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初夏のガーデンを楽しむようなテーブルアレンジ~花の女王・バラとシャクヤクの美しいあしらい 後編~

  • 2015.6.2
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早いものでもう5月も最後のウィークエンド。夏のような暑さが続いていますが、空気は次第に湿気を帯び、これから私たちを楽しませてくれる紫陽花が色づきはじめ、夜の帳に甘い香りを放つクチナシ(ガーデニア)の白い花が浮かび、季節はまもなく梅雨へと移ろっていきます。今回のアレンジは、ガーデンに咲き誇るシャクヤクやバラ、バラに絡み咲く可憐なクレマチスや、花実をつける樹木などをあわせて、初夏の庭の花々を摘んでテーブルで楽しむかのようなアレンジをご紹介したいと思います。

まず、シャクヤクのお話を少し。
瀟洒な花姿と香りで圧倒的な気品が宿るシャクヤクは、「立てば芍薬、座れば牡丹......」と昔から美しい女性になぞられる花。透明感のある薄絹のような幾重の花弁が、優しくたおやかに咲く姿は女性から見ても憧れですね。欧米では「ピオニー」と呼ばれ熱狂的に愛されている花、フレグランス類もとても人気があります。

シャクヤクは漢名を「癪薬」と書き、根が咳止めの生薬とされ、古くから原産国の中国では漢方薬として栽培され、薬草として日本にもたらされました。平安時代に中国から渡来したシャクヤクは一重咲きの「和シャクヤク」といい、ヨーロッパを経て明治時代に渡来した八重咲きの豪奢なシャクヤクは「洋シャクヤク」とされ、同じシャクヤクでも何となく趣が異なります。現在はそれぞれの良いところを掛け合わせたハイブリッド系の品種もたくさんあり、ピンクの濃淡、白、赤、コーラルなど色や咲き方も様々。和洋が交差するオリエンタルな雰囲気こそ、シャクヤクの大きな魅力だと思います。

質・量ともにシャクヤク日本一の産地は長野県中野市。シャクヤクは畑に植えられてから、切花として出荷されるまでに、なんと4~5年もの栽培期間が必要だそう......! そんな背景を知るとますます大輪の花一輪への愛を感じますね。シャクヤクは固い坊主頭のようなつぼみがほどけ、花が咲き始めると一気に花が咲いていき、満開に咲いてからの鑑賞期間は決して長くありません。シャクヤクの美しい咲かせ方のコツについては前号で触れていますので、ぜひご参照いただいて、今この季節だけのスペシャルな美しさを楽しんでくださいね♪

◆シャクヤクを美しく咲かせるポイント
http://column.madamefigaro.jp/decor/weekend-flower/post-1563.html
(コラムの一番下をご参照ください)


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【シャクヤクと初夏の花々のアレンジメント】

<材料>
シャクヤク 3本(白1本 濃いピンク2本)
クレマチス 3本(写真のブルーの花)
ナナカマド(枝モノ) 1本

花器(写真の器は陶器の花鉢で、高さ23cm、直径16cm)
切花鮮度保持剤(最近は小袋をつけてくれる花屋さんが増えています)

<作り方>
1.花器に水をたっぷり入れ(8分目ぐらい)、分量通りに切花鮮度保持剤を入れます。

2.ナナカマドの枝を2~3本の小枝に切り分け、左右に広がるように花器にいけます。花器の大きさが花材量に比べて大きいので、小枝もできるだけ前側に向くようにいけます。白い穂のようなナナカマドの花やつぼみも一緒にいけます。

3.シャクヤクを3本いけます。下葉は取り除き、茎はできるだけ斜めにカットし、水をよく吸うようにします。
シャクヤク3本は同じ長さで並べるようにいけてしまうと平坦なアレンジになってしまうので、少し長さを変えて、高さに凹凸ができるようにします。シャクヤクもナナカマドの枝同様、なるべく前に向かっていけると花が生き生きと見えます。

4.クレマチスの茎は切り口を何か固いものでたたいてつぶし、すぐにいけます(水に浸けます)。上記のアレンジの中から花を飛ばすように、蝶が舞うように軽やかにいけましょう。

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初夏の花で人気のある花のひとつ「クレマチス」についてお話しましょう。愛好家も多く、バラの季節に欠かせない花としてたくさんの種類の鉢物が出回ります。ここ数年で切花として出荷されるクレマチスも増えてきました。ベルのように咲く可憐な花姿も愛らしいですが、くるりんとした蔓性の茎や葉の動きも本当に表情豊かで、クレマチスだけを1~2輪飾るだけでも十分に楽しめますよ♪

上の画像の涼しげなブルーのクレマチスは、日本でも浴衣の柄などで古来から愛される藍色の花「テッセン(鉄線)」を彷彿させますが、そのテッセン=英名・クレマチスになります。中国原産のテッセンの名は漢名の「鉄線蓮」に由来し、極細の華奢な見た目を裏切るほど固い針金のような茎を表しています。クレマチスの名はギリシャ語で蔓を意味する「クレマ」から名付けられたそうで、自在にくるくると伸ばす蔓や葉の姿を表しています。花言葉は「精神的な強さ」「美しい心」「高潔」といった、内面の美しさを映す凛とした和美人のイメージ......! 見た目の愛らしさと内面の強さ......シャクヤクしかり、クレマチスしかり、理想の女性の姿ですねー、憧れます(笑)。

2つ目は、アフタヌーンティーを楽しむバラのテーブルアレンジをご紹介しましょう。
バラの花、花屋さんで買ってきてすぐは長い茎のまま楽しんで! と思いますが、咲き進んでいく過程では、茎はどんどん短く切り戻していってあげたほうが、花そのものを長く楽しむことができます。(切花延命剤も活用してください!)

今日のアレンジは、その短くしたバラを使ったパターンになります。短くしていき、さらに葉が水に浸からないよう取り除いてしまうと、茎に葉がついていない花だけの状態になります。その場合は、茎から切り離さない「茎付きのバラの葉」をバラだけの茎に添えて使うとよいでしょう。バラの葉は、茎から離してしまうとすぐに萎れてしまいますので、茎を付けた状態で、というのがポイントになります。

バラと相性がよいクレマチス(この花形のタイプはベルテッセンとも呼びます)、シルバーの紅茶缶にあわせて英国ガーデンっぽいシルバーの花・エリンジューム(画像下左)、これから旬を迎えるブルーベリーのまだ若い実(画像下右)をエッセンスにしました。実ものやちょっと異国ムードの花材が加わるとアレンジが垢抜けます。器はグラスやカップなどでも良いでしょう。

黄金に輝く花芯が見えるほどに美しく咲ききったバラは、最後は花首でカットして水に浮かべて愛でましょう。冒頭の画像のように、小さなガラスのカップに浮かべたバラをティーフーズのお皿に一緒に並べても素敵ですね。初夏のバラやシャクヤクとともに、ウィークエンドは優雅なティータイムをお楽しみくださいね♪

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