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国内外の多彩なキーパーソン70人が登壇!「MASHING UP カンファレンス」で心に残った言葉をレポート。

  • 2021.1.14
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コロナ禍でリモートワークに切り替わり、「自分にとって心地よい環境や働き方って何だろう?」と考える人も多かったのでは? 多様な視点で社会課題を捉え未来を考えるイベント『MASHING UP カンファレンスvol.4』では、異なる業種、性別、国籍、コミュニティに属する多彩なゲストスピーカー計70名が、オンラインで登壇。働き方やサステナビリティなどの観点から、さまざまなテーマで語り合いました。今回は、筆者が特に心に残ったカンファレンスをご紹介します。

人生100年時代のWell-beingと、これからの学び。

写真左から立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんと、エール株式会社の篠田真貴子さん。©MASHING UP

「Well-being(ウェルビーイング)」とは、肉体的にも精神的にも社会的にも健康で満たされており、ストレスをうまくマネージメントできている状態のこと。

還暦でライフネット生命を立ち上げ、現在、立命館アジア太平洋大学(APU)で人材育成に尽力している出口治明さんが、人生100年時代におけるWell-beingと学びの必要性をテーマに語りました。

司会を務めたのは、銀行や外資系コンサルティング企業などでキャリアを積み、現在はエール株式会社の取締役という異色のライフシフトを何度も経験した篠田真貴子さん。

「Well-beingの中核をなすのがダイバーシティ(多様性)とインクルージョン。インクルージョンとは、お互いを理解しながらその良さを活かし合える状態を言います」(篠田さん)

出口さんは、1972年に新卒として企業に就職した際、性差別・学歴差別に気付いたエピソードをシェアしてくれました。

「新人の僕よりも先輩の女性社員の方が仕事が数倍できるのに、男性で大卒である僕の方が給料が高いことに違和感がありました。なぜ女性社員は男性社員と比べて実力で引けをとらないのにアシスタント業務が中心なのか、プロジェクトの発表者は男性社員ばかりなのかと疑問に思ったのです」

今より更に男性中心だった当時の日本企業の職場で、この違和感に気づけた理由を、出口さんは大好きな「読書」だと語ります。

「読書と同じように現実でも腹落ちしないと、前に進めない性格。本をずっと読んできたことで、目の前の現実が世界のすべてではなく、別の価値観があると理解できたのだと思います。

インクルージョンの基本は、世界がどういう風にできているかを理解すること。人間の世界はいろんな能力を持つ個性のグラデーション。地球の人口は78億人。個人差は、性差や年齢差を楽々と超えます。

女性らしさとか、アメリカ人なのにとか、そういう理由で評価をする上司は、私なら即刻クビにしたい。マネージメントの基本ができてないから。個人の適性を見て、どう組み合わせればいいチームができるのかを見極めるのがマネージャーの仕事です」(出口さん)

「女の子」にもSTEM教育を。貧困とギャップを超えるアクション。

iamtheCODE 創設者のマリエム・ジャムさん。2017年にはユニセフとビル&メリンダ・ゲイツ財団がSDGs達成に貢献した人物に贈るGlobal Goals Awardを受賞。©MASHING UP

世界から注目される社会活動家や起業家も今回のカンファレンスに参加。その一人、セネガル生まれの英国人起業家であるマリエム・ジャムさんは、幼少期に孤児となり教育を受けられず、16歳で保護施設に入ってから独学でプログラミングなどを学んできました。

「社会から疎外された地域の少女たちは、私と同じく学ぶ場所がありません。幼い頃教育を受けなかったことは、私の人生に大きな影響を与えました」と振り返ります。

そんなジャムさんは、女子のデジタル教育を推進するiamtheCODEを設立し、現在2万5000人以上の少女たちを支援。68カ国を訪れボランティアや数々のイベントを行ってきた経験をもとに、科学・技術・工学・数学などを総合的に学ぶSTEM教育(Science, Technology, Engineering and Mathematics)の重要性を語りました。

「社会から疎外された地域の少女たちへの教育は発展途上国で可能な最もハイリターンな投資です。少女はやがて大人になり、リーダーになる。その時、彼女たちに収入があれば社会を変えることができます」(ジャムさん)

言論空間としてのインターネット。

右上から時計回りに『Business Insider Japan』統括編集長の浜田敬子さん、『文藝春秋digital』プロジェクトマネージャー村井弦さん、HANASHI Films ディレクター/ジャーナリストの伊藤詩織さん。 ©MASHING UP

昨年はネットでの誹謗中傷による著名人の自殺が話題にのぼり、オンライン上のプライバシーや名誉毀損の問題が注目を集めました。

HANASHI Films ディレクター/ジャーナリストの伊藤詩織さん、『Business Insider Japan』統括編集長の浜田敬子さん、『文藝春秋digital』プロジェクトマネージャー村井弦さんによるカンファレンスでは、個人がネット上で自分自身を守る術、そして、個人とメディアはどのようにメッセージを伝えればよいのか、率直な意見が飛び交いました。

朝日新聞や雑誌『AERA』編集部を経て、現在インターネットメディアの編集にたずさわる浜田さんは「大手メディアでは女性や生活に関する問題は片隅に追いやられがちでしたが、ネットで個別記事を出すことにより、PVとしてそのニーズが可視化されるように。編集部の決めつけではなく、何が読者に求められているコンテンツなのか、分かりやすくなりました」と話します。

「ネットは声を集める力も圧倒的。以前、財務省の事務次官による記者へのセクハラ問題について、メディアで働く女性に意見を求めたところ、あっという間に500人近くから意見が集まった。最も反響が大きかったのは、職場にある理不尽な服装の規定についてのアンケートに対して。メガネ禁止とかいろんな非合理な事例など、3000件ほどの声が寄せられました。さらには記事に共感する人がTwitterで拡散してくれたおかげでテレビの取材がきて、海外メディアも発信してくれた。この広がりは紙メディアではありえなかったことです。

一方で、記事を気に入らない人は、たいして記事を読まずに記事の中の人たちをSNSで誹謗中傷する、しようと思えばいくらでもできでしまう側面があります」(浜田さん)

伊藤さんは自身の経験を踏まえ、「ネットでの誹謗中傷は蓄積され拡大されていってしまう。私個人に向けられた言葉であったとしても、私と似たような経験をした人がその言葉を見ることによってダメージを受ける。その言葉を見てしまったがために、助けを求める言葉を上げられなくなってしまいます」と語りました。

批判と誹謗中傷の違いとは? もトークテーマに。

「メディアは政治家や時の権力者に取材をし、ときに批判することもある。誹謗中傷との違いはエビデンスがあるかどうか。発言する方は必ずその根拠を示さなくてはなりません。“文春砲”とも言われる『週刊文春』の記事にも、当然ながら発信する以上、ちゃんとした根拠がある。批判には裏取りや調査など金銭的なコストもかかります。根拠に自信がないものは批判とは呼べない。そこは明確に区別すべきです。個人がSNSで発信する場合には、書くことが本当に合っているのか、ネットで調べることはできると思います」(村井さん)

「批判は必要なものだと思います。批判は改善の起点になるからです。それに対し、誹謗中傷は個人の尊厳を傷つけるのが目的で、そこには会話や議論が生まれません。私自身も発信者として、言葉の持つパワーについて日々真摯に向き合っていかなければならないと考えています」(伊藤さん)

SNSのプラットフォーマーの責任については、日本でもようやく議題に上がり始めたところ。これについても意見が挙がりました。

「ドイツでは、SNSで誹謗中傷的な発言があると24時間以内に投稿を削除しなくちゃいけないという法律があり、それを破るとプラットフォームとして大きな罰金を払わなくていけない。プラットフォーマーからアクションを起こすことも大切でしょう」(伊藤さん)

「プラットフォーム側は、これまで何か問題が起きたら都度対処しますという姿勢でしたが、それでは間に合わないほどの誹謗中傷の数になってしまっている。プラットフォームの構造自体が、暴力性が入り込む余地があるという前提でUI/UXを設定しようと、プラットフォーム側の意識が変わってきていると感じます」(村井さん)

ダイバーシティとビジネス、人を生かし成長させる事業。

写真左から『Glossy Japan』編集長/『MASHING UP』編集長代理の山岸祐加子さん、DIALOG IN THE DARK JAPAN ダイアログミュージアム「対話の森」代表の志村真介さん、セガサミーホールディングス株式会社CSR・SDGs推進室 副室長/セガサミービジネスサポート株式会社 代表取締役社長一木裕佳さん、ダイアログミュージアム「対話の森」のダイアログ・イン・サイレンス アテンドの松森果林さん。©MASHING UP

「ひとりひとりの人間の違い、個性を、ビジネスに生かし成長に繋げるにはどのようなアイディアが必要?」をテーマにした4人によるカンファレンス。

視覚障害者が健常者を漆黒の暗闇の中を案内し対話するダイアログミュージアム「対話の森」の志村真介さんは、「なぜ障害者雇用が進まないのか?」との問いに、「ちゃんと、障害者と出会ったことはないからでは?」と語ります。

「ダイアログ・ミュージアム『対話の森』では、お互いに協力しないと何もできない環境を強制的に作ることでチームプレイが実現します。ここでの体験を通じ、人は信じられるということ、そして組織が多様性を受け入れる大切さを実感できるのです」(志村さん)

ダイアログ・イン・サイレンス アテンドの松森さんは、聞こえる世界、聞こえにくい世界、聞こえない世界のすべてを知っている立場から社会の課題解決へのアドバイスをしています。©MASHING UP

「うちの施設で企業研修していると、将来的に伸びる会社とそうでない会社が分かります。まず、伸びる会社はコミュニケーションの方法が違う。課題が変わるとリーダーとフォロワーのメンバーが臨機応変に変化していくんです。世界を見る視点を変えたい人は、機会があれば是非『対話の森』を体験してみてください」(志村さん)

Well-being を加速させるテクノロジーとビジネスの今。

写真右がウィローグループCEO兼創業者/トランスフォーメーション・テクノロジー・ラボ エグゼクティブ・ディレクター兼共同創業者のニコール・ブラッドフォードさん。左は司会を務めるアンバー・ブリッジ・パートナーズ CEO &; マネージング・パートナーの奥本直子さん。©MASHING UP

コロナ禍の影響により、世界的にストレス不安を感じる人が増えた現在。Well-beingテクノロジーを実用的に発展させるべく活動しているニコール・ブラッドフォードさんは、米国大手企業が社員の福利厚生とパフォーマンスの向上のために「Well-beingテクノロジー」を採用し始めた例をシェアしてくれました。

「Well-beingテクノロジー」の目的は、AI、ロボット、生物学などの最先端技術を駆使し、職場・学校・社会における人と人とのイントラクションを助けることで、人の幸せ、心のつながり、自己実現等をサポートすることです。

「次世代の若者にとっての人生のプライオリティーは幸せであること。そうアンケートから分かっています。そして、仕事で成功するためにはコミュニケーション能力、想像力、問題解決能力などのソーシャルエモーショナルスキルがますます重要になるでしょう」(ブラッドフォードさん)

強く、美しく、人生と闘う。アスリートという生き方。

総合格闘家の山本美憂さん。ミュンヘンオリンピックレスリング代表だった父・山本郁榮さんにより小学生のころから弟の徳郁(山本KID徳郁)さん、妹の聖子さんとともに、レスリングの英才教育を施されてきました。©MASHING UP

総合格闘家の山本美憂さんも、家族と暮らすグアムから登壇!

女子レスリングのパイオニアであり、42歳にして格闘技へ新たな挑戦をする山本さんは、3人の子どもを持つ“最強のシングルマザー”でもあります。山本さん流の、“自分に後悔しない”、強くて美しい生き方について話しました。

写真左は司会を務めたタレント・俳優の副島淳さん。©MASHING UP

「いくつもの試練があったかと思いますが、失敗した時に立ち上がる方法はある?」との質問を受け、「落ち込むことに飽きるんです。失敗でヘコんでしまうと経験にならないのでもったいない。負けた試合こそ勉強することがたくさんあると考えるようにしています」と語りかけました。

・取材を終えて
『MASHING UP カンファレンスvol.4』で行われたさまざまなトークセッションは、お互いを理解し活かし合える 「Well-being」な社会について考える、大きなきっかけとなりました。この機会を入り口として今後も考えを深め、少しずつでも実践していけたらと思います。

『MASHING UP』
公式サイト

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