1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 関東と関西で違う「桜餅」、葉を取る・取らない問題ついに決着!?

関東と関西で違う「桜餅」、葉を取る・取らない問題ついに決着!?

  • 2021.2.18
  • 9785 views

春のような日が目立ってきました。また桜が待ち遠しくなる季節の始まりですが、桜と言えば桜餅を思い浮かべる人も少なくないのではないでしょうか。この桜餅には、どのような歴史があるのでしょう。今回は古今の文献を頼りに、桜餅という食べ物について探ってみました。

桜餅は、いつ、どこで生まれた?

関東の桜餅

そもそも、桜餅と言ったら、どういった食べ物を思い浮かべますか? 実は関東と関西で桜餅のスタイルは大きく異なります。その理由として、桜餅には2つの異なる源流があるからですね。

桜餅の発祥は、『ブリタニカ国際大百科事典』(ブリタニカ・ジャパン)、『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について』(講談社)、『世界大百科事典』(平凡社)、『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)など、いずれの事典にも同じ情報が掲載されているので、その由来は定まっていると思われます。

発祥の地は関西ではなく関東で、舞台は現存する東京都墨田区の長命寺になります。最寄り駅は東武鉄道曳舟駅。駅から首都高速道路の向島料金所の方に歩くと、長命寺というお寺があります。

今でも桜の名所として知られていますが、このお寺で江戸時代中期、門番をしていた山本新六という人が花見客に対し、土手の桜の葉を塩漬けにして餅を包み、売り始めました。

この餅が人気を博したため、新六はお寺の門前に和菓子店「山本や」をつくります。「長命寺桜もち 山本や」は今も創業の地にお店を構えていて、一年を通じ桜餅を販売しています。まさに同店の桜餅が、日本における桜餅の発祥なのですね。

桜餅は東西で違う?東西の分かれ目はどこ?

関西風の桜餅

ただ、この東京で生まれた桜餅にも、現在では東日本、西日本で違いが生まれています。

例えばウェザーニューズ社が2015年3月に13,207人に行った調査によると、長命寺で生まれた東京風の桜餅は、関東、東北を中心に浸透しているものの、関西を中心とした他の地域では、関西風の桜餅が一般的だといいます。

東京風(関東風)の桜餅と、関西風の桜餅の違いについては、おかべたかし著『くらべる東西』(東京書籍)でも扱われています。

東京風(関東風)は、クレープのように伸ばした小麦粉の生地の中にあんを包みます。一方で関西風は道明寺粉と呼ばれる米粉(水に浸して蒸したもち米を、干してから粗めにひいた食べ物)をまんじゅうのようにして、中にあんを包むスタイルとなっています。

どちらも桜の葉っぱで包む点は同じですが、ウェザーニューズ社の調査によると、関西風の歴史は長命寺と比べて新しく、1897年ごろが起源になるとの話。京都で売りに出された桜餅の姿が、現在の関西風のスタイルになったともいわれています。

その関西風の桜餅が後発ながら全国に浸透し、現在では東京ですら関東風、関西風の桜餅が共存しているといいます。関西風の桜餅は、今ではオリジナルの長命寺の桜もちスタイルをしのぐくらいの勢いに達しているのですね。

いつ食べる(売っている)スイーツなのか?

関東風の桜餅

この桜餅、具体的には1年でいつ食べられる(売っている)スイーツなのでしょうか。

普通に考えて「桜餅」というくらいですから、春が感じられる季節に流通が増えると考えられます。オリジナルである「長命寺桜もち 山本や」では、一年を通じて販売されていると先ほど軽く紹介しましたが、ほかのお店の場合は一般的に、やはり春が主要な時期になります。

例えば、先ほど紹介した『くらべる東西』では、関西風の桜餅の取材として、「鶴屋八幡 大阪本店」を訪ねています。同店で桜餅が販売される時期は2月~3月。桜の気配が始まって、桜が咲くころまでが一般的な販売時期と考えられそうですね。

そもそも桜餅の葉は食べるの?

桜並木

桜餅と言えば、大きな疑問もあります。餅を巻いた桜の葉は、食べるべきなのでしょうか、それとも食べないのでしょうか。

『くらべる東西』の著者は、桜餅の発祥のお店である「山本や」と「鶴屋八幡 大阪本店」に対して、「桜の葉は付けたまま食べるのか?」と聞いています。

その問いに対して、両店とも「お好みで」と答えたそうですから、正式な決まりはないみたいですね。ただ、「山本や」は「外して食べる」をお勧めし、「鶴屋八幡 大阪本店」は「1枚を外して、残りの1枚は残して食べる」と意見を出しています。

「山本や」にしろ、「鶴屋八幡 大阪本店」にしろ、同店の桜餅は餅を2枚の葉っぱで包んでいます。1枚を外すか、2枚を外すかという話ですね。

ちなみに「山本や」の公式ホームページ上には、桜餅を包んでいる葉についての問い合わせが、最も多いと書かれています。そのホームページ内には、印象的なエピソードが紹介されています。

ある人が桜餅を葉(皮)ごと食べている姿を見て、その隣にいた人が「皮をむいて食べたほうがいいですよ」と言ったそうです。すると、言われたほうは「そうですか」と納得し、そのまま近くの「川」のほうを向いて食べたのだとか。

春の川と堤防の桜並木を眺めながら桜餅を食べれば、確かにおいしそうです。桜の餅の正しい食べ方は「川を向く」、覚えておきたいですね。

 

[参考]

※ 【桜餅】あなたは“関東風”? “関西風”? - ウェザーニュース

※ 長命寺桜もち 資料室「錦絵」 - 長命寺桜もち

[All photos by Shutterstock.com]

元記事で読む
の記事をもっとみる