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コロナ禍で閉店相次ぐゲームセンター エンタメ産業を支え続けた「陰の立役者」に未来はあるのか?

  • 2021.2.7
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スマホアプリゲームの台頭やコロナ禍などで閉店が相次ぐゲームセンター。業態転換を図る運営企業も出るなか、業界は今後どのようになっていくのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

消えゆくランドマーク店舗

首都圏では、2021年1月8日(金)に発令された2度目の緊急事態宣言が続いています。そのため、飲食店をはじめとするさまざまな店舗が短縮営業や臨時休業、客足の減少、感染防止対策の負担などで苦境に立たされています。

そんななか、大きな打撃を受けている店舗のひとつがゲームセンターです。2020年の新型コロナの感染拡大以降、都内の大型繁華街ではの閉店が相次いでいます。

秋葉原の万世橋交差点角に位置し、オレンジ色の目立つビルで秋葉原のシンボル的な存在だったゲームセンター「セガ秋葉原2号店」(千代田区外神田)が2020年8月30日に閉店。同じく秋葉原駅近く、中央通り沿いに位置していた1棟同系列店舗「アドアーズ秋葉原店」「カラオケアドアーズ秋葉原店」(同)も2020年11月8日に閉店しました。

また新宿歌舞伎町の老舗大型ゲームセンター「新宿プレイランドカーニバル」も2020年8月29日に35年の長い歴史に幕を下ろしました。さらに対戦格闘ゲームの聖地のひとつである「GAME SPOT21」(新宿区西新宿)も2021年1月20日に閉店。池袋ではサンシャイン60通りの角に位置し、23年間営業してきた老舗ゲームセンター「シルクハット池袋」(豊島区東池袋)が2021年1月11日に閉店しています。

いずれも都内の大型繁華街のランドマーク的な店舗であり、一度は店内で遊んだり、店舗の前を通りがかったりして、記憶にある人も多いのではないでしょうか。

近年減少し続ける店舗数

コロナ以前からゲームセンターは店舗数が減少傾向にありました。

ゲームセンターのイメージ(画像:写真AC)

警察庁によれば、2019年の全国にあるゲームセンター等の許可数(営業所数)は4022軒で、前年より171軒、4.1%の減少となっています。設置台数は34万383台で、こちらも前年より9452台、2.7%の減少となっています。

過去5年間のトレンドを見ても、店舗数、設置台数いずれも徐々に数が減ってきていることがわかります。

減少しているのは主に小規模~中規模の店舗で、不採算店の淘汰(とうた)が進展した結果、アーケードゲームの市場規模自体は2013年ごろに下げ止まっていました。しかし集客業態としてのゲームセンターのピークはとうに過ぎており、コロナが経営環境悪化に追い打ちをかけたと言えるでしょう。

スマホアプリの台頭で需要減

かつてゲームセンターは、どんなに衰退していても「ヒット機種がひとつ生まれれば起死回生できる業種」と言われ、業績の停滞も比較的楽観視されてきました。

過去には「UFOキャッチャー」「プリント倶楽部」「ダンスダンスレボリューション」などのエポックメイキングとなるヒット機種が登場し、その都度時代を代表するような大きなブームとなって、市場をけん引しました。

以前ほどの盛り上がりはありませんが、最近でも「妖怪ウォッチ ウキウキペディア学園Y」「艦これアーケード」が出た際にはゲームセンターの前に長蛇の列ができました。しかし、近年はポータブルゲーム機やスマホアプリの台頭でゲームセンターの需要は大きく奪われ、大手ゲームメーカーの開発の軸足はアーケードから別分野へとシフトしています。

在りし日の「セガ秋葉原2号店」。2020年3月撮影(画像:(C)Google)

例年2月にはアーケードゲームマシンの見本市「ジャパンアミューズメントエキスポ(JAEPO)」が幕張メッセ(千葉市)で開催されていますが、近年の出展内容は人気タイトルの後継機が多く、徐々に完全新作が少なくなっています(2021年はコロナ感染予防のため中止)。

プレイグラウンド運営に注力する企業も

アーケードゲームへの開発投資がトーンダウンし、精彩を欠いている感は否めません。

国内で多くのゲームセンターを運営する大手ゲームメーカーを見ると、セガサミーホールディングス(品川区西品川)はゲームセンターを運営するセガエンタテインメント(現・GENDA SEGA Entertainment)の株式の一部をアーケードゲームのレンタルなどを手掛けるGENDA(千代田区平河町)に譲渡、同ホールディングスの連結子会社から外してアミューズメント事業を本体から切り離しました。

また、バンダイナムコアミューズメント(港区芝浦)は今も新しいゲームセンターを開発し続けているものの、「スペースアスレチック TONDEMI」(大田区平和島ほか)、「MAZARIA」(豊島区池袋、2020年8月31日閉店)など、プレイグラウンドやキャラクター関連に将来性を見いだし、新業態開発に注力しています。

「スペースアスレチック TONDEMI」(画像:バンダイナムコアミューズメント)

ゲームセンターが時代の流れで閉店していくのは仕方ないですが、日本のゲーム文化をけん引した存在であり、ゲームセンターで遊んできた世代としては残念で仕方ありません。

特に都心の店舗はインバウンド(訪日外国人)のナイトエンターテインメントとしても機能していたため、シティーツーリズム(都市を楽しむことを目的とした旅)の観点からも存続が望まれます。

eスポーツに沸くゲーム業界

近年、ゲーム業界はeスポーツに沸いています。「60億円以上と言われる莫大(ばくだい)な市場規模」「海外で人気の実績があり、国内では未開拓」というキーワードが大企業の投資を呼び込んでいます。

eスポーツのイメージ(画像:写真AC)

海外でのeスポーツ大会は、FPS(ファーストパーソンシューティング。一人称目線でプレイするシューティングゲーム)やRTS(リアルタイムストラテジー。リアルタイムでゲームが進行するシミュレーションゲーム)などが主流ですが、国内ではこれまでの格闘ゲームやパズルゲームなどのコンシューマーゲームの大会もeスポーツと冠しています。

また、日本では独自にeスポーツのプロライセンスを発行していますが、日本のプロゲーマーは以前から存在し、海外の大会でも活躍していたため、従来のゲームファンは今ひとつピンとこない面もあります。

eスポーツの関連企業・団体ではスクールでプロを養成したり、専用スタジアムを開発したりするなど、eスポーツの推進活動を活発化して盛り上げようとしている状況です。

求められる新たな商業スキーム

現在の日本の有名プロゲーマーには、ゲームセンターで研さんを積んできた人も少なくありません。eスポーツがプロスポーツならば、ちまたのゲームセンターは

「草の根でゲームエンターテインメントを支えている存在」

なのではないでしょうか。

プロスポーツの世界では地域の下部組織など、地域に密着した活動が重要な位置付けになっています。eスポーツも新しいスタジアム開発やスクールビジネスだけでなく、ちまたのゲームセンターも取り込んで観戦者やプレーヤーが盛り上がっていけるスキームが望まれます。

首都圏のゲームセンターではコロナ禍で営業を制限している店舗が見られ、クラウドファンディングなどで支援を求めている店舗もあります。

また、飲食店に飲食代金を先払いしてコロナ収束後に利用する支援システム「さきめし」のゲームセンター版で、ゲームセンターのプレイ料金(クレジット)を先払いする支援サービス「さきクレ」といった個性的な支援システムも展開されています。

「さきクレ」のイメージ(画像:Gigi)

ゲームセンターに興味のある人はぜひ、チェックしてみてください。

中村圭(文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー)

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