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「年功序列が全然通用しない」昭和世代が理解に苦しむZ世代のトリセツ

  • 2020.12.6
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1万人を超える若者と活動を共にし、若者研究の第一人者である原田曜平さんは、Z世代について「“自己承認欲求”と“発信欲求”が強く、自らの個性を大切にしている」と説明します。これからの時代を担うZ世代の若者たちとうまく接する秘訣とは——。

※本稿は、原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

ビジネスイメージ
※写真はイメージです
なぜ「フェイスブックよりインスタ」なのか

「ゆとり世代」のインフルエンサーであり、ツイッターやインスタなどの合計フォロワー数が160万人以上いる「ゆうこす」こと菅本裕子さん(1994年生まれ)が、私とある雑誌で対談した時に、こんな話をしていました。

「私たち(ゆとり)世代が若い時に使っていたmixiやフェイスブックは、『人とのつながり』を重視するメディアでした。しかし、そこで過度に人とつながったことで、『SNS疲れ』するユーザーが続出しました。その反動で、私たちより下の世代(Z世代)は、つながりよりも『発信すること』がメインのツイッターやインスタグラムが主軸になっていたんです」

確かにmixiやフェイスブックは、知り合いを見つけ、つながり、「交流する」ことがメインのSNSですが、ツイッターやインスタはどちらかと言うと「発信する」こと、または発信する人を「見ること」がメインのSNSであり、こうした「発信型のSNS」の普及とともに育ったことがZ世代の「自己承認欲求」や「発信欲求」を高めたのかもしれません。

Z世代は「自己承認欲求お化け」

日頃からたくさんのZ世代と接している私も、彼らのことを「自己承認欲求お化け」と心の中で思ってしまうシーンが日々、本当にたくさんあります。

例えば、ある大学生が「ある仕事で長野に来ています」とインスタに投稿していたことがありました。でも私は、彼が本当は免許合宿のために長野に行ったことを知っていました。

例えば、ツイッターやインスタグラムのプロフィールに、自分を大きく見せようと「プロ女子高生」や「プロ女子大生」と書いているZ世代の女子がたくさんいます。しかし、彼女たちの多くはただの女子高生や女子大生であり、一体何が「プロ」なのか分かりません。

SNSマーケティングをやっている会社でバイトをしているある女子大生は、バイトのことを前述の男子同様「仕事」と呼んでいます(免許合宿を仕事と呼ぶよりかはマシだが)。

その彼女が手伝って作った、あるインスタグラムのアカウントのフォロワー数が20万人を超えました。それ自体は大変素晴らしいことだと素直に思いますが、「全ての女子高生が一回は見たことがあるアカウントを作ることができた」と解説してくれたのは、いただけませんでした。

若い女性がスマホでインスタグラムを見ている
※写真はイメージです

そもそも全ての女子高生がインスタをやっているわけではなく、また、20万人のフォロワーがいるアカウントは世の中にはいくらでもあるので、「全ての女子高生が一回は見たことがある」ということはほぼあり得ません(何を根拠に言っているのかは可哀想なので聞きませんでしたが)。

「話を盛る」のもZ世代の特徴

ある恋愛リアリティー番組に出演したことがある高校生男子は、恋愛リアリティー番組がZ世代に人気ということもあり、インスタグラムにたくさんのフォロワーがいます。いわゆる「インフルエンサー」として、様々な企業から、その企業の商品をSNSで宣伝するとお金がもらえる、いわゆる「案件」と呼ばれる仕事をしており(これは「仕事」と言ってもよい)、月に20万円くらい稼いでいるそうです。

これ自体はすごいことだと思いますが、高校生なのに常にタクシーで移動し、おじさんの私が羨ましくなるくらい豪快なお金遣いをしていました。完全に図に乗っており(本人にその自覚はないだろうが)、大学にも行かず、これで稼ぐと言っていましたが、今はもう恋愛リアリティー番組に出ていない彼の人気や注目度は今後下がっていく一方で、きっと案件も減っていくことでしょう。そもそも月に20万円では、大人になってから豊かな生活を送ることはできないのですが、あまりそのことは分かっていないようでした。

こうした「自意識過剰」で「嘘」の多い彼らのSNS投稿を目撃し、辟易してしまうこともたくさんありますが、まさにこの点こそがZ世代の大きな世代的特徴なのです。

「for me」意識の高すぎるZ世代

私は、この彼らの「一見見えにくい過剰な自意識」を「ミー意識」と名付けました。

原田曜平「Z世代」
原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)

もちろん、昔から若者は自意識過剰であり、自分のことだけしか考えられないわがままな生き物だったと思います。しかし、長らく若者研究をしてきた私の実感で言うと、「ゆとり世代」が若かった頃まではまだ辛うじて、年功序列や縦社会的な感覚、組織に尽くす「for all」の感覚が残っていたように思いますが、Z世代の間でそれは大きく減り、代わりに「for me」の感覚が非常に強くなってきているように感じます。

ただし、これは必ずしも欧米のような個人主義化が進んだというわけではなく、あくまで同調志向の中で自意識を高めるという、昭和世代が理解するのには難しい感覚です。

「ミー意識」の強いZ世代は、周りから「いいね」という承認をもらって生きてきたせいか、また、多くの大人の寵愛を受けて育ってきたせいか、「プチ万能感」を持っていることも特徴です。ただし、この万能感も一見見えにくいので、「プチ」としておきます。

「プチ万能感」を持つZ世代の脆さ

「Z世代白書2020」によると、「上に立つリーダーになりたいと思う」(Z世代30.3%、25歳以上17.1%)、「今の自分の社会的地位を維持しさらに高めることに力を注ぎたい」(Z世代38.0%、25歳以上26.5%)、「近い将来、実現可能な目標(夢)がある」(Z世代58.1%、25歳以上41.8%)などの項目で、Z世代の数値は上の世代より高く、彼らの「プチ万能感」を示していると言えます。

なお、プチ万能感を持つZ世代は、繊細さと脆さも同時に持っていることにご注意下さい。

同白書でも「日常生活にストレスを感じている」(Z世代60.6%)、「日常生活に満足していない」(Z世代58.5%)、「孤独を感じることがある」(Z世代56.1%)などの項目でZ世代の数値は上の世代より高く、彼らは「プチ万能感」と「脆さ」を併せ持っています。

数年前にアメリカのコロンビア大学に行った時に、学生課の方が「今のアメリカの若者は自信満々なところとものすごく脆いところが特徴です」と言っていました。ひょっとすると、世界中のZ世代の間で、この「ミー意識」からくる「プチ万能感」と「脆さ」が共通の特徴となっているのかもしれません。

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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