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スターリン体制下のパラレル世界で暮らす人々の姿が 『DAU. ナターシャ』日本版予告編

  • 2021.1.27
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『DAU. ナターシャ』(c)PHENOMEN FILMS

2月27日に公開される『DAU. ナターシャ』の日本版予告編が公開された。

第70回ベルリン映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した本作は、いまや忘れられつつある「ソヴィエト連邦」の記憶を呼び起こすために、ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーによる「ソ連全体主義」の社会を再現した前代未聞のプロジェクトの映画化第1弾。

本作では、秘密研究都市にあるカフェで働くウェイトレス、ナターシャの目を通し、観客は独裁の圧制のもとでたくましく生きる人々と、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市を体感していくことになる。そして、巨大な迷宮の入り口であると同時に、当時の政権や権力がいかに人々を抑圧し、統制したのか。その実態と構造を詳らかにし、その圧倒的な力に翻弄される人間の姿を生々しく捉えていく。

公開された予告編は、スターリン体制下の1952年というパラレル世界に送り込まれた人々の日常を捉えたもの。

ソ連の秘密研究所に併設された食堂の責任者として働くウェイトレスのナターシャの慌ただしそうな“昼間”の姿は、夜に閉店すると一変、同僚ウェイトレスのオーリャと店内の食糧を肴に夜な夜な気だるくお酒を飲みかわす。ナターシャは、オーリャに対して上司としての優越性だけでなく娘ほどに年の離れた若い女性への複雑な感情など、抱える思いは単純ではない。そんな姿をはじめ、研究所に関わる人達が繰り広げる異常なまでにハイテンションな宴の様子、ナターシャが高名な科学者リュックと繰り広げる濃厚なラブシーン、謎めいた研究装置、歩くのもおぼつかないほどに酩酊したオーリャ、全てに嫌気がさしたナターシャの様子など、この都市に生きる人々の生々しい姿が描かれている。そして、ナターシャはリュックとの関係を疑われ、KGBに連行され、激しい拷問を受けることになる。

本作の監督のひとりで「DAU」プロジェクトの責任者でもあるフルジャノフスキーは、ソ連全体主義を呼び起こさせるともいえるこのプロジェクトに取り組んだ理由について、「私はユダヤ人の家系だ。母はウクライナ出身で、故郷のユダヤ人は全員殺害された。もし母が戦争の初めの頃に逃げていなかったら、私は今ここに座っていなかっただろう。ドイツ兵たちはただの普通の男性だったことを理解する必要がある。『DAU』を通じて人間の本性が非常に複雑であることが分かる。この虐殺を伝える言語をどうすれば見つけられるだろうか? それについてどのように話し、その記憶をそうやって新しい世代に引き継ぐことができるだろうか。『DAU』は、ソヴィエトのトラウマについて語ります。バビ・ヤール(1941年に、 ホロコーストにおける1件では最大の犠牲者を出したと言われる虐殺が起こったウクライナの地名)もグラーグ(ソ連時代の強制労働収容所・矯正収容所 の管理部門の名称だが、ソ連の奴隷労働システムそれ自体を表す言葉としても使用される)も、最近起こったことだ。ソヴィエト連邦以降の世界には、犠牲者または加害者、あるいはその両方がいない家族は存在しない。それこそがソヴィエトのトラウマだ。ソヴィエトが残した病は記憶喪失だ。誰もが覚えておきたいことだけを覚えている。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返される。意識的に覚えていないのかもしれませんが、魂は覚えている。反省し二度と繰り返さないための努力をしない限り、何度でも同じ経験をすることになるだろう」と語る。

また、当初は「DAU」プロジェクトのメイクスタッフとして参加し、後に編集も担当することになる共同監督のエカテリーナ・エルテリは、撮影現場から作品に関わっていたことについて「大きなアドバンテージがあったと思う。私は少なくとも500時間の映像を乗り越えて、ナターシャについての伝えたいストーリーを見つけた。彼女は困難な生活を送ってきた。彼女が発する言葉の全てにそれを感じることができる。とても孤独で傷つきやすいように見えるにも関わらず、とてもタフな行動をした彼女にとても感動した。その硬い殻の中に隠された憧れ、希望、絶望、そして強さの層を見て、これを共有したいと思った」と振り返っている。(リアルサウンド編集部)

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