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“唾液”が持つ8つの力がすごい! シワ改善やメンタル強化など

  • 2021.1.29
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唾液に、どんなイメージを持っていますか? 食べ物を消化しやすくするもの、ご飯に甘みを出すもの、でもちょっと汚いもの…? 実は唾液は、私たちのカラダを守ってくれるヒーロー的存在。その力とは、そして高める方法とは。しっかり学んでおきましょう。

唾液中の1%の成分が全身の健康をサポート。

酸っぱいものを想像すると口の中にじわりと溢れてくるもの。自分の唾液を意識するのはそんなときくらいかもしれない。ところが、この唾液の健康効果が最近、俄然注目されているという。

長年唾液の研究に携わってきた槻木恵一先生によれば、「唾液の99%は水分ですが、残りの1%に100種類以上の成分が含まれています。それらがさまざまな病気の予防や心身の健康に影響を及ぼすことが分かってきています」とのこと。

唾液は、毛細血管の中の血液が唾液腺という組織を通過するときに作られて口の中に送られる。興味深いのは、このとき作られた唾液に含まれる成分の一部が血管を通じて全身に運ばれていくこと。

「唾液は飲み込んだらおしまい、と思われがちですが、その成分は舌の下から血液中に送られて、いろいろな作用が期待できると考えられるのです」

たとえば今、みんなが一番欲しがっている免疫力、腸内環境や美肌、メンタルにも影響を及ぼすなど、唾液に秘められたパワーは想像以上。

「唾液は通常、1日に1000mlくらい出ています。ところが長期間のマスク生活によるストレス、喉の渇きを感じにくいことによる水分の摂取不足、無意識の口呼吸、顔の筋肉を動かさないことなどで唾液の量が減っている可能性があります」

そんな今だからこそ、改めて唾液の役割を知っておきたい。体内美容のカギは“唾液力”にあり!

唾液が持つ、8つのすごい力。

唾液には、驚くほど多くの成分や抗菌物質が。それらが私たちの健康や美容に与えてくれる恩恵は、ざっとこんなに!

唾液の力

1:腸内フローラのバランスを整える。

腸内フローラとは、善玉菌や悪玉菌、日和見菌が混在した腸内細菌の集まりのこと。腸内フローラのバランスがとれていれば全身の免疫力が高まり、崩れれば体調を崩す原因に。唾液中のIgAにはその腸内フローラのバランスを保つ働きがあるという。

「少し前まで、口の中の菌は胃酸で壊されて腸まで届かないといわれていましたが、最近の研究ではそうではないことが分かってきました。たとえば、歯周病菌の一種が腸に届くと腸内フローラが乱れます。逆に唾液中のIgAが働いて口内の悪玉菌が除去されれば、腸内フローラのバランスは保たれます。ただしIgAは歯周ポケットには行き届かないので、歯周病を悪化させないことが重要です」

2:細菌やウイルスを口内で撃退!

唾液にはさまざまな抗菌物質が含まれていて、そのなかで最も大事な働きをしているのがIgAと呼ばれる成分。

「IgAは細菌やウイルスなどの異物からカラダを守る抗体で、唾液腺で常に作られ続けている物質です。人の粘膜には異物の侵入を防ぐ粘膜免疫というバリア機能があり、IgAはその主役となる抗体。IgAが少なくなると風邪をひきやすくなるんです」

異物(抗原)に対して一対一で対応するのが、いわゆる抗体の役割。ところがIgAは似たような複数の異物に対応するという特徴が。

「口はカラダの入り口なので、常にいろんな抗原に反応してブロックする。そんな幅広さのある仕組みができているんだと思います」

頼りになる門番、それが唾液中のIgAというわけ。

3:睡眠の質を高め、快眠を促す。

IgA以外にも、健康に関わるさまざまな成分が唾液には含まれている。そのうちのひとつがメラトニン。

「メラトニンは脳やカラダを睡眠に入りやすい状態にするホルモンです。主に脳の松果体という部分で作られていますが、唾液腺からも分泌されていることが分かっています」

メラトニンは夜になるとその分泌量が増し、脳やカラダを眠りに誘う。脳だけでなく唾液腺も、快眠にひと役買っている可能性が。

4:お肌をぴちぴち&ツヤツヤに保つ。

唾液に含まれる成分には“成長因子”と呼ばれるグループがある。これは細胞の分裂や増殖に関わるタンパク質のこと。このうちのひとつがFGFと呼ばれる肌細胞に働きかける物質。

「FGFはコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを増やすシグナルを出して細胞の働きを助けます。考えてみれば美容にいいといわれるツバメの巣も唾液の塊ですから、FGFが豊富なはずです」

シワ改善や美白効果の可能性もありだとか。

5:胃腸や口内の粘膜を守る。

成長因子のひとつにEGFと呼ばれるものがあり、こちらは皮膚や粘膜の表面を覆う細胞に信号を送り、その新陳代謝を促す働きがある。

「皮膚や粘膜の新陳代謝が促されることで、擦り傷や切り傷を修復する作用が期待できます。動物が傷口を舐めるのはEGFの働きを経験的に知っているからです。口の中の傷が治りやすいというのもそうした理屈です」

成長因子とはまた別に、ムチンという唾液のネバネバ成分も頼れるガードマン。口の中や胃腸などの粘膜の表面を覆って保護してくれるという役割が。

6:メンタルの落ち込みを防止する。

「唾液腺からはBDNFという成長因子も出ています。脳の神経細胞に働きかけて分化や増殖を促す“脳由来の神経細胞の栄養”です。脳由来といいながら唾液腺からも出ているのが興味深いところです」

BDNFにはストレスによる脳の神経細胞へのダメージを抑える働きがあるとされている。脳内のBDNFが増えるとストレス耐性が上がることが実験でも証明されているとのこと。唾液力はメンタル強化にもつながるという話。

7:脳もカラダもアンチエイジング。

BDNFと同様、脳の神経の働きを助けるのがNGFという成長因子。こちらは神経細胞の活動を促したり、細胞の修復などを担当。脳の老化を抑えて若返りを促すアンチエイジング効果が期待できる。

「また、唾液腺から大量に分泌される糖タンパクのラクトフェリンには、細胞の老化を抑える抗酸化作用が期待できます。細胞を傷つける活性酸素の働きを抑制し、全身の細胞の老化を防ぎます」

脳はNGF、カラダはラクトフェリンで若々しく。

8:虫歯を予防する。

食事をすると口の中が酸性に傾き、酸に弱い歯が溶け出したり虫歯のリスクが高まる。これを防いでくれるのが唾液に含まれている重炭酸塩という成分。

「重炭酸塩は酸性に傾いた口の中の環境を中性に戻してくれます。これを唾液の持つ“緩衝作用”といいます。緩衝作用は唾液の量が減ると弱まる傾向があり、虫歯のリスクも高まります」

歯のケアをしているのに虫歯になりやすいという人は、唾液の量が足りていないのかも。

ネバネバ唾液とサラサラ唾液、どっちがいいの?

緊張したとき、口の中がネバネバして喋りにくい。気の置けない人との食事中、サラサラの唾液がたくさん出て食べ物を美味しく感じる。このように、唾液にはネバネバとサラサラの2種類がある。

「ネバネバ唾液の正体は糖タンパクのムチンです。唾液腺は自律神経の支配を受けていて、交感神経が優位になるとムチンが増えます。交感神経は戦いの神経です。原始時代には外敵との戦いで口の中が傷だらけ。できるだけ防御しようとムチンが口内を保護するという反応が起こったと考えられます」

ストレス時にはムチンが多いネバネバ唾液がカラダを守り、リラックス時にはムチンが少ないサラサラ唾液が味覚の感度を高めて消化を促す。どちらも生きていくためには必須の唾液。

つきのき・けいいち 神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長、環境病理学教授。専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。『唾液サラネバ健康法』(主婦と生活社)などの著書がある。

※『anan』2020年2月3日号より。イラスト・山中玲奈 取材、文・石飛カノ

(by anan編集部)

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