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12月21日発表 東京都「教育大綱案」から見える未来像、混乱の2020年を活かすために

  • 2021.1.4
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12月21日に発表された「東京都教育施策大綱(案)」。これまでといったい何が変わったのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

コロナ禍で教育のあり方も転換期を迎えた

激動の2020年――。新型コロナウイルスによって、教育現場は翻弄(ほんろう)されました。全国的に3月から5月末まで休校措置が取られるなど、子どもたちを取り巻く環境が一変。未知のウイルスにより、これまで「普通」と考えられていた日常が根底から覆され、学校で授業を受けることすらかなわなくなりました。

しかし、小中高校の多くで学校再開になるとともにオンライン授業に関する議論や要望は少しずつ落ち着きをみせたのもまた事実です。その一方、大学ではいまだにオンライン授業主体という学校も多く、1年を通して「教育のICT化」「公教育での遠隔授業」がこれほど取り沙汰された年はありませんでした。

このように教育の現場が大きく揺れ動くなかで、12月21日(月)に新たに発表された東京都の教育の方向性を示す「東京都教育施策大綱(案)」は、これまでの傾向と異なっています。

東京都庁(画像:写真AC)

世界的な国際都市でもある東京がアフターコロナを見据えて打ち出す教育施政方針は、困難な状況下でも自分の力で未来を切り開くことができる、たくましさを兼ね備えた人間への成長を促すものとなっています。

グローバル化を意識していた近年の教育大綱

この5年間で策定されたふたつの東京都教育大綱の特徴は、オリンピックとパラリンピック開催を控えていた時期ということもあり、「国際人を育てる」ことに重きをおいていました。

舛添要一都知事時代の2015年11月に策定された教育大綱、そして小池百合子都知事就任後の2017年1月に策定された教育大綱の第1章で触れられている「目指す将来の子どもたちの姿」には、当たり前のように「グローバル化」の文言が含まれています。

国際都市という自負と世界的大イベント開催に向けて子どもたちがグローバル化社会に適応することを理想として掲げていました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により今までと全く同じ形でグローバル化を語ることは難しくなったのです。

この時代の転換期に、東京都は新たな教育大綱を策定することになったわけですが、公表された骨子案をのぞくと、前回のふたつの大綱と毛色が変わったものとなっています。

必要なのは「たくましさ」

発表された「東京都教育大綱(案)」をみると、「未来の東京に生きる子供たちの姿」として「自らの個性や能力を伸ばし、さまざまな困難を乗り越え、人生を切り開いていくことができる」ことを明文化しています。「グローバル」の言葉は残っていますが、全体として以前より控えめなものとなっています。

多くの人が戸惑った先行き不透明な時代を生き抜くには、少々古めかしいとも捉えがちな「たくましさ」が必要となってきます。

困難を乗り越えて自分らしく人生を進むことのできる教育が、東京都の教育施策の方針に加えられ、東京都が今回のコロナ禍の経験を生かそうとしている姿勢がみえてきます。

すべての子どもが希望を持てるように

また、ニーズが急速に高まったのが公教育でのICTの本格的な活用です。

3月から臨時休校措置が取られ長期間学校に通わないという緊急事態になりました。こうした状況が今後起きないと断言できないため、緊急下でも子どもたちが学習機会を奪われない取り組みを整備してくことは必須となるでしょう。

オンライン授業のイメージ(画像:写真AC)

ICT導入は単なる緊急時のみに使用されるのではなく、児童生徒ひとりひとりの学習理解に沿った学習内容を提案することが可能となります。

こうした取り組みも含めて、骨子案では「誰一人取り残さず、すべての子どもが将来への希望を持って、自ら伸び、育つ教育」を掲げています。

もちろん、改善策がすぐに実行するのは簡単なことではありません。しかし、公教育の現場に2020年の経験を生かした新たなシステムを導入し、活用することが未来の子どもたちが描く将来が明るいものになる手助けとなります。

中山まち子(教育ジャーナリスト)

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