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息子を『愛の不時着』リ・ジョンヒョク級「いい男」に育てる方法

  • 2020.12.23
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息子を、「母も惚れるいい男」に育てるにはどうしたらいいのか。脳科学・AI研究者の黒川伊保子さんは、息子を「エスコート上手な男」に育てるには、13歳までの母親との会話が重要と説く——。

※本稿は黒川伊保子『息子のトリセツ』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

パラグライダー事故で北朝鮮に不時着した財閥の娘ユンと彼女を匿い愛してしまう北朝鮮の将校リ・ジョンヒョク。禁断の設定が話題のラブストーリー。
韓国・ソウルに住む、ファッション界有数の実業家、ユン・セリ(ソン・イェジン)は、パラグライダー事故で北朝鮮領土に不時着し、北朝鮮軍の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に出会う。禁断の設定が話題のラブストーリー。Netflixで独占配信中。
息子の「エスコート力」は母が育てるべし

男と生まれたからには、エスコートができなくては。

見守り、抱き上げ、ごはんを作り、喜びそうなことをさまざまに考えついては実行し、優しいことばを与え、軍服がかっこよくて、颯爽とバイクに乗って現れて、銃弾の盾になって守ってくれる、『愛の不時着』のリ・ジョンヒョクのように。

2020年に一大ブームを巻き起こした、このドラマ。実は、主人公のリ・ジョンヒョクが「うちの息子にそっくり」なので、言わずにはいられないのだ。

顔じゃない。そのエスコート力が、である。

主演男優のヒョンビンの演技がまたうまくて、完璧なエスコートを1ミリもキザに感じさせず、純朴な風情でやってのける。

純朴にして、パーフェクトなエスコート。「母も惚れるいい男」は、こうじゃなくっちゃね。

世界では、エスコート術は、母親が仕込むことになっている。

日本では、あまり教えない。

というわけで、エスコート力の育て方である。

男性脳には難しい「ことばのエスコート」

エスコートの基本は、共感力である。

相手の思いを察して、優しいことばをかける。相手の所作を感知して、手を差し伸べる。

それだけ。

しかしながら、男性脳には、これが本当に難しいのだ。

男性は、とっさに「遠く」を見る、客観優先の脳で生まれてくる。

思考スタイルは、ゴール指向問題解決型。目標に照準を絞って、問題点を洗い出し、ゴールを急ぐ。このため、対話は「いきなり相手の弱点を突く」から始まることになる。

対する女性は、「近く」を満遍なく舐めるように見る、主観優先の脳で生まれてくる。

思考スタイルは、プロセス指向共感型。感情をきっかけに、過去の記憶を次々想起して、深い気づきを生み出す方式だ。このため、対話のはじまりは、一方が「感情」や「過去の出来事」を語り、もう一方が「共感」で受けるのがセオリーだ。

リビングで食事をする男女
※写真はイメージです
現実の会話、理想の会話の違い

「共感受け」が不文律の女性脳に、「いきなり弱点を突く」が定石の男性脳(!)

無頓着に会話していたら、満ち足りたコミュニケーションができるわけがない。だから、こんな会話になってしまうのである。

女性「今日、こんなつらいことがあって」
男性「あ~、きみも、詰めが甘いからな」《問題点の指摘》
女性「……」
男性「いやなら、やめればいいじゃないか」《問題解決》

もちろん、女性の理想は、次の通り。

女性「今日、こんなつらいことがあって」
男性「あー、それは、悲しいよね。きみは、優しすぎるんだよ。世の中には、ぴしっと言わなきゃ、わかんない鈍い奴もいるからね」《共感》
女性「私もタフにならなきゃね」
男性「いや。今のままでいいよ」《承認》
女性「♡」

前者は、たしかに問題解決の1案が提示されている。後者は、対話における明確なゴールは見えない。男性脳的には0点の対話なのだろう。

しかし、「心が通ったかどうか」では、前者はゼロどころかマイナス、後者は満点どころか120点である。

男女の会話は、心さえ通じれば、問題解決にもなる。

恋人の優しさで包まれた女性は、きっとタフになって、「詰めが甘い」から脱出する。結局のところ、本質的なゴールにたどり着くのである。

肩を抱いたり、腰を支えたわけじゃないが、ことばによる上質のエスコートだ。

こういう対話を交わせる男性はモテるし、一緒にいる女性は、ことばのエスコートを受けて、強くなれるし、美しくもなれる。

双方にとって利のある、とても喜ばしいことなのに、現実にはなかなかそういう男子にお目にかかれない。

というのも、思考や対話のスタイルは、本能の領域に属していて、とっさに出力してしまうものだからだ。気がついたときには、もう口に出してしまっている。無意識の信号を、意識的に軌道修正するのは、なかなかに困難なことなのだ。

息子が共感力を身につける「適齢期」

もちろん、不可能じゃない。私はあきらめていない。だから、オトナ男子たちの軌道修正のために、『妻のトリセツ』を書いた。

オトナ女子たちに、夫の軌道修正を促すコツを書いた本、『夫のトリセツ』も出版されているので、夫婦関係を何とかしたければ、ぜひ二冊併せて、ご一読ください。

黒川伊保子『息子のトリセツ』(扶桑社新書)
黒川伊保子『息子のトリセツ』(扶桑社新書)

さて、この本のテーマは、息子の脳である。

実は、息子の脳については朗報がある。

男性脳は、とっさに「遠く」を見る、客観優先で生まれてくるが、思考スタイルがゴール指向問題解決型に強くフィックスするのは、思春期のころなのである。

それまでは、母の誘導によって、いとも簡単に、共感型対話も交わせる。

要は、13歳までに、母親と共感型対話の訓練ができていれば、自然に、ことばのエスコートができるようになるってことだ。

「ことばのエスコート」は母親が教えるしかない

なのに、なぜ、日本の男子はこれができないのだろう。

答えは簡単だ。この国の母たちが、息子相手に共感型の対話をしていないからだ。

さっきの会話を思い出してほしい。母と息子の会話になぞらえてみよう。

息子「今日、こんなことがあって」
母「あ~、あんたも、ぐずぐずしてるからね」《問題点の指摘》
息子「……」
母「いやなら、やめちゃえば?」《問題解決》

息子「今日、こんなことがあって」
母「あー、それは、つらいよねぇ。そこは、はっきり言っていいのでは?」《共感》
息子「うん、次はそうする」
母「がんばってね。あなたなら大丈夫」《承認》

日頃、どちらをやってますか?

案外、前者を使っているのではないだろうか。同じことを夫にされたら、けっこうムカつく会話を、つい息子と。

そうすると、息子が、ことばのエスコートができない夫となって、その妻がまた……この輪廻は、どこかで断ち切らないと、永遠に続いてしまう。

というのも、男子は、基本的に、母親から「ことばのエスコート」を教わらないと、他にチャンスがないからだ。男同士は、ゴール指向問題解決型で話をするからね。

黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)
脳科学・AI研究者
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『共感障害』(新潮社)、『人間のトリセツ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)など多数。

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