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染めたみたいに鮮やかだ... 野に育つ「天蚕」が作る「緑の繭」が美しい

  • 2021.2.21
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蚕(かいこ)作る「繭(まゆ)」といえば白いものという先入観があるが、こんな色の繭を見たことがあるだろうか?

こちらは、2021年2月10日に投稿されたツイート。

天蚕(てんさん)と呼ばれる、野に育つ野生の蚕の繭だという。エメラルド色というか、うぐいす色というか、わかば色というか......、なんとも爽やかな緑色の繭である。こんな繭は、見たこともなければ、聞いたこともない。

ところが、「信州安曇野では、山蚕(やまこ)と呼ばれます」というコメントが添えられているではないか。

信州安曇野はわさびの産地として知られているが、こんな繭も作られていたのか。このツイートには9500件を超える「いいね」が付けられ、大きな反響を呼んだ。投稿者は、天蚕の飼育などを支援するYAMAKO_PROJECT (ヤマコプロジェクト)のツイッターアカウント(@yamako_project)だ。

ツイートには、こんな声が寄せられている。

「穏やかで 綺麗な色ですね」
「抹茶みたいで綺麗な色ですね」
「味わい深い緑ですね」
「山蚕の着物。素敵ですね」

天蚕とは、いったいどんな蚕で、その繭はどんなものなのだろう?

Jタウンネット記者は、YAMAKO_PROJECTに詳しい話を聞いた。

天明年間から行われている「天蚕飼育」

 YAMAKO_PROJECT (@yamako_project)のツイートより

記者の質問に、ヤマコプロジェクトの担当者は次のように答えた。

――「ヤマコプロジェクト」とは、どんなプロジェクト?

「天蚕(山蚕)を育成する人・天蚕糸を使い織をする人・そしてこの活動を多面的に支援してくれる人。この三者の活動母体が『ヤマコプロジェクト』です。なんとか天蚕飼育を若い人につなげていけたらとの思いで立ち上げました。
天蚕飼育で若い人が生活ができるためには、天蚕糸の良さを認知してもらうことです。そして、天蚕の糸の良さだけではだめで、その素材で磨き上げた作品を作り上げることです」

――天蚕を生産している場所は?

「長野県安曇野市の穂高有明地区で飼育しています。 飼育林を先人の方々から3340平方メートル(3か所)お借りし、繭の生産をしています。 穂高有明地区では天明年間(1781年~1788年)より天蚕飼育が行われ、伝統産業として今も続いています」

 YAMAKO_PROJECT (@yamako_project)さんのツイートより

――もっとも苦労するのは、どんな点?

「飼育期間は2か月弱と短いのですが、次の飼育までの秋から春までの期間、樹(クヌギ、ナラなど)の剪定、落ち葉の掃除、土壌消毒、パイプハウスの補修やネットの繕い、害虫駆除、防猿対策等々、幼虫が病気やえさ不足にならないように、年間にわたって多くの配慮が必要で、飼育のすべてに苦労が伴います」

 YAMAKO_PROJECT (@yamako_project)さんのツイートより

――「天蚕」の飼育や繭の生産作には、どんな思い入れ、こだわりがあるの?

「飼育樹の芽吹きが始まる頃に、樹上で卵を孵化させるのが一般的ですが、孵化後に天敵のクモ、アリ、カエル、カメムシなどに捕食されるために、淘汰される確率が高く、収穫は50%あれば良い結果といわれます。
これを避けるため、幼虫がある程度大きく成長してから、頃合いをみながら、飼育林に放すことにしました。頭数を数えて飼育樹に放します。これにより繭は90%前後の収穫が可能になりました。 昔ながらの飼育法を継承しながらも、より良い飼育法を編み出せるよう、試行錯誤を繰り返しています。 成果がでると、次への励みになります」

 天蚕糸のしおり YAMAKO_PROJECT (@yamako_project)さんのツイートより

天蚕の魅力を伝えたいと、ツイッターで発信を始めたところ、大きな反響がありとても嬉しかったと語る、ヤマコプロジェクトの担当者。

天蚕の魅力は、一目見れば、伝わることだろう。できればしおりでいいから、実物を手に取ってみたい、そう思ったのは、筆者だけではないはずだ。

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