1. トップ
  2. ドラマの本質は長さにあり!? 『きみセカ』『監察医 朝顔』など2クールドラマ増加の背景

ドラマの本質は長さにあり!? 『きみセカ』『監察医 朝顔』など2クールドラマ増加の背景

  • 2021.1.10
  • 625 views
『君と世界が終わる日に』(c)日本テレビ

最近のテレビドラマを観ていると、放送形態に対する意識が変わりつつあるように感じる。

基本的にテレビドラマの放送は、冬クール(1~3月)、春クール(4~6月)、夏クール(7~9月)、秋クール(10~12月)に分割されており、1週間に1話(約45分)×1クール(9~11話)放送というのが基本的なフォーマットだ。

一部例外として、2クール(半年)に渡って放送されている『相棒』(テレビ朝日系)シリーズ、1日15分×6日(2020年の『エール』以降は5日)を半年にわたって放送するNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)や1年間に渡って放送する大河ドラマ、テレビ朝日の『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊』シリーズのような30分1話を1年にわたって放送するドラマ枠もあるが、基本的に連続ドラマは1クールで毎週1話の放送だ。しかし、近年は1話30分のドラマも増えており、話数のバリエーションも多様化している。

たとえば現在、月9(フジテレビ系月曜夜9時)で放送されている『監察医 朝顔』は、月9では異例の2クールとなっている。

本作は法医学者の万木朝顔(上野樹里)が主人公のドラマで、2019年に放送されて好調だった作品の続編だ。近年の月9は医者や刑事を主人公にした1話完結の事件モノが続いている。印象としては『相棒』や『科捜研の女』といったテレビ朝日のドラマに近く、シリーズ化を前提に作られている。その中で、もっともうまくいっているのが、監察医が遺体の謎に挑む『監察医 朝顔』だ。

主人公の過去や人間関係といった物語がほとんど描かないテレ朝の刑事ドラマに対し、『監察医 朝顔』は事件ものとしての側面と朝顔を中心としたホームドラマとしての側面の両方が丁寧に描かれている。

劇中で朝顔は、刑事の桑原真也(風間俊介)と結婚し、途中で娘も生まれる。一方、東日本大震災で亡くした母・里子の遺骨を探す父の平(時任三郎)と朝顔の関係も重要な要素となっている。つまり、半分職業ドラマ、半分ホームドラマとでも言うような絶妙な塩梅となっており、1話完結の事件モノとして初見でも楽しめる一方で、連続ドラマならではの人間模様も楽しめる。

テレ朝の刑事ドラマのテイストを取り入れつつも、フジテレビのドラマが培ってきた日常生活をみせる面白さがうまく融合しており、その意味でも現在の月9にふさわしい作品だと言えよう。

だからこそ、話数の多さがプラスに働いており、『北の国から』(フジテレビ系)や『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)のような壮大なホームドラマに成り得る可能性も秘めている。

一方、冬クールにはじまる2クールドラマとして、今後の試金石となりそうなのが、日本テレビの「日曜ドラマ」(日曜夜10時30分放送)枠で放送される『君と世界が終わる日に』だ。

本作は竹内涼真が主演を務めるゾンビを題材にしたサバイバルアクションドラマ。はじめに地上波でSeason1となる全10話が放送された後、Season2となる全6話がHuluで配信される。つまり全体としては16話という構成なのだが、テレビと配信で発表媒体が別れているのだ。

これまでにも、日本テレビのドラマはスピンオフ作品などをHuluで積極的に配信していた。中には本編で謎だった部分をHuluで配信することもあり、その際には批判的な意見も多かった。

連続ドラマの完結編を劇場映画で見せるという展開は、テレビドラマでは定番化しており、珍しいものではない。それが配信に移ったということだと思うのだが、初めから完結編をHuluで配信すると謳って、地上波でまず放送するという展開は、むしろ潔いと感じる。それでもある程度の批判は免れられないだろうが、テレビの尺に収めることで作り手の表現が制限されるのであれば、舞台を配信に移して作り手のやりたいことを貫徹してほしいというのが、正直な気持ちである。

Netflixなどでストリーミング配信されている海外のドラマを観ていると、話数も放送時間も多めにとられており、ストーリー展開やキャラクターの描写がゆったりとしていて、丁寧だなぁと感じる。

対して国内ドラマは『監察医朝顔』のような2クールドラマは例外で、多くのドラマは話数も放送時間も減少傾向にあり、1クールのドラマも全10話と縮小傾向にあり、1話の放送時間も30分の作品が増えている。そのため物語も、複雑な展開は敬遠され、できるだけわかりやすくストレスのないものが好まれるようになっている。

これには一長一短があり、気軽に楽しむ分には最適な形態だが「本当にこれでいいのだろうか?」と、最近は感じる。

長尺で濃厚な海外ドラマを観終えた後で、日本のドラマを観ると、その“見やすさ”に感心する。しかしこの見やすさは、ノイズとなる複雑な要素を削ぎ落とした結果であり、ドラマファンとしては物足りなく感じていた。

ドラマの本質は長さにあり、長ければ長いほど劇中で描けることが広がっていく。だから、2クールのドラマが増えつつある最近の流れは良い傾向だと思う。

(成馬零一)

元記事で読む