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“中学受験恐怖症”になった娘……1月校含め“5連敗”、母が後悔する「言ってはいけなかった」一言

  • 2021.1.25
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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

中学受験恐怖症になった娘……1月校含め5連敗、母が後悔する「言ってはいけなかった」一言の画像1
写真ACより

各地で中学受験の本番を迎え、いよいよ来週は東京・神奈川決戦を迎える。今年はコロナ禍の影響により、親子の緊張と不安は、例年以上のものがあるだろう。

気がかりなことといえば、「体調万全で受験できるか」と「合格できるのか」に尽きるのだが、やはり、ここは親こそが“大人としての余裕”を見せたいところである。

最近、敦子さん(仮名)という女性から「我が家の経験を、受験生親子の方に役立ててほしい」という連絡が入り、話を聞いた。

それは数年前のこと。受験本番中に、敦子さんの娘・菜々美ちゃん(仮名・当時小学6年生)が、「もう受験したくない」と言って、部屋に閉じこもってしまったのだそうだ。

菜々美ちゃんは、お試しとして1月受験をしたものの、まさかの不合格。そのショックから立ち直れずに、2月1日を迎え、当日発表の同日午前校Aに不合格。押さえとしていた午後校Bにも不合格。スタート日に、早くも3連敗となってしまったそうだ。

焦った敦子さんは、2日の第1志望校Cを断念し、ダブル出願しておいたという合格が望める他校Dへの受験に切り替えようと、菜々美ちゃんを説得したという。

菜々美ちゃんも、これ以上の連敗は止めたいということで、2日はDを受験。しかし、当日発表でDも不合格だったことが判明した。

敦子さんは、なんとか菜々美ちゃんをなだめ、3日に、今度はDより合格できる確率が高いと踏んだEを受験するように話をして、挑戦。しかし、ここもまたあり得ないことに、不合格になってしまったという。

3日の夜、菜々美ちゃんは号泣しながら、叫んだという。

「もう受かり方がわからない!」

そして、菜々美ちゃんは「もう受験はしない」と自室のドアにバリケードを築き、閉じこもってしまったそうだ。

筆者が「C以外は、入学してもいいと思える“志望校”だったのか?」と質問すると、敦子さんはこう答えた。

「1日に受けたAとBは偏差値的にも適正校ではあり、一応、志望校といえる学校でした。でも、AもBも落としてしまった以上、チャレンジともいえるCを選択する余裕はなく、Dにしたんです。DもEも、正直偏差値で選んだので、過去問対策もしていませんでした」

受験は恐ろしいことに、気流というものがあって、ちょうど上昇気流に乗れると、ミラクル合格をしてしまうほどの大番狂わせが発生するものなのだが、逆も真なりで、「落ち癖」がついてしまう場合もある。

「連敗は私のせい」「私がうろたえて」母の後悔

菜々美ちゃんは1月受験の不合格から立ち直れないまま、2月受験に突入して連敗、そして「受験恐怖症」に陥ってしまった例だと思われる。

「私がいけなかったんです……。合格が当然だとされた1月校に不合格になってしまい、私がパニックになってしまって。それで、菜々美に『大丈夫なの?』って何回も確認しちゃったんです……」と敦子さん。

「大丈夫なの?」という言葉の中には、「安全圏と思われた1月校を落としているのに、本番は大丈夫なの?」という意味だけではなく、「過去問の合格最低点を越えてないけど大丈夫なの?」、さらには「風邪を引いてない? 大丈夫?」というようないろいろな意味が含まれていたそうだ。

「菜々美はしっかり者で、私はいつも頼ってしまうところがありました。でも、あの子はいつも笑って『大丈夫だよ』って答えてくれていたんですが、考えてみれば、菜々美のほうが不安ですよね……。それなのに、母である私がうろたえて、あの子にストレートに自分の不安をぶつけていたんです。あの連敗は私のせいです……」

結局、菜々美ちゃんの受験は3日で終了し、1月校も合わせると5連敗という結果で終了した。

ところが、ほどなくして1日午前校のAから、繰り上げ合格の知らせが届いたそうだ。

「もう本当に、これで救われましたね。もし全て不合格だったら、菜々美はもちろん、私も立ち直れなかったと思います。私が現役のお母様たちに申し上げたいのは、併願校対策は『まさかのまさか』までを考慮しながら、組み立てておき、慌てて動いてはいけないということ。そして、どの口が言うのかといわれそうですが、お子さんにお母さんの不安をぶつけないってことです」

中学受験は親子の受験なので、「まさか」が起こると親のほうがパニックになり、戦略を見失いがちだ。

状況が厳しければ厳しいほど、親には冷静さが求められるのだが、言うは易しで、これもシミュレーションを繰り返しておかないと、「イザ」という時に泥沼にはまりかねないのである。

しかし、一番大切なことは、敦子さんがアドバイスするように「親の不安」を子どもには極力見せないことであろう。

子どもに、気分よく受験してもらい、上昇気流に乗せる。そのために、子どもの身になって、「自分が受験生だったら、どうしてほしいか?」ということを常に意識しながら、これからの本番に臨んでいただきたい。中学受験親子が、笑顔の春を迎えることを祈っている。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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