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京都の寺院一体型ホテルで、「朝のお勤め」と極上の朝食を。

  • 2020.12.10
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2020年9月28日、史跡や老舗の多く点在する寺町通り沿いに、寺院とホテルの一体型施設として「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」がオープンしました。先斗町や祇園も近いとなると、観光にも買い物にも、食事にも、便利な地域として、京都観光にはおおいに魅力的です。でも、このホテルの開業にはそれ以上に奥深い意味がありました。

神聖な空気が漂うホテルの前景。写真では隠れているが、右奥には玄関に向かって灯籠が立つ。

寺町というと、京都ならどこにでも点在する印象ですが、今回のホテル開業にあたっては、貴重な歴史的寺院や仏閣を未来へと継ぐための“寺院再生”の新しい提案であり、モデルケースとして日本でも珍しい計画となりました。つまり「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」は、「多聞山鐙籠堂浄教寺」(たもんざんとうろうどうじょうきょうじ、以下、浄教寺)との一体型開発に挑戦したのです。寺院名は、承安(1171~75年頃)に平重盛が東山小松谷の邸内に四十八間の御堂を建て、一間ごとに48体の阿彌陀如来を安置、48灯の灯籠を掲げ、鐙籠堂と称されたことに始まるといわれています。

7.2mの吹き抜けのロビーには、宮村弦氏の毛筆による作品が目を引く。「次世代に向けた寺のホテル」がコンセプトのデザインで、寺を身近に感じてほしいという住職の願いが込められている。

ホテルのコンセプトは「次世代に向けた寺のホテル」。寺という一般のイメージを払拭し、デザインホテルのような雰囲気に造られました。エントランス前には浄教寺の象徴でもある高さ3mの灯籠が置かれ、あまりの荘厳さと美しさに、灯籠の前で記念撮影をするゲストの多いこと……。さらにロビーに入ると7.2mもの吹き抜けが広がっています。白と黒でまとめられたロビー空間では、不思議と、一般のホテルのような騒がしい人がいないことに気付きます。皆、静寂であるべき“寺”をどこかに感じているのでしょうか。

ロビーからはガラス窓を通して、隣接の浄教寺本堂内が望める。

とりわけ、白壁に描かれた宮村弦氏による筆のアートは圧巻です。また、500年の歴史ある浄教寺由来の装飾品や美術品が飾られた館内は、まるで美術館のような雰囲気も感じられます。興味深いのは、このロビーに設けられた小さな窓からは隣接する浄教寺本堂が見えるように造られていること。黄金に輝く煌びやかな本堂の様子に、身の引き締まる思いがしました。

モデレートツインの客室(24㎡)。手水鉢をイメージしたアウトベイシンスタイルの洗面台。室内には浄教寺の灯籠をモチーフにした照明も。

3室用意されている靴を脱いで寛ぐ畳のある客室、モデレートクイーン(和)(18.5㎡)。

客室数は167室、ガーデンホテルらしいすっきりとモダンな客室は使い勝手がよく、落ち着いた雰囲気です。手水鉢スタイルの洗面台、浄教寺の象徴である灯籠をモチーフにした照明、洋室のほか、和室を用意するなど、観光地京都らしく用途に応じて使い勝手のいいしつらえがなされました。また室内はシャワーのみですが、ほかのガーデンホテル同様に大浴場が設置されています。大浴場の壁には、男女別に水墨画のような光壁アートを施し、男性用大浴場では力強く「無常」を、女性大浴場では優しさあふれる「輪廻」をコンセプトに描かれています。

大浴場。写真は女性用大浴場で、壁の絵「輪廻」には優しさが込められ、男性用は力強く描かれた「無常」がそれぞれ光壁アートとして表現。

食事にもこだわりがありました。ミシュランガイドにも掲載された福岡の料理旅館「僧伽小野 一秀庵(さんがおの いっしゅうあん)」が県外初出店、このホテル内に「僧伽小野 京都浄教寺」としてデビューしました。とりわけ朝食は大好評で、寺のホテルにふさわしい“朝御膳”が用意されています。個性的な朝御膳でいただけるのは「僧伽ちらし」「鰻のかぶら蒸し」「鰻の卵とじ」「天ぷらと鯛茶漬け」など。店の雰囲気はカジュアル、多くのゲストは「朝のお勤め」の後に朝食をいただきます。

2階にあるレストラン「僧伽小野 京都浄教寺」では朝食、昼食、夕食を提供。(15時30分〜17時は休憩)。福岡県内で飲食業を展開するONOグループの県外初出店。季節ごとに日本特有の情緒を朝食に込め、野菜をたっぷり使った五感で味わう料理に寺のホテルの食処らしさが感じられる。

朝御膳のひとつ「紫雲(しうん)」。奇瑞(めでたいことの前兆)や往生(仏の浄土に生まれること)に現れる紫の雲「紫雲」をイメージ。

「朝のお勤め」とは、6時40分にロビー集合(事前予約)。6時50分から隣接の再建された本堂で30分間、浄教寺第44世住職である光山公毅氏による読経を聞き、終われば御朱印の記帳にも応じてくれます。ホテルも「これほど多くの人が参加するとは思わなかった」とうれしい悲鳴なほど、いまでは定員に達することも多く、ときには参加できない人も出るほど。早朝にこうして読経を聞き、心を整えてから朝食をとる。こうした1日の始まりは、何か説明のできない“心地よさ”に包まれ、清々しい朝となりました。(K.S)

浄教寺の本堂内には春日仏師作「本尊阿彌陀如来」平重盛像が安置され、内陣周りには48灯の灯籠が掛けられている。境内には平重盛の碑(1880年/明治13年建立)も。

本堂で毎朝行われる浄土宗の「朝のお勤め」体験に参加。御朱印帳を持参すれば、住職により記帳される。参加人数が限られているため、早めの予約が必至。

三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺京都市下京区寺町通四条下る貞安前之町620番tel:075-354-1131客室数:全167室室料:要問い合わせ施設:レストラン、大浴場、「多聞山鐙籠堂浄教寺」(隣接)www.gardenhotels.co.jp/kyoto-kawaramachi-jokyoji

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