1. トップ
  2. おでかけ
  3. ”境界”をあいまいに。注目のアーティスト千葉正也の唯一無二ワールドへ迷い込む

”境界”をあいまいに。注目のアーティスト千葉正也の唯一無二ワールドへ迷い込む

  • 2021.2.3

展覧会「千葉正也個展」が、東京オペラシティ アートギャラリーにて、3月21日(日)まで開催されている。千葉は、古今東西の絵画のスタイルを継承しつつも、絵画と彫刻、2次元と3次元の境界線に独自のアプローチで向き合い、既存の枠組みを曖昧にすると話題の若手アーティスト。その作品は、東京都現代美術館に所蔵されるなど、これからのアート界を担う存在だ。自分が絵の中に迷い込んだのか、絵が空間に飛び出したのか…。展示全体が、千葉ワールドともいえる斬新な会場に足を踏み入れたら、アート鑑賞の常識までくつがえされてしまうだろう。

国内外で注目の作家による独特の世界観

千葉正也は、1980年に生まれ、現在は東京・八王子エリアを拠点に活動している気鋭のペインターだ。これまでも個展をはじめ、国内外の数多くのグループ展に参加。また、武蔵野美術大学、多摩美術大学などで後進の指導にあたるなど、ペインターのホープとして大きな期待と注目を集めている。

平和な村 2019-2020 油彩, キャンバス 東京国立近代美術館蔵 ©千葉正也 courtesy of ShugoArtsHarumari Inc.
平和な村 2006 油彩, キャンバス 高橋龍太郎コレクション蔵 ©千葉正也 courtesy of ShugoArtsHarumari Inc.

千葉は、紙粘土や木片で制作した人型のオブジェを日用品とともに周到に配置した、仮設の風景をつくることから絵画制作をスタート。木や金属、プラスチックといった多彩な素材からなるこの風景を、それぞれの質感を精巧に描きわけることで絵画化する。さらに、完成した作品を自作の簡素な木製スタンドに置いたり、一定の時間ごとに入れ替えたり、あらためて現実の空間に置いてみる。こうして、絵画と彫刻、2次元と3次元の世界の境界を溶解させる、という表現を試みている。

自画像 #4 2015 DVD 作家蔵 ©千葉正也 courtesy of ShugoArtsHarumari Inc.

また、千葉が手掛けるのは絵画だけにはとどまらない。自身の顔を、舞台女優やテコンドー選手などの顔に重ねて描く「自画像」シリーズにも見られるように、写真や映像、インスタレーション、サウンドアート、パフォーマンス、資料展示など、多岐にわたる表現媒体を駆使して、斬新な創作活動を展開している。

亀が歩き回る、唯一無二の千葉ワールドへ

初の大規模個展となる「千葉正也個展」では、東京都現代美術館に所蔵される《タートルズ・ライフ #3》のほか、《大自然》、《平和な村》などの絵画作品、また「自画像」シリーズも展示。なんと生きた亀まで作品の一部になっているというから、想像を絶する斬新な鑑賞体験ができそうだ。

展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生Harumari Inc.
展風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生Harumari Inc.

長い歴史の中、これまでも偉大なアーティストたちが多様な作品を生み出してきた絵画という表現媒体を通して、現代アートの枠組みに揺さぶりをかける、いま注目の気鋭アーティスト・千葉正也。自分が絵の中に迷い込んだのか、絵が空間に飛び出したのか…。千葉のスリリングな試み、多彩でユニークなアプローチに包まれた会場に足を踏み入れたら、やり尽くされたと思っているものにも、まだまだ新しい可能性があることを思い知らされる。

アイキャッチ画像:タートルズ・ライフ #3 2013 油彩, キャンバス 東京都現代美術館蔵 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts

元記事で読む
の記事をもっとみる