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時代を映した力作が勢ぞろい!2020年のNetflixオリジナル・ドキュメンタリー“フレッシュ”10選

  • 2021.1.5
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あらゆる差別に切り込んだり、歴史上のある事件を紐解いたり、はたまた1人の人物の生き様に迫ったり。映画の最もファンダメンタルなかたちとも言えるドキュメンタリー映画というジャンルは、劇映画と比較すると日本で劇場公開される作品は決して多くないが、その時代を反映した秀作が数多く作られている。

【写真を見る】100%フレッシュ作品が多数!ミシェル・オバマやテイラー・スウィフトに密着したドキュメンタリーも上位にランクイン

そうしたなか近年では、動画配信サービスで世界の様々な国々で製作されたドキュメンタリー作品を容易に観ることができるようになった。特にNetflixのオリジナル・ドキュメンタリー作品は『イカロス』(17)や『アメリカン・ファクトリー』(19)がアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したり、『13th 憲法修正第13条』(16)が社会の動きに合わせて再注目を浴びるなど良質な作品が目立っている。

そこで本稿では、2020年にNetflixで配信されたオリジナル・ドキュメンタリー作品のなかから映画批評を集積・集計するサイト「ロッテン・トマト」で批評家の評価が特に高い10作品を紹介していきたい。

80代の女性カップルを映した『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』は感涙必至 Courtesy of Netflix『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』はNetflixにて独占配信中
80代の女性カップルを映した『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』は感涙必至 Courtesy of Netflix『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』はNetflixにて独占配信中

「ロッテン・トマト」とは、全米をはじめとした批評家のレビューをもとに、映画や海外ドラマ、テレビ番組などの評価を集積したサイト。批評家の作品レビューに込められた賛否を独自の方法で集計し、それを数値化(%)したスコアは、サイト名にもなっている“トマト”で表される。

好意的な批評が多い作品は「フレッシュ(新鮮)」なトマトに、逆に否定的な批評が多い作品は「ロッテン(腐った)」トマトとなり、ひと目で作品の評価を確認することができる。中立的な立場で運営されていることから、一般の映画ファンはもちろん業界関係者からも支持を集めており、近年では日本でも多くの映画宣伝に利用されている。

【写真を見る】100%フレッシュ作品が多数!ミシェル・オバマやテイラー・スウィフトに密着したドキュメンタリーも上位にランクイン Courtesy of Netflix『ミス・アメリカーナ』はNetflixにて独占配信中
【写真を見る】100%フレッシュ作品が多数!ミシェル・オバマやテイラー・スウィフトに密着したドキュメンタリーも上位にランクイン Courtesy of Netflix『ミス・アメリカーナ』はNetflixにて独占配信中

それでは、2020年のNetflixドキュメンタリーのフレッシュ作品10傑を挙げてみよう。

100%フレッシュ『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』

100%フレッシュ『ディック・ジョンソンの死』

100%フレッシュ『あるアスリートの告発』

100%フレッシュ『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』

98%フレッシュ『サーカス・オブ・ブックス』

98%フレッシュ『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』

93%フレッシュ『マイ・ストーリー』

92%フレッシュ『スペリング・ビーへの挑戦』

91%フレッシュ『ミス・アメリカーナ』

91%フレッシュ『父、兵士、その息子』

評者の全員が高い評価を付けた100%フレッシュの作品が4作品で、上位10作品はどれも90%以上の高評価を獲得。ドキュメンタリーにおいては、作品として優れたものであっても描かれる題材に興味を持たれなければそもそも観てもらえないという側面があるだけに、こうして並んだ作品(20人以上の批評家から評価を得ている作品のみを集計)は、どれもいまの時代の潮流に合致したテーマが描かれていると断言できよう。

障がい者運動の歴史を追った『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』 Steve Honigsbaum 『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』はNetflixにて独占配信中
障がい者運動の歴史を追った『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』 Steve Honigsbaum 『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』はNetflixにて独占配信中

100%フレッシュを獲得した4作品は、それぞれ異なるテーマを有している。オバマ元大統領夫妻が設立した製作会社「ハイヤー・グラウンド・プロダクション」が手掛け、サンダンス映画祭でドキュメンタリー部門の観客賞を受賞した『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』は、50年代から70年代にかけて行われていた障がいを持つ若者向けのキャンプの記録映像を通して、障がい者の権利を求める運動の歴史がたどられていく。

また同じく100%フレッシュを獲得した『シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト』は、長年連れ添い晩年になってようやく周囲に同性愛者であることをカミングアウトした2人の女性の数年間に密着しながら、2人が向けられてきた偏見と差別の歴史が描かれる。多様性の時代といわれて久しい昨今ではあるが、いまなお根強く残る偏見や差別。『ハンディキャップ・キャンプ』で描かれる障がい者の権利も、『シークレット・ラブ』で描かれるLGBTQも、長年にわたってドキュメンタリーの題材として幾度も問題提起されてきたテーマである。近い将来には、これまでよりも一歩二歩進んだ視点で描かれてほしいと願わずにはいられない。

ドキュメンタリー映画の力を感じる『あるアスリートの告発』 Melissa J. Perenson for AP / Netflix 『あるアスリートの告発』はNetflixにて独占配信中
ドキュメンタリー映画の力を感じる『あるアスリートの告発』 Melissa J. Perenson for AP / Netflix 『あるアスリートの告発』はNetflixにて独占配信中

一方で『あるアスリートの告発』もまた、近年大きく取り沙汰されるようになった性暴力被害をテーマにした作品ではあるが、その鋭利で揺るぎのない切り口にはこの上ない勇気を感じる力作だ。アメリカの体操連盟のチームドクターの男が20年以上にわたって繰り返してきた、150人以上の女性選手に対する性的暴行事件に端を発し、女性アスリートによる告発を黙殺し五輪代表メンバーから外した連盟への批判と、悪意ある人々からのいわれのない誹謗中傷の数々。現代社会に蔓延る悪を真正面から描き、世界に向けて告発することができるのは、ドキュメンタリー映画ならではの強みだ。

アカデミー賞の有力候補との呼び声も高い『ディック・ジョンソンの死』 『ディック・ジョンソンの死』はNetflixにて独占配信中
アカデミー賞の有力候補との呼び声も高い『ディック・ジョンソンの死』 『ディック・ジョンソンの死』はNetflixにて独占配信中

そして『ディック・ジョンソンの死』は、人類普遍のテーマでもある“死”を非常にユニークなかたちで描いた作品だ。前述の通り、近年のアカデミー賞で存在感を示しているNetflix作品。この高評価10作品のなかで第93回アカデミー賞に最も近いのは本作ではないだろうか。100%フレッシュを獲得した4作品を観るだけでも、2020年の世界がどのような状況にあるのかがわかり、視野が大きく広がることは間違いない。

ミシェル・オバマ元大統領夫人のブックツアーに密着した『マイ・ストーリー』 Courtesy of Netflix『マイ・ストーリー』はNetflixにて独占配信中
ミシェル・オバマ元大統領夫人のブックツアーに密着した『マイ・ストーリー』 Courtesy of Netflix『マイ・ストーリー』はNetflixにて独占配信中

他にもミシェル・オバマのブックツアーに密着した『マイ・ストーリー』や、世界的歌姫テイラー・スウィフトを描いた『ミス・アメリカーナ』のように、著名人の知られざる一面に迫った作品はドキュメンタリー映画を観慣れていない人でも観やすいことだろう。またトランスジェンダーがハリウッドでどのように描かれてきたかを辿る『トランスジェンダーとハリウッド:過去、未来、そして』や、スペリング競技会の頂点を目指すインド移民の少年をドラマティックに追った『スペリング・ビーへの挑戦』も新たな興味を開いてくれる題材だ。

文/久保田 和馬

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