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『ワンダーウーマン 1984』初登場6位 危惧されるハリウッド映画興行の悪循環

  • 2020.12.25
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『ワンダーウーマン 1984』(c)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

先週末の動員ランキングは、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が土日2日間で動員28万2000人、興収3億9000万円をあげて10週連続で1位に。相変わらずのぶっちぎりかと思いきや、実は公開2週目の『新解釈・三國志』の土日2日間の動員は27万4000人、興収は3億7800万円とかなりの僅差。逆に、不甲斐ないスタートと言えるのは初登場3位の『約束のネバーランド』の土日2日間で動員21万9000人、興収2億8800万円という成績だろう。アニメと実写の違いはあれど、『約束のネバーランド』は『鬼滅の刃』同様に今年まで『週刊少年ジャンプ』で連載されていた人気コミックの映画化作品。実写化が発表された際にはソーシャルメディア上でも大きな期待が寄せられていたと記憶しているが、公開後は出演者のファンダムの外からはほとんど感想らしき声が聞こえてこない。

あまり盛り上がっていないという点では、6位に初登場した『ワンダーウーマン 1984』も同様だ。9月に公開された『TENET テネット』以来、久々のハリウッド大作の新作ということでヒットが期待されていた同作だが、土日2日間の動員は7万5677人、興収は1億1432万8360円とかなり厳しい結果に。大ヒットを記録した2017年8月公開の前作『ワンダーウーマン』は、世界中でほとんど日本だけで成績が伸び悩んだが、それでも公開初週の土日2日間は動員18万2092人、興収2億6651万2000円を記録していた。そんな不振が目立った前作と比べても、興収比で半減以上の43%という成績。北米では劇場で公開される同じ日にHBO Maxで配信されることが決定した同作だが、思わず「もう日本でも配信されてるの?」と言いたくなるような数字だ。

『ワンダーウーマン 1984』に同情すべき点はいくつかある。もともとコロナのパンデミックの前から北米では公開日が2回変更されていて、コロナに入ってからも3回の変更と、実に5回も公開日が変更された後に配信との同時公開になってしまうという悲運に見舞われた本作。マーケティングだけでなく制作上の都合もあったのかもしれないが、当初の全米公開予定日であった2019年12月13日、あるいはその次にアナウンスされた2019年11月1日に公開されていれば、パンデミックの影響を受けることはまったくなかったわけで、そういう意味でも「ついてない」作品なのだ。

ワーナー本社の不安定な方針は、日本での作品プロモーションにも少なからず影響が出ていたはずだ。ワーナー傘下のHBO Max(もはやどっちが親会社かわからないというか、事実上の親会社は通信会社のAT&Tで、今回の決定もすべてAT&Tが株主の顔色をうかがったものなのだが)で配信されるという発表を受けて、最終的に日本では北米の12月25日よりも1週早い12月18日公開となったが、その発表があった12月3日まで、本当に予定通り劇場で公開できるのかどうか日本のワーナーもわからなかったと見受けられる(自分もプロモーションに協力していたが、そのやりとり上でも混乱が生じた)。同じワーナーでも、監督のクリストファー・ノーランの劇場公開への断固たる意思が完遂された『TENET テネット』とは違って、作品の規模に見合う計画的なプロモーションをおこなう上でスケジュール的な支障は少なくなかったはずだ。

また、そもそも初夏に緊急事態宣言が明けてからは、劇場でかかっているハリウッド映画が極端に少ないため、習慣的に映画館で映画を観賞する一般層への予告編などでのプロモーションがほとんど機能していないという事実もある。『鬼滅の刃』や『新解釈・三國志』の観客は、あくまでも『鬼滅の刃』や『新解釈・三國志』の観客だ。もちろんその層によって現在の興行は支えられているわけで、映画関係者は感謝しなくてはいけないのだが、2020年3月まで映画館に足繁く通っていた観客は「本当はまだ戻っていない」、あるいは昨今の感染再拡大を受けて「再び離れた」という現状認識が必要だろう。

日本よりもさらに深刻な状況にある北米に拠点を置くハリウッド・メジャーの、映画館を切り捨てて、クリエイターを蔑ろにして、自社の業績と株主の利益ばかりを優先した業態移行にともなう混乱による影響と、それによって日本映画に頼らざるを得ない興行。そして、「本当はまだ戻ってない」観客。それらの問題はまだ当分は解決しそうにないし、もしかしたら解決する日がやってくることはなく、2020年を境に日本の映画興行はこれまでとはまったく別のフェーズに入っているのかもしれない(自分はそれを最も危惧している)。ハリウッド映画の悪循環は続く。(宇野維正)

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