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若葉竜也の「千代ちゃん」をもう一度 『おちょやん』“小暮ロス”を起こした優しさ

  • 2021.2.1
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『おちょやん』写真提供=NHK

『おちょやん』第8週では、SNSも騒然となるほど千代(杉咲花)に対する父親テルヲ(トータス松本)の暴言、ダメ親父ぶりが炸裂した。博打をやめられないテルヲは、いつも調子のいい言葉を並べては千代を裏切る。借金を繰り返し、返済できなくなると千代を頼る。子供の頃から苦労が絶えない千代にとって、鶴亀撮影所で出会った助監督の小暮(若葉竜也)は癒しであり、初恋の人であり、応援してくれる女優として心強い味方であった。

「どうしようもない父を見て育った自分は、誰も好きにならなくていいと思っていた。でも、そうではないとあなたが教えてくれた。あなたを好きになれてよかった」

千代が撮影所で初めて褒められたその演技は、小暮に対する素直な気持ちを表現したものだった。

小暮は、いつか監督になって自分の作品で千代を主役にしたいと脚本を書き続けていた。しかし、なかなか認められず、助監督のままだったことで、父親から実家に帰って跡を継ぐよう説得される。千代はといえば、テルヲが自分の貯金を当てにして現れたことが原因で撮影所やカフェー「キネマ」に迷惑をかけたうえ、千代の通帳と印鑑を持ち出そうとしたことで、テルヲと親子の縁を断ち切った。

啖呵を切り、自分の財布の中身を投げつけ、「金の切れ目が縁の切れ目や……二度とうちの前に、その薄汚い顔見せんといて」と言った千代は、女優を続ける意欲さえ失った。そんなタイミングで小暮は「僕と一緒に東京に来てくれないか」「僕と結婚してください」と千代にプロポーズした。千代はテルヲに全財産を持っていかれて、まさにすっからかん。小暮の父は東京で病院を経営していて、彼と結婚すれば裕福な暮らしが待っている。そして、何よりも小暮は優しい。

でも、千代は喜びよりも戸惑いの表情を見せる。千代の戸惑いの理由は、撮影所で一平(成田凌)と再会したことによりはっきりと分かった。小暮を演じる若葉竜也は、一平役の成田凌と映画『愛がなんだ』でも共演しているが、どちらの作品でも、2人は正反対のキャラクターを演じている。『愛がなんだ』では成田凌演じるマモルがテルコ(岸井ゆきの)を振り回し、若葉竜也演じるナカハラは、テルコの友人・葉子(深川麻衣)に振り回されるという役柄。

『おちょやん』において小暮は、映画監督という職業に就くことを夢見て、理想を追い求めるピュアな青年。なかなか脚本が認められず、助監督のまま過ごしているが、挫折感や屈辱を味わうほど追いつめられてはいない。

家族に愛されて育った品の良さ、穏やかさが小暮の魅力であり、「落ち着いたら千代ちゃんのお父さんも東京に呼んであげたらいいよ。うちで面倒みるから」などという言葉が出てくるのだ。

テルヲのことだから、呼ばれなくても小暮と千代が結婚したら、悪びれる様子もなく堂々と面倒を見てもらいに行くだろう。小暮の両親だけでなく、親戚や仕事の関係者にも金を無心するに違いない。結婚に甘い夢を見られるほど千代は恵まれた環境に育っていなかった。

一平もまた子供の頃から家庭環境に苦しんできたから、千代とは本音で話ができる。千代に「あんたにうちの何がわかんねんな」と言われても、一平は「わかるはずないやろ」と答える。一生懸命わかろうとする小暮は、そんな突き放したような言い方はしないだろう。

苦労を続けてきた千代だからこそ、自分の苦しみが他人に簡単にわかるわけはないと諦めているところもあるだろうし、毒親に縛られることなく自由になりたいに違いない。

「お前の苦しみはお前にしかわからへん。俺の苦しみは、お前なんかには絶対わからへん。そやから俺は芝居すんねん」

一平のその言葉は何よりも千代の心に刺さったはずである。残念ながら、素直で穏やかな小暮のプロポーズよりも、ぶっきらぼうな一平とのやりとりに千代の求める答えがあったということ。

とはいえ、小暮の存在は大きく、SNSでは小暮沼が出来たくらいで、あの「千代ちゃん」と呼ぶ声と笑顔が見られなくなると小暮ロスになる人が続出しそうだ。だが、2月19日公開の『あの頃。』でハロプロヲタ、4月9日公開の『街の上で』では主演俳優としての若葉の演技を観ることができる。『おちょやん』をきっかけに、若葉にとって大躍進の1年になりそうだ。(池沢奈々見)

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