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【10000字インタビュー】【話題のジェンダーレスモデル井手上漠】VOCE初登場!常識に縛られず、自分らしく生きる方法とは?

  • 2020.12.25
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井手上 漠(いでがみ ばく)

2003年生まれ。第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにて DD セルフプロデュース賞を受賞。

2019年1月に放送された「行列のできる法律相談所」への出演以降、サカナクションのミュージックビデオ「モス」、「KANEBO」はじめ、「デジタルハリウッド大学」CM等、数多くのメディアに出演。

同年10月第36回ベストジーニスト2019「次世代部門」受賞。2017年中学3年生の時に島根県代表として出場した「第39回少年の主張全国大会~わたしの主張2017~」では、最優秀賞に次ぐ第2位である文部科学大臣賞を受賞。

常に自然体で自分らしくを標榜し、容姿のみならずそのアイデンティティにも多くの支持を集めている。Instagram(@baaaakuuuu)、Twitter(@i_baku2020)。

第1回

「嫌われながら生きよう」そう決めたときから私の人生は心地よく、カラフルなものになりました。

「いでがみばくです、性別ないです」ツイッターのプロフィールには、そんなふうに書いてある。それを書いたのは、井手上漠さん、17歳。戸籍上の性別は、男性。だけど、心は男性でも女性でもない、“中性”をしなやかに生きる人。

「物心ついたときから、外でサッカーするより、お人形で遊ぶ方が何倍も楽しかったし、髪も長い方が自分らしいと感じる自分がいました。自分はどうやらまわりの友達とは違うらしいと気づいたのは、小学校高学年の頃。成長するに従って、男子は男らしく、女子は女らしくあるべき。そういった雰囲気が育ちつつある中で、男性でも女性でもない私のことを、“気持ち悪い”と言う人が出てきたんです。女の子の友達は割と優しかったけど、男子からはけっこうひどいことを言われました」中学生の頃、まわりに合わせるために肩まで伸ばしていた髪を切った。面白くないのに、男子たちと話を合わせた。自分を偽りながら生きる日々は、色彩のない“白黒の毎日”だったという。「無理をしていることが苦しくなり、悩んでいる私に、母が言ってくれたんです。“ありのままでいい、漠は漠のまんまで生きればいいじゃん”って。その言葉に背中を押されて、自分が中性であるということをカミングアウトして、自分らしく生きる決意をしたんです。それが中学3年生のときでした」

そこで、井手上さんは、自分がジェンダーレスであること、そして一人一人が自由に、自分らしく生きられる世界への願いを「第39回少年の主張全国大会」で島根県代表として発表し、文部科学大臣賞を受賞した。

「怖いという気持ちは、もちろんありました。私がもしジェンダーレスであることを公表したら、まわりの人に距離を置かれちゃうんじゃないかとか、嫌われるんじゃないかとか。だけど、母が私の気持ちをわかってくれて、そのままの私を受け入れて育ててくれたから、勇気を出すことができました。その後、高校2年生のときにジュノン・スーパーボーイ・コンテストに出場したことをきっかけに、日本テレビ系列の「行列のできる法律相談所」に出演させていただいて、さらにモデルのお仕事を始めることに。あのとき勇気を出したことで、世界は信じられないくらい広がったんです」

“ジェンダーレス”という言葉は、以前に比べればだいぶ身近になってきた。だけど、それでも世の中にはまだまだ偏見を持つ人はたくさんいる。ましてや、インスタグラムのフォロワーが約40万人、ツイッターは約37万人という有名人となった今、そのことで辛い思いをすることもあるのでは?

「表に出ることで批判されるのは覚悟のうえ。なので、気にはしていません。こうやって、インタビューでいろいろお話しさせていただくことも嫌じゃないし、楽しいです。人間って、生きてるだけでクレームがつくんですよね。中性であることを公表しても、たとえ隠し続けたとしても、文句を言ってくる人は必ずいる。だったら好きなように生きて中傷される方がいい、嫌われても自分らしく生きようって、決めたんです。もちろん、だからといって傷つかないわけではないですよ。ブサイクとか、外見のことを言われるのは別にどうでもいいんですけど、気持ち悪いとか、私のジェンダーについて人種差別のように批判する言葉にはやっぱり傷ついてしまいます。だけど、それ以上に嬉しいことがたくさんあるから今は平気! 私と同じ悩みを抱えて生きてきたツイッターやインスタのフォロワーさんから、『漠ちゃんのおかげで強く生きられるようになりました』とか、『自分次第で人生が変わるってことが分かりました』と言ってもらえるのが何より嬉しい。最近は、悩み相談を受けることもけっこうあるんです」

井手上 漠さん

トップス/スタイリスト私物

「今思うと、カミングアウトする前の私は、すごくすごく狭い世界しか見てなかったんですよね。島根県の隠岐島というところで育って、通っていた中学校も全校生徒が100人もいないくらいの小さな世界。そこが私の世界のすべてだったから、自分のような人は他にはあまりいないのかと思っていたし、世の中なんて多数派が優先されて、正しい・正しくないにかかわらずその人たちの意見が常識になっていくものだと思ってた。いつだって孤独でした。だけど今は、全然孤独ではありません。家族も友達もファンのひとたちも、みんなが応援してくれることを知っているから。昔は生きていることを窮屈に感じることもあったけど、今はものすごく心地がいいんです。いつしか、私のことを疎んじていた子たちも応援してくれるようになった。それって、きっと私がイキイキしてるからだと思うんです。自分のやりたいことをやれてるし、自信も持てるようになってきたし、臆病にもならない。人って、そういう堂々としている人のことを見ると応援したくなるものなんだなと。やっぱり人生って、気持ちの持ちようでガラリと変わっていくんですね」

今、井手上さんが願うこと。それは、“人と違うこと”が批判されない世界。そして、どんなジェンダーも当たり前のように受け入れられる世界になること。

「どんな性であっても、お互いが認め合って “普通”になるといいなと思うんです。でもそれって今のままでは難しい。だから、誰かが動かなきゃいけないんですよね。私がこれからも自分の性を隠さず活躍することができ、知名度が上がっていったとしたら、悩んでいる誰かの救いになっていくことができるのではと思っています。そして昔の私のように悩む人がいなくなればいい。

ただ、だからといって、私みたいな人がすべて、カミングアウトすべきだ! とは思いません。確かに私は今すっごく楽しいし、カミングアウトしてよかったと心から思っています。だけど、そうじゃない生き方だってアリだと思うんです。今って時代の流れ的に、“公表することが良い”とされがちな空気もあるけれど、だからってカミングアウトを強制するのは違うと思う。周囲にナイショにして、穏やかにうまくやっていくことが心地よいのならば、それだって正解。“素”をさらけ出すことだけが正解じゃない。誰もがありたい姿で生きられる、そんな優しい世界がいつか実現するといいなって思っているんです」

第2回は、井手上さんの家族、友達について、そしてちょっぴり恋のお話をお届けします!

撮影/中村和孝(人物/まきうらオフィス) ヘアメイク/河北裕介 スタイリング/杉本学子(WHITNEY) モデル/井手上漠 取材・文/中川知春 構成/河津美咲

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