入によって、上記のような役割を果たすものが手帳形式である必要がなくなったことが、年金手帳廃止となる背景と考えられます。また、年金手帳発行に関する事務コストは、 年間2.7億円(2016年度実績)※5ともいわれており、この分のコスト削減効果も期待できるのです。

※3:https://www.nenkin.go.jp/n/www/sia/top/kaikaku/kiroku/tokubetsubin/tetyou_hensen.html
※4:https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20131107.html
※5:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

どんなときに年金手帳は使われていたのか。

普段の生活ではあまり手に取ることのない年金手帳ですが、皆さんはどこに保管していますか?
厚生年金に加入している人は、会社に預かってもらっているという人もいるのではないでしょうか。
なぜ会社が保管している場合があるのかというと、会社が行う社会保険の手続きに年金手帳に記された基礎年金番号が必要だったためです。

基礎年金番号は年金手帳(青色)の見開き1ページ目に記載されています。

基礎年金番号

出典:厚生労働省年金局「その他の制度改正事項及び業務運営改善事項について」より一部筆者加工

以前は住所や氏名が変わった際にも手続きに基礎年金番号※6が必要で、その都度、会社に年金手帳を提示する必要がありました。もし年金手帳を紛失した場合は、再発行の手続きは会社でやることになっていたため、入社時より会社で従業員の年金手帳を保管し、退職する際に返却としている会社が多くあったようで、預けなくてはいけないという決まりがあったわけではありません。
※6:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20150320.html

では、現在年金手帳を持っている人は、今後どのように取り扱えばよいのでしょうか。年金手帳を提出する必要がある場合の注意事項を、一つずつ確認してみましょう。

すでに年金手帳を持っている人は、今後どのように取り扱えばよい?

年金手帳には、下記の場合に年金手帳を提出するよう注意事項の記載がありますが、今後はどうなるのでしょうか。

○新たに厚生年金保険や国民年金に加入するとき
○氏名を変更したとき
○年金や一時金の請求をするとき
○年金や一時金についての相談を受けるとき

年金手帳の注意事項

出典:厚生労働省年金局「その他の制度改正事項及び業務運営改善事項について」より

一つずつ詳しく見ていきましょう。

○新たに厚生年金保険や国民年金に加入するとき

新たに厚生年金に加入するとき※7は、会社が手続きをしてくれますが、最近では年金手帳の提示は必須ではありません。マイナンバーか基礎年金番号のいずれか、どちらでも都合の良い方を利用して良いことになっているからです。(マイナンバーと基礎年金番号が結びついている人の場合)

新たに厚生年金保険や国民年金に加入

出典:日本年金機構より、一部筆者加工

一方、新たに国民年金に加入するときには、年金手帳または基礎年金番号通知書の添付が求められています(2020年9月現在)。年金手帳をお持ちの方は引き続き、年金手帳を使うことになります。
※7:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html

○氏名を変更したとき

厚生年金も国民年金も、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている被保険者であれば原則届出は不要とされています。特になにか手続きをしなくても大丈夫な場合がほとんどです。

○年金や一時金の請求をするとき

年金を請求するときにも、年金手帳または基礎年金番号通知書が必要になる場合があります。また、遺族年金や死亡一時金を受け取る場合などには、請求者本人や亡くなった方の年金手帳を提出する必要ことがあります。(2020年12月現在)
もし紛失などでどうしても見つからない場合は、ご本人確認さえできれば手続きは可能なので、手帳がないからと手続きするのをためらう必要はありません。

○年金や一時金についての相談を受けるとき

年金事務所等の窓口で、年金に関する相談をする際は、年金手帳、年金証書または改定通知書など、日本年金機構が送付した基礎年金番号がわかる書類を持参する必要がありますが、もし何もなくても本人確認ができれば相談は可能です。

このように年金手帳は、現時点※8では、新制度への経過措置期間として、基礎年金番号を明らかにする書類として引き続き利用できます。
※8:https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/shingi23-01.pdf

20歳に到達し、新たに公的年金に加入する人はどうなる?

20歳に到達する人に係る国民年金加入手続きについても見直し※9が行われていています。
以前は、20歳に到達する誕生日の前日から数えて14日以内に、国民年金資格取得の届出(国民年金被保険者関係届書(申出書))を自身で市町村に提出しなければなりませんでした。

しかし、2019年10月以降に20歳になった人は、国民年金への加入の手続きが不要となっています。日本年金機構で国民年金の資格取得処理を行うため、加入手続きをしなくても、国民年金に加入したことになるからです。

その後、2週間以内に、日本年金機構から、「国民年金加入のお知らせ」、「国民年金保険料納付書」、「国民年金の加入と保険料のご案内」が届き、別途、年金手帳も送られてくる流れになっています。
年金手帳が廃止となる2022年4月以降は、年金手帳の交付はなくなり、代わりに「基礎年金番号通知書」が送られてくる予定です。つまり、2022年4月以降に20歳になって初めて公的年金に加入する人は年金手帳を持たないことになります。
※9:https://www.nenkin.go.jp/info/johokokai/uneihyogikai/kako/r01/38.files/07.pdf

過去にもあった「基礎年金番号通知書」

実は、過去にも「基礎年金番号通知書」が発行※9されていました。
かつて、国民年金、厚生年金、共済組合の加入者の年金番号はそれぞれ独自に付けられていたのですが、1997年1月から、共通した基礎年金番号が創設されました。
この時点で、既に公的年金に加入していた被保険者には、基礎年金番号が記載された「基礎年金番号通知書」が送付されていたのです。

過去に送付された「基礎年金番号通知書」
過去に送付された「基礎年金番号通知書」

出典:日本年金機構ホームページより

2022年4月以降の新たな「基礎年金番号通知書」はどんなものになるのかまだ決まっていませんが、厚生労働省によると、下記のようイメージのものが検討されているようです。

・年金手帳の代替として年金制度の象徴となるようなシンボリックなもの(色つきの上質紙など)とすること
・手元に丁重に保管してもらうため、名称を「基礎年金番号通知書」とし、大臣印の印影を入れること
・現在、共済年金加入者に送付している「基礎年金番号通知書」との統一を行うこと※10

※9:https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kiso/index.html
※10:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

年金手帳を2冊もっている人はどうしたらよい?

公的年金に加入している人の中に、まれに年金手帳が2冊以上あるという人がいます。1人1つの基礎年金番号のはずが2つ以上振られているということです。どうして2つ以上の基礎年金番号があるのかというと、たとえば以前は、会社に就職する際に年金手帳を提出しないと、加入手続きのときに新しい番号が振られてしまったからです。

現在は国民皆年金制度となり、20歳以上の人は必ず基礎年金番号があることがわかっているので、そのような現象はおきませんが、20歳以前に厚生年金に加入したことがあり、20歳未満で違う会社で厚生年金に加入する場合は、かならず基礎年金番号を持っていることを申し出しましょう。

手帳が手元に2冊以上ある人は年金事務所で相談するようにして下さい。このときに、持っている年金手帳がすべて必要になるので、年金手帳を廃棄しないようにしましょう。

マイナンバーと基礎年金番号が結びついているのか確認する方法

2018年3月に年金事務所へ届け出る書類の様式や手続きが変更※11となったことで、基礎年金番号の代わりにマイナンバーを利用することができるようになりましたが、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていることが前提になります。
日本年金機構がマイナンバー法に基づいて、マイナンバーと基礎年金番号との結びつけを行っているのですが、自分のマイナンバーと基礎年金番号が結びついているのかどうかわからない人は、「ねんきんネット」、もしくは年金事務所で確認することができます。
※11:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2018/2018022001.html

社会保障とマイナンバーの紐付きが、年金手帳の廃止の背景

年金手帳の廃止の背景には、社会保障とマイナンバーの紐付きがあることがわかりました。
年金手帳の廃止となれば、新しく発行されないことと、紛失した場合の再発行がなくなりますが、年金手帳自体が使えなくなるわけではありません。すでに年金手帳を持っている人は、いきなり廃棄してしまったり、粗末に扱ったりすることのないようにして下さい。

また、現在はまだ経過措置の段階なので、年金に関する手続きが必要な際は都度、必要書類などを確認するようにしましょう。

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