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世界ではどのような金融教育を行っている? 日本に必要な金融教育とは

  • 2021.2.1
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世界的に見て、日本の子ども達は優秀です。世界中の経済、社会福祉のための活動を行う国際機関、OECDが調べる生徒の学習到達度調査でも、日本は世界のトップレベル。教育環境もしっかり整っています。
しかし、金融に関する教育についてはまだまだ課題が多い状況です。
そこで今回は、世界ではどのような金融教育を行っているか、そして日本に必要な金融教育とはどのようなものなのか、考えていきたいと思います。

日本では金融教育があまり行われていないというのは本当か

金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2019年)※1」によると、学校や勤務先で生活設計や家計管理などの金融教育を「行うべき」、との意見は67.2%ありました。
この調査は、全国の18~79歳、2万5000人を対象に行われており、前回の2016年の調査では62.4%。金融教育はさらに求められている状況です。

調査では、自分は「金融教育を受けた※2」と回答している人はわずか7.2%。
75.0%の人が「金融教育を受ける機会はなかった」、1.8%が「受ける機会はあったが、自分は受けなかった」、16.0%は「わからない」、と回答しています。

金融リテラシー(=お金の知識・判断力)は、安定した生活を送るために必要不可欠なスキルです。金融リテラシー調査では、8分野にわけて設問を作り、正答率を出しています。
1.家計管理
2.生活設計
3.金融取引の基本
4.金融・経済の基礎
5.保険
6.ローン・クレジット
7.資産形成
8.外部知見の活用(困った時の相談先を知っているか、など)

これらの設問の正答率が、金融教育を受けた学生は53.6%であるのに対して、受けていない学生では39.6%と、大きな差が出ています。
そのため、今後も金融教育はしっかり進めていく必要と考えられます。

では、日本の学校では金融教育はまったく行われていないのでしょうか。

実は今から15年前の2006年には、学校における金融教育をより効率的に進めるためのプログラムづくりが始まっていました。
小中学校、高等学校では、社会科、生活科、家庭科、道徳、総合的な学習の時間、学級活動や学校行事の時間などに教えていくことができるとして、学習指導要領にも金融教育が盛り込まれるようになっています。

しかし、日本証券業協会の調査によれば、金融教育のための時間の確保や、教育内容の質について課題があることが示されています。(「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書(2014年)」より)※3
金融教育の時間数で最も多かったのは、中学1~2年生では0時間、中学3~高校3年生では1~5時間程度と、決して多いとは言えません。
しかし、受験科目の授業が優先されたり、学校行事などがあったり、なかなか時間の確保は簡単ではないようです。

また、教師からは教科書の内容が十分ではないとの指摘もあり、「やや不十分である」が32.1%、「不十分である」が5.7%で、約4割の教師が不十分と感じています。
さらに、知識の習得にかたよってしまい、「用語・制度の解説が中心となってしまい、実生活とのつながりを感じにくい」が55.0%、「知識は身に付くが、能力や態度が身に付きにくい」が40.9%と、教育内容が実践的でないことも問題視されています。

つまり、金融教育をしてはいても、時間が短いうえに身につかないので、「金融教育を受けた」という実感が得にくいのではないでしょうか。
※1:https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2019/
※2:https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2019/pdf/19literacy.pdf
※3:https://www.jsda.or.jp/about/kaigi/chousa/kenkyukai/content/jittai_rep.pdf

お金の知識がないとどんな問題があるのか

そもそも、なぜ金融教育が必要なのでしょうか。

金融教育とは、決して金儲けのやり方を教えるものではなく、また、金融の専門的で難解な知識を覚えさせるものではありません。
金融教育を通じて子ども達に身に着けてほしいのは、お金を通じて自分の生活のことや社会のこと、将来のことなどをしっかり考えられるようになるスキルです。

お金を取り巻く環境は、今までにないスピードで変化しています。
昭和の時代には現金決済ばかりでしたが、今や多くのところでキャッシュレス決済が取り入れられています。キャッシュレス決済と言ってもその種類は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、電子マネー、スマホ決済など、多種多様にあるため使いこなすためには知識も必要です。

クレジットカードには、支払い方法が1回払いだけではなく、複数回に分けて払える分割払いや、毎月の支払いを同額にするリボルビング払い=リボ払いがありますが、分割払いやリボ払いには手数料がかかります。手数料のことを知らずに、安易にリボ払いを選んでしまうと、支払うお金が増えてしまいます。
このように、お金の知識がないと損をするのです。損をすることは、自分や家族の生活にとって不利になります。

また、年金をはじめとした社会保障は、少子高齢化を背景に先細りの不安があります。そのため、老後や病気になった時、介護が必要になった時などの備えは、自分自身でも早めに考えておかなければなりません。
いざと言う時になってお金が足りない、ということのないように、貯蓄や投資をして資金を作っておけるスキルが必要です。

その他にも、節税のことを知らずにいるために税金を納め過ぎてしまったり、安易な儲け話に騙されてしまったり、お金の知識がないことは損につながりやすいと言っていいでしょう。
しかも、ひと昔前にはなかった新しい金融商品が増えています。FXや仮想通貨など、あやふやな知識で手を出しては危険です。

正しい金融教育によって、お金の知識や情報を増やしていくことが大切です。

世界の金融教育の例

では、世界各国ではどのような金融教育をしているのでしょうか。
海外では、多くの国で家計管理のことだけではなく、投資についても学んでいます。

アメリカ

アメリカの金融教育は、早くからの自立を前提に、実践的な教育としてカリキュラムに組み込まれてきました。学習内容は地域や学校が決めるようになっていて、全米で統一されているカリキュラムではありません。また、学校での金融教育を地域の企業が支援するシステムもあり、地域全体で子どもの教育をしている姿がうかがえます。

金融経済教育の推進組織ジャンプスタート(Jump Start)では、中学生と高校生が理解するべきパーソナルファイナンスについての枠組みを開発しています。
教育分野は「収入」「マネー管理」「支出とクレジット」「貯蓄と投資」の主要4分野です。収入支出の基本的なことから、貯蓄や投資の理由や方法など幅広く学べる内容になっています。

子どもは成長し、大人の消費者となります。金融教育を受けて経済的に安定した消費者は、市場経済における役割を担うことになるでしょう。その結果、健全な市場を生み出し、経済全体への望ましい影響があると考えられています。
参考:https://www.shiruporuto.jp/public/family/training/susume/susume401.html

イギリス

イギリスでは、2000年から必修科目になった「シティズンシップ教育」に、お金に関する学習が含まれています。
シティズンシップ教育は、中学校レベルで必修とされていて、市民として生きていく上での基礎を勉強する科目であり、さまざまな教科を横断している教育です。

イギリスでは、ニートやホームレスの増加、政治離れなどが社会問題となっていますが、それらは先進国に共通の悩みでもあります。
シティズンシップ教育をすることで、社会的・道義的責任、コミュニティ参加、政治的リテラシーを育成し、コミュニティの再生、あるいは民主社会の活性化を目指しています。
参考:https://www.shiruporuto.jp/public/family/training/susume/susume401.html

カナダ

カナダ政府は2014年、5年間の任期で金融リテラシーリーダーを任命しました。
国家戦略は、すべてのカナダ人の金融リテラシーを強化し、お金と債務を賢く管理できるようにすることが目的です。それは、将来のために計画的に貯蓄をすることや、詐欺や経済的虐待を防止することにつながります。

そのため金融教育も盛んで、カナダの多くの州では、金融リテラシーは数学、キャリア開発、ビジネス研究、社会研究といった科目の一部に組み込まれています。
参考:https://www.oecd-ilibrary.org/education/pisa-2018-results-volume-iv_48ebd1ba-en

フィンランド

フィンランドでは、金融・起業家教育は教科横断型の科目として、20年以上の歴史があります。
最近のカリキュラム改訂では、7年生から9年生の生徒にすでに義務付けられている3時間に加えて、初等教育(4年生から6年生)に週2時間の社会科、経済学、起業家教育が追加されました。

金融教育は、フィンランドの基礎教育(1~9年生)すべての科目にリンクされている横断的な能力である、「労働生活能力と起業家精神」の一部としてとらえられています。
そして、独立した社会的および経済的主体になること、個人的な財政を管理することをゴールとしています。
参考:https://www.oecd-ilibrary.org/education/pisa-2018-results-volume-iv_48ebd1ba-en

日本に必要な金融教育とは

金融教育は諸外国でも国を挙げて行っています。金融リテラシーの高い人が増えることで、経済的に安定した暮らしを送る人が増えます。
そして、ひいては国内の経済が健全に成長していくことができるのです。

日本では、2022年から高校で家計管理をはじめとして保険や老後の備え、投資信託についても学ぶことになりました。
文部科学省が発表した「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説家庭編※4」によれば、高校の家庭科の授業では、家計の収支バランスをとることの重要性はもちろんのこと、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴を学ぶとされています。

人生の3大費用である教育資金・住宅取得・老後の備えの他にも、事故や病気、失業などリスクへの対応の必要性を学び、どのように準備をすればよいか理解が深まることでしょう。
また、収入と税金、社会保険料の関係などを通じて、家庭の経済と国の経済のつながりについても知ることができます。

家計管理について学んでおけば、収支のバランスがとれなくて、クレジットカードで買物を続けた結果多重債務に陥ってしまったり、教育・住宅・老後の資金準備をしていなくて希望するライフスタイルが実現できなかったりすることは避けられるでしょう。

そして、金融の基礎ができていることで、社会に出てから新しい金融知識を得ることも容易になるのではないでしょうか。

経済は常に動いています。
金融の学びを続けることで、1人でも多くの人が人生を楽しんで欲しいと思います。
※4:https://www.mext.go.jp/content/1407073_10_1_2.pdf

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