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金太郎と"きんぴら"の話|カルパッチョの真実㉑

  • 2020.12.28
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今回のお題“きんぴら”には、一体どんな真実が隠されているのでしょうか?私達が一度は食べたことのある、あんな料理やこんな料理には、隠された物語があることをご存知でしょうか?“知る”ことで、同じ料理が明日からちょっと美味しくなる連載をお届けします。

金太郎と"きんぴら"の話|カルパッチョの真実㉑

■強い=金平だった頃

おかっぱ頭の金太郎は力自慢の男の子だ。平成生まれは携帯電話のCMやゲームでその名を知っているだろう。昭和生まれはそれを昔話の絵本で知った。マル金マークがまぶしい赤い腹掛けでまさかり担いで熊にまたがっている。その熊には相撲で勝った。強い。かなり強い。

あまりに強いものだから、その名が強そうな料理につけられたという説がある。それが「きんぴらごぼう」だ。漢字で書くと「金平牛蒡」。話の流れからいくと「金太郎牛蒡」としたいところだが、そうはならなかった。種明かしをすると「きんぴらごぼう」の金平とは先の金太郎の息子の名前である。それも架空の。実在の息子ではない。

神奈川県南西部にある足柄山で生まれた金太郎は平安時代後期の実在の人物の幼名で、後に坂田金時と名乗った。坂田金時は源頼光という武将に仕えて頼光の家臣の四天王の一人とされた。その強さは伝説となり、それから約600年後の江戸時代、「金平(きんぴら)浄瑠璃」という名で人形浄瑠璃の武勇談満載の演目にも盛り込まれて上演され、大ブームとなった。金平とは人形浄瑠璃の主人公の名だが、その人が先の金太郎つまり坂田金時ではなく、その息子の「金平」という設定であった。

強い父親のDNAを受け継いだことになっている金平もめっぽう強く、超人的な力で悪いヤツをばっさばっさとやっつけるというストーリーが江戸の庶民にウケにウケた。スーパーヒーローものはいつの時代もハズレなしのコンテンツなのだ。

だからこの時代、丈夫であり、強いものの代名詞としてあちこちで「きんぴら」が使われた。丈夫で長持ちする足袋を「きんぴら足袋」、粘り気の強い糊を「きんぴら糊」と呼び、気が強い女性までも「きんぴら娘」と呼んだ。そしてごぼうも選ばれた。

ごぼうは硬くて丈夫である上に、強壮作用もあるといわれている。そんなごぼうを細く切り、油で炒めて、醤油、みりんなどを加えて煎りつけ、唐辛子で辛味をつけた料理を「きんぴらごぼう」と呼びたくなるのはごく自然なことだったのだろう。

時代が経つにつれ、ごぼうほど硬くなくても、甘辛く炒め煮にした野菜料理を「きんぴら」と呼ぶようになり、人参やれんこん、こんにゃくなども「きんぴら何々」と呼ばれている。
ふと思った。今の時代の金平は誰だろう?舞台はテレビやゲームに移っていて、地球が破壊されるくらいのすさまじいパワーを持つヒーローばかり。力ありすぎ。熊と相撲をとって勝つなんてかわいいものだ。その名をつけるにふさわしい料理も、「ごぼう」なんて言っている場合ではないほどのパワーフードでないと釣り合わないだろう。マカ、スッポン、黒にんにく?こうなると話が変わってくる?

きんぴらごぼう
きんぴらごぼう

ちなみに
坂田金時の名がついた食材もいろいろある。金時豆、金時芋、金時人参……。赤いものを金時にたとえてそう呼ぶ。これは金太郎と呼ばれていた幼少時代、いつも赤い顔をしていたと伝えられていたからという。


――著者

「土田 美登世 編集者・ライター」

つまりマイ金平は、ジャッキー・チェンだった。そういえば渋谷に「ジャッキーズキッチン」という気軽に行ける中国料理の店があったなーと思い出す。


文:土田美登世 写真:加藤新作 料理:田中優子

※この記事はdancyu2018年8月号に掲載したものです。

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