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【インタビュー】「香水はひとつの芸術」監督、俳優との共通点を語る『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

  • 2021.1.8
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シャネル、ディオール、エルメス、ゲラン、イヴ・サンローラン、フラゴナール。フランスでは、これまでいくつものメゾンが伝説的な香りを生み出してきた。

その立役者ともいえる調香師の日常を描いた映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』が、フランスの人々を勇気づけている。いくつもの選択肢の中からよりすぐられたエレメントが作用し合い、ひとつの香りとして花開くパルファン。全く違う人生を歩んでいた者同士が出会い補い合うことで、豊かに色づいていく人生。

香水も人生も、「調和」によって完成していくことを、情感たっぷりに映し出したのが監督のグレゴリー・マーニュと主演のエマニュエル・ドゥヴォスだ。2人のいるパリと東京を繋ぎ、映画について、香りについて話を聞いた。

香水と映画の共通点「根本にあるのは作りたいという欲求」

――コロナ禍の大変な中、インタビューにお答えいただきありがとうございます。お二人は行動制限が多い生活の中で、創作意欲新たにしたのでしょうか?

エマニュエル:もちろんそうです。こういうときだからこそ、映画を作りたいという気持ちがますます強くなりました。今は撮影も再開しています。(2020年12月2日時点)。ただ、制作しても映画館が閉まっていて、映画産業は休止状態。だからグレゴリーも私も、スタート地点でスタンバイしている状態。やりたいという気持ちが深まっている気がします。

グレゴリー:この作品は、最初のロックダウンが解除された直後に公開することにあえて決めていました。映画館を訪れる人たちが観たいのは、こういう作品だろうと考えたからです。実際に映画館に駆けつけてくれた観客が喜んでくれたことは、僕らにとって大きな励みとなりました。

――映画を見る前は、映画で香りどのように表現するのだろうと思っていました。ところが拝見していくうちに、香水が持つ「様々な要素が混ざり合って調和する」ということの美しさを、人間ドラマにおけるテーマとして強く感じ取ることができました。

グレゴリー:今回一番描きたかったのは、調香師と周りにいる人々の人間関係でした。どのようにすれば、まるで香りが漂っているかのように観客に感じてもらえるかということにも、とても興味がありました。香水と映画にも、似たところあるでしょうね。どちらも行ったり来たりしながら多くの要素を調和させて作るクリエイション。どちらも、根本にあるのは作りたいという欲求です。そして、作ったものがどのように受け取られるかという楽しみがあるところにも共通点がありますね」

――ドゥヴォスさんは、今回、本作のどんなところに惹かれたのでしょう。

エマニュエル:まずは脚本が決め手になりました。すぐに、この物語がとても気に入ったんです。フランス映画ではあまり描かれないタイプの人間関係もオリジナリティに溢れていると思いました。2番目に、調香師という役を演じられることにとても惹かれました。私自身、18歳の頃に調香師という仕事に興味を持ち、学校を調べてみたことがあったんです。今回はすべてのことが気に入り、グレグリーと会ってすぐに意気投合しました。シンプルにとても気持ちよく、わくわくしながらできた仕事でした。

演技者、フィルムメーカーとしての苦悩

――視覚的な効果が最も高い映画という媒体で、香りを観客に想像させるために、お二人はどのように工夫されたのでしょうか?

エマニュエル:話が決まり、私たち二人はすぐにエルメスの専属調香師であるクリスティーヌ・ナジェルに会いに行きました。業界では天才として知られる人物です。その後も、私は彼女と共に過ごす時間を持ちました。私自身、2つフレグランスを作ったんですよ。商業化するためのものではなく、パーソナルな使用のためのものですが。調香師を演じるに当たり大切にしたのは、所作などはもちろん、アーティスティックな仕事をしている人たちが、それに専念するとどういう生活を送らなければならないのかということ。香水はひとつの芸術です。それは画家やミュージシャン、監督、女優の仕事と同じ。どちらかというと、インスピレーションをどう得るかという視点を彼女の仕事ぶりから学びました。実は、最初についていたタイトルは、「Inspiratrice(インスピレーションをもたらす人、ミューズの意)」だったんですよ」

――アンヌは、素晴らしい才能の持ち主ですが、才能があるゆえの恐怖、苦悩、孤独を抱え、ストイックに生きています。お二人は演技者、フィルムメーカーとして、アンヌのような生きにくさを感じることがあるのでしょうか。

グレゴリー:確かに監督として脚本家として孤独は抱えていますね。制作の準備の段階で誰かとアイディアをシェアすることは難しい。しかも撮影後、編集の際に共同作業をするのもかなりやっかいです。つまるところ、自分の中にある疑念とか迷いといったものは自分の中にとどめ、内なる闘いをせざるを得ない。クリエイションとはそういうことだと思うんです。大事なのはできあがった作品だと思っています。

エマニュエル:実は、脚本を読んだときに驚き、興味を引かれたのは、このアンヌという人物が凄く私に似ているということだったんです。彼女と同じように感じていることが多かった。単に表現の仕方が違うんだという気がしています。彼女ほど人見知りではないし、歯に衣着せずものを言ったり、感情を顔に出したりはしない。もう少し社交性はあると思います。今の社会って、私のことを見て見てと自分をさらけ出す人が多い。私はそうではなくて、すべてを人にさらけ出す必要はないし、自分の内に秘めおく必要のあることも多いと思っています。そういう意味では、アンヌと似ていると思います。

「幸せにしてくれる香り」は?

――日々、様々な香りに接しているアンヌが、コプラ油の石鹸の香りを嗅ぎ、子ども時代を懐かしむシーンが美しくて大好きでした。お二人にとって、「幸せにしてくれる香り」はありますか?

エマニュエル:もちろん沢山ありますよ。古い、昔ながらの家の冷たいタイルの香り、丁寧にワックスが塗られた木の床の香り。そういう香りが私を幸せにしてくれます。まさに、祖父母の家の香りなんです。

グレゴリー:僕は、ブーランジェリーの香りですね。母方の実家がパン屋で、祖父の頃から代々継いでいるんです。店の中に入らずとも、裏口から漂うパンをこねている香り、パン作りの香りに幸せを感じますね。

限られた時間の中でも、作品への思いを、絶妙なコンビネーションで語ってくれた二人。「ありがとう、また日本に行きますよ!」と笑顔で手を振ってくれた。パリと東京と、距離離れていても確かに感じられた温かな人柄と、クリエイションへの真摯な姿勢は、この映画にしっかりと投影されている。最後に監督からはこんなメッセージも。

「この作品が日本で公開されるということに、とても感動しているんです。世界各国で公開されることに感激していますが、とりわけ日本はフランス人にとって、アートの国。見事な職人の技、几帳面で丁寧な仕事、細かいところまで行き届いた配慮でも知られています。感受性豊かでデリケートなという二つの形容詞がぴったりな国と思っています。だから、日本で観ていただけることに感動しています。ぜひ楽しんでください」

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