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ニューヨーク、お祝いのご馳走は豪華なステーキハウスで。

  • 2021.1.11
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文・写真/長谷川安曇(在ニューヨークライター)ニューヨークでは特別な機会に、お祝い事で行くところといえば、ステーキハウスだ。市内に気軽に行ける店があまりないので、豪華で贅沢な雰囲気のステーキ店はスペシャルな時に訪れるものとして存在してきた。牛の背中側あばら骨後ろの柔らかくてジューシーな部位は「ニューヨーク・ストリップ」と呼ばれるくらい。ニューヨーカーが、いかにステーキ好きかわかる。

市内最古のステーキハウスと言われているのは創業1868年の老舗、ジ・オールド・ホームステッド・ステーキハウス。ここは市内の人気店ピーター・ルーガー(1887年創業)やキーンズ(1885年創業)よりも古い。キーンズは、幾多のパイプが天井に飾ってあることで有名だが、これは昔の客が、自分のパイプをお店に置いていたため。当時は食後の一服が消化に良いとされ、みんなステーキを食べた後はここで一服していたそう。ルーズベルト大統領やアインシュタインもパイプを同店に置いていた。その名残で、個人のパイプがずらりと並んだ天井は圧巻、映画やテレビ番組から撮影場所として頻繁にオファーがあるものの、ロケーションとしては滅多に貸し出ししない。例外的に認めたのは、ショータイム局のテレビドラマ「ビリオンズ」で、これは制作者にキーンズの大ファンがいて、どうしてもと粘られたからだとか。

ニューヨークのステーキ店は、政治家に好まれていたことからいまでも紳士のための会員制クラブのような雰囲気があり、値段はもちろん、他州に比べてラグジュアリーな雰囲気が漂う。またマフィアもステーキが大好きだったようで、さまざまな逸話がある。なかでも有名なのは、1985年当時のガンビーノファミリーのボス、ポール・カステラーノが贔屓にしていたスパークス・ステーキハウス。店に入る直前に、部下のトミー・ビロッティとともに暗殺された事件だ。このことで皮肉にも「死ぬほど食べたかったステーキ」と称され、いまでもお店の前の事件現場を訪れる観光客が後を絶たない。

依然として、テーブルクロスがかけられた高級感漂うステーキハウスが主流だが、ここ数年はカジュアルなタイプのレストランや、トルコやギリシャ系などのステーキハウスも増えている。2017年にオープンした、アップスケールな韓国のステーキハウス、コテはガスグリルが各テーブルに設置されたレストラン。オーナーは、映画『パラサイト 半地下の家族』の監督ポン・ジュノと親しく、ニューヨークプレミア時にはアフターパーティを同店で開催し、昨年のアカデミー賞で作品賞を受賞した時には映画の中に出てくるフード「ラムドン」を期間限定でサーブした。

最近では気候変動問題への対策として牛肉の消費を問題視する声も上がり、またベジタリアンフードの台頭に伴い、アメリカ人の赤身肉の消費は減ってきていると言われている。いくつもの歴史的ストーリーとカルチャーを生んできたニューヨークのステーキハウスにも、新しいトレンドが生まれるかもしれない。

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