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家族のケンカが裁判に発展! 法廷で「茶番」を主張した46歳の息子、「こうやって懲役に行かされる」実例

  • 2020.12.16
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家族のケンカが裁判に発展! 法廷で「茶番」を主張した46歳の息子、「こうやって懲役に行かされる」実例の画像1
(C)オカヂマカオリ

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#012号法廷】
罪状
:建造物侵入
被告人:N男(46歳)

<事件の概要>

今年5月29日午後2時、東京都A区A駅にあるテナントビルの3階に、非常階段から侵入した被告・N男。彼は2年前も同じく、不法侵入で逮捕されている。ほかに、覚醒剤取締法違反などで前科4犯。

傍聴する前の印象は、「罪状が『建造物侵入』だけ?」でした。「窃盗」や「暴行」、「誘拐」の手段として不法侵入することはあっても、「建造物侵入」が裁判のメインになることは少なく、いわば“おまけ”みたいな罪状なんです。罰金、もしくは示談で済みそうな軽い罪ですし、これだけが問われる裁判をあまり見たことがなく、引っかかりを覚えたので傍聴することに。侵入することだけが目的の犯罪って、一体なんなのでしょう?

背景には、家族の問題がありました。 

父親の持ちビル兼“元自宅”に不法侵入した被告

法廷に入って来たN男は、ず~っと裁判官や検察をガンつけたまま。一般人とは思えないその目力は、刑事ドラマの法廷シーンを見ているようでした。どこか韓国の映画俳優マ・ドンソクに似た風貌で、不謹慎ながら「キャラが立ってる!」とワクワクしてしまいます。

侵入したのはN男の父親の持ちビルで、しかもN男が以前住んでいた“元自宅”なのだそう。ざっくりまとめると、家から追い出された不良息子(N男)が、自宅に無理やり戻ったら父親に通報された、という事件。要するに、家族ゲンカですね。

ふてぶてしい態度を崩さない被告は、かなり裁判慣れしている感じ。覚醒剤などで前科4犯(罰金刑4回)だそうで、検察や裁判長からの質問にも堂々と答えていました。というか、「これ、茶番ですから。(自分は)無罪ですから」「法廷侮辱罪で(逮捕されても)かまわない」などと、1人でベラベラベラベラ……。

裁判長も思わず「ここでしゃべられても、記録に残らないから」とダメ出ししていましたが(記録に残らないんだ!?)、N男は「残らなくても結構ですよ。法廷侮辱罪でもかまわない」と、一歩も引きません。さらに、裁判長が「いつまでしゃべるの?」とあきれてもガン無視。果ては「再審請求します!」と最高裁まで争う姿勢を見せ、1人でヒートアップ。あの、まだ第一審が始まったばかりなんですけど!

父親への恨みがにじみ出る“問題児”の捨て台詞

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(C)オカヂマカオリ

ついに途中退廷を言い渡された被告は、警備員に押さえつけられながら、傍聴席に向けて「こうやって(はめられて?)懲役に行かされると、国民のみなさんわかってくださいね!」と、よくわからない捨て台詞を吐いて去っていきました。開廷10分ほどという短さでしたが、N男の話を聞いていると、不動産物件を多数所有する裕福な父親への恨みを感じます。いずれ相続問題が発生したら、もっとややこしい事態になるでしょうね。

実刑になったとしても微罪なので刑期は短く、この“問題児”は早々にシャバに戻ってくると思われます。こういうボーダーラインギリギリの犯罪に困っている人は案外多いと思うのですが、どうしたらいいんでしょう……? トラブルが起こると「警察を呼ぶ」ことがある種の切り札になっていますが、結局は一時的に隔離されるだけで、被害者側が策を講じなければ、全ては元の木阿弥なんですよね。茶番劇(被告談)を見せられながら、「自分が被告の親族だったらどう対処するか?」と真剣に考えてしまった一件でした。

オカヂマカオリ
絵も描くライター。傍聴デビューは結婚詐欺師のクヒオ大佐。興味を持った方は古書店で『裁判トリセツ』(インフォバーン刊)を探してみてください。

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