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『麒麟がくる』変わり果てた織田信長の心 明智光秀に残された唯一の道しるべ

  • 2021.1.18
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『麒麟がくる』(写真提供=NHK)

光秀(長谷川博己)が平蜘蛛と供に託した願いは、信長(染谷将太)に伝わることはなかった。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』第41回「月にのぼる者」では、光秀が帝(坂東玉三郎)と対面し「桂男」にまつわる、とある思いを聞かされる。

丹波の国衆たちとの戦いで光秀は苦戦を強いられていた。戦に勝った際には、敗軍の将に丹波をより良い国にするために力を貸してくれと説いて回るも、いっこうに耳を傾けてもらえなかったのだ。足利将軍家から領地を授かり密接な関係にある丹波の国衆は、その恩に報いるために信長と戦っていた。光秀は、自分が今、戦っている相手は足利将軍その人だと思い知らされることとなる。

光秀は平蜘蛛を持参し信長の元へ向かう。自分は常に正直でありたいとの思いを伝え、松永(吉田鋼太郎)を討った勝ち祝いの品として献上した。「平蜘蛛を持つ者には、志高き、心美しき者であるべき覚悟がいる。殿にもそういった覚悟を、お持ちいただきたい。そうすれば天下は穏やかにまとまり、大きな国となるでしょう。城を美しく飾るだけでは人はついて参りません」と祈るような思いを託すのだが、信長は大名物の茶器をぞんざいに扱い「なんとも厄介な平蜘蛛じゃな。いずれ今井宗久(陣内孝則)にでも申し付け、金に変えさせる」と言い出す始末。金に換算することで価値を図ろうとする信長の不遜さには、光秀も絶句するばかりであった。顔を歪めながら金の話をする信長にはもはや、以前の純粋さは欠片も残っていない。恐れる者もなく大切にする人もいなくなってしまった信長は、只々高みを目指すばかり。そのような様子ゆえに、光秀との歯車も合わず彼の声も届くことはなくなってしまった。

内裏の庭先で光秀は帝と対面し、中国の神話に出てくる「桂男」の話をすることになる。桂男は月に咲く不老不死の力を持つ花を独り占めしようとしたため、神の怒りにふれ月に閉じ込められたのだ。この話を教訓に、帝は「月はこうして遠くから眺めるのが良く、美しいものに近づきそこから何かを得ようとしてはならぬとの教えを先帝から受けた。なれど、力ある者は皆、あの月へ駆け上がろうとするのじゃ」と寂しそうに話す。そして光秀に「信長はどうか。この後、信長が道を間違えぬよう、しかと見届けよ」と仰せつけた。水を張った器の水面に反射する月と白椿は、あまりに美しく、まるで帝と光秀のようだ。帝の神々しく、知性と品格を感じさせる様は、正に坂東玉三郎だからこそなせるわざであろう。幻想的な世界のなかで光秀を導くその存在感は、この世のものとは思えないほどの美を孕む。

信長との亀裂が深まりつつある今、光秀に残された唯一の道しるべとなるのは正親町天皇その人だろう。

(Nana Numoto)

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