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1年前に焼いたり1年後に食べたり?英国の祝福ケーキ。

  • 2021.1.8
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文・写真/坂本みゆき(在イギリスライター)イギリス人は年齢、性別を問わず甘いものが大好き。スーツを着たビジネスマンが、地下鉄の構内でチョコレートバーをむしゃむしゃ食べている姿を見かけることだってパンデミック前は稀ではなかった。

だからお祝いの場にたくさんのお菓子が並ぶのは当たり前。ケーキはもちろん欠かせない。

ベーカリー(イギリスではケーキ屋さんはこう呼ばれていることが多い)のカタログを見てみれば、バースデーケーキやウェディングケーキはもちろん、クリスマスケーキ(クリスマスのディナーの後に食べるクリスマスプディングとは別にケーキもある)、イースターのシムネルケーキ、さらには職場を去る同僚の前途をたたえるグッドラックと書かれたケーキなんてものも並んでいる。

イギリスのケーキは日本のものとは大きく違う。まずはそのスポンジ。

小麦粉とバター、砂糖、卵はそれぞれほぼ同量で焼いたものが一般的。たとえば私の持っているお菓子のレシピ本を見てみると、直径20㎝のケーキに使う材料は「小麦粉225g、バター225g、砂糖225g、卵5個」とある。

お誕生日パーティなどでケーキを紙ナプキンに取り分けると、スポンジを置いた形そのままにしっとりと脂のシミができる。日本でスポンジのキーワードとなる「ふわふわ」「なめらかな口どけ」とはまったく無縁の代物だ。

デコレーションも独特。ホールケーキで生クリームを使ったものにお目にかかることはまずない。伝統的なクリスマスケーキやウェディングケーキは、どっしりとしたフルーツケーキにアプリコットジャムを塗り、マジパンで包み、さらには粉糖と卵白で作ったロイヤルアイシングで覆う。純白で美しいけれどもそれだけで厚みが1㎝近くあることもあり、とにかく果てしなく甘い。

これらのケーキは日持ちもするので食べ方も独特だ。クリスマスケーキは数カ月前に焼いて(1年前という人もたまに聞く)クリスマスまでに何度もブランデーを染み込ませる。ウェディングケーキにいたっては、三段重ねのいちばん上は冷凍保存しておいて、デコレーションだけ新しくして最初の子どもの初めての誕生日や、結婚一周年のお祝いのケーキとして再活用する習慣すらある。

バタークリームで飾られたものも多い。カラフルに着色されたクリームが惜しみなく乗せられたケーキは見た目は可愛いけれども、空気を含ませて泡立てた生クリームと違い、室温に戻したバターに砂糖を混ぜて練り上げたものなのでそのボリュームはハンパない。

ケーキをはじめイギリスのお菓子は確かにおいしい。でもそれはお祝いの席でごくごくたまに食べるからだと私は思っている。

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