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忘年会シーズン…会社の「飲み会」自粛要請、守らなかったら処分される?

  • 2020.12.15
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私的な飲み会で処分の可能性は?
私的な飲み会で処分の可能性は?

コロナ禍で忘年会を見送る企業が多い中、社員に私的な飲み会も自粛するよう指示する企業があるようです。そうした会社で、自粛要請を破って新型コロナウイルスに感染した場合、何らかの処分を受ける可能性はあるのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

複数回参加や虚偽報告なら…

Q.そもそも、私的な飲み会について、会社が自粛を求めることはできるのでしょうか。また、それを就業規則に盛り込んだり、罰則を明示したりすることは可能なのでしょうか。

木村さん「労働契約法5条では、労働者の生命や身体などの安全が確保できるよう会社側が配慮する義務を定めており(使用者の『安全配慮義務』)、この中には、社内での新型コロナウイルス感染を拡大防止する対策を講ずることも含まれます。その対策の目的で、会社が従業員に飲み会自粛を求めることは可能です。

しかし、一方で、会社と労働者間で締結している労働契約においては、労働者が使用者の指揮命令に服するのは労務提供を行う義務がある勤務時間に限られることから、会社は従業員のプライベートな時間の使い方までは原則として制約することはできません。私的な飲み会はそのほとんどが就業時間外に行われるものであり、『私的な飲み会を禁止する』などの事項を会社の就業規則に盛り込んだり、また、違反に対して罰則を設けたりすることは難しいでしょう。

つまり、自粛要請は可能ですが、それを就業規則に盛り込んだり、違反者に対する罰則を設けたりするのは困難だということです」

Q.例えば、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために会社から、「4人以上の飲み会は自粛を」と指示が出ていたのに同僚5人で飲み会をした社員がいたことが発覚した場合、会社はどう対応することが多いのでしょうか。

木村さん「新型コロナ対策の飲み会の自粛要請で多いのが『社内メンバーでの忘年会や新年会の中止』で、現在、多くの会社が掲げています。また、他には『取引先や顧客への接待目的で行う飲み会の自粛』『従業員同士の飲み会自粛』などもありますが、この飲み会、会食等の参加人数については『2人以上は自粛対象(とにかく、飲み会や会食を認めない)』『4人までならOK』など会社の状況を踏まえた上で独自に判断して決められています。

従業員がこれらの飲み会自粛要請を守らなかった場合、その行動に対して注意をすることで対象者の反省を促し、以後は自粛要請に従うよう指導することになるかと思われます」

Q.「自粛破り」をしても処分を受けないということでしょうか。

木村さん「一般的な企業の場合、自粛要請を守らずに注意を受けたのが1回であれば、懲戒処分は行き過ぎだと思います。しかし、自粛要請を守らずに何度も注意を受けたり、『飲み会に参加していない』などと虚偽の申告をして会社の調査を妨害したりした場合や、管理職でありながら、自ら飲み会の企画をした場合などは懲戒処分になる可能性があります。これらは『会社の指導に従わない』、あるいは『職場環境を乱す』『職務を果たしていない』行為であり、就業規則違反と判断できるからです。

なお、病院や介護施設など、重症化リスクの高い人と多く、かつ密接に関わる業種では、従業員が新型コロナウイルスに感染することにより、周囲に多大な影響を及ぼすことにつながるため、『要請』ではなく『業務命令』として、飲み会の禁止を掲げることは妥当といえます。その場合、飲み会への参加が業務命令違反とみなされると厳重注意の他、病院・施設によっては訓告やけん責といった懲戒処分が行われる可能性があります」

Q.飲み会で感染者が出た場合や感染者の人数が多かった場合で、処分の程度は変わるのでしょうか。また、その後に社内クラスターが発生した場合はどうでしょうか。

木村さん「飲み会に参加した従業員がその後、新型コロナウイルスへの感染が判明した場合、感染経路の特定をする必要があります。飲み会の会場が感染原因とは限らず、別の場所であったり、調査しても感染経路が不明だったりすることもあります。従って、『飲み会の後、新型コロナウイルス感染が判明した』という事実だけで懲戒処分の対象にするのは難しいでしょう。その後に社内で起きた感染拡大までの責任を問うことはさらに難しいと思われます。

先ほど述べたことと重なりますが、自粛要請違反の飲み会で処分対象となるのは『飲み会で感染したこと』ではありません。懲戒処分の有無や軽重は飲み会を実施した者の役職や飲み会の頻度(初回なのか、複数回行われていたか)、内容(感染対策を行っていた会場だったか否かなど)、開催理由、会社からの聴取に対して誠実に対応したか、過去に同じ理由で注意を受けていたか否かといったことを総合的に判断して決めることになります」

Q.飲み会や会食に関して会社側が注意すべき点や、忘年会に代わる取り組みの事例があれば教えてください。

木村さん「会社側が飲み会に参加した従業員に注意や指導を行う際、飲み会に参加した事実を指摘するだけでなく、『こんな時期にバカじゃないの?』『無神経だ』など人格を否定するような言葉や無視といった行為をすると、パワハラとみなされる場合があります。また、自粛を守らなかったことに対して不当に重い懲戒処分(解雇など)をすると、無効となりますので対応には注意してください。

社内での飲み会参加を嫌がる従業員もいますが、多くの会社では、忘年会や新年会は社内でのコミュニケーションを円滑にするための行事と捉えています。新型コロナ対策で飲み会を中止する会社が多い中、例えば、オンラインでの飲み会にする、社内の会議室を使用し、かつ参加人数も所属部署の最小単位にとどめるといった工夫をして会食をしている会社もあります」

オトナンサー編集部

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