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「現代奴隷」は世界に4千万人 コロナ禍で悪化する労働搾取・性的搾取【奴隷制度廃止国際デー】

  • 2020.12.2
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奴隷制度は歴史の教科書や遠い国の出来事ではない。現代でも、世界では4千万人を超える人たちが「奴隷」として強制労働を強いられたり、人身売買や性的搾取の標的となっている。さらにその傾向は、パンデミック禍でさらに悪化していると専門家たちが警告している。(フロントロウ編集部)

12月2日は「奴隷制度廃止国際デー」

毎年12月2日は、「奴隷制度廃止国際デー(International Day for the Abolition of Slavery)」。この日は、1949年に米ニューヨークで行なわれた国連総会で、『人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約』が採択されたことにちなんで制定されたもの。

画像: 12月2日は「奴隷制度廃止国際デー」

以来、「何人も奴隷にされ、または苦役に服することはない。奴隷制度および奴隷売買は、いかなる形においても禁止する」という世界人権宣言第4条を踏まえて、あらゆる形での奴隷制度の廃止を願い、組織犯罪防止条約をはじめ、人身売買に関する条約が策定されている。

現代にも存在する「奴隷」として扱われる人々

「奴隷」という言葉からは、貧しい国から船などで移送されてきた人々が、劣悪な環境で労働を強いられている姿を想像するかもしれない。そんな光景は、小説や映画に出て来る作り話で、現実にそんな扱いを受けている人々がたくさんいるなんて信じられないかもしれないが、国連の国際労働機関(ILO)が2019年に発表したところによると、奴隷制撤廃に関するさまざまな条約が策定された後も、世界では4030万人以上の人々が、いまだに何らかの現代奴隷制の被害者となっているという。

現代奴隷制撤廃を目指す英チャリティ団体「Anti-Slavery International(アンチ・スレイバリー・インターナショナル)」が解説している、現代における「奴隷」の定義は、自分の意思に反して労働を強いられていることや、“雇用主”と称する人物や企業などから物のように所有され管理され、搾取されていること、そして、行動や生活の自由を制限され、人間性を奪われ、人身売買の道具のように扱われていること。

4000万人以上いる現代奴隷のうち、71%が女性、25%が子供が占める。過半数の2490万人以上が強制労働をさせられているほか、1500万人以上が望まない結婚生活を送らされているという。

画像: 現代にも存在する「奴隷」として扱われる人々

強制労働を強いられている人たちの大半が民間企業で働いており、人々の家を掃除したり、私たちが日々着ている衣料品を製造したり、果物や野菜を収穫したり、漁業に携わったり、スマホや電動自動車などに使われる鉱物の採鉱などに従事している。

それとは別の480万人の人々(女性が99%を占める)は、望まない性産業への従事を強いられ、性的搾取の対象にされている。

パンデミックの裏で増大するリスク

“使う側”の人間たちにとっては、莫大な富を生み出すビジネスとなっている現代奴隷。だからこそ、なかなか根絶の兆しが見えないが、人権を踏みにじられ、劣悪な生活を強要され、健康リスクに晒されている人々を少しでも減らそうと、近年、各国はさまざまな取り組みを行なってきた。

しかし、2020年初頭から世界的に広がった新型コロナウイルスは、現代奴隷の撲滅を目指す動きに大きくブレーキをかけてしまうだろうと、国連の専門家たちは警鐘を鳴らしている。

国連大学政策研究センターで現代奴隷制プログラムを統括するアンハラード・スミス氏は、パンデミックは、少なくとも以下の3つの点から、現代における奴隷問題に悪影響を及ぼすだろうと推測している。

①すでに労働搾取の状態にある人々や、どうにかして奴隷としての扱いから解放された人々(サバイバー)たちの健康リスクが高まる
→人口過密で衛生状況も劣悪な労働者収容所などで暮らしているため、感染予防が充分にできない。もし感染した場合に、医療制度で保護されていないため、充分な治療が受けられない etc.

②パンデミックの影響により貧困に直面した人々が、奴隷状態に陥りやすくなる
→奴隷制を促進してしまう要因である貧困や財政危機により、低賃金労働をせざるを得ない人々の母数が増える。雇用側がより安く使える労働者を求める傾向が高まることで、搾取を行なう余地が大きくなる。教育システムの停止により、児童労働を強いられたり、児童婚をさせられる子供が増加する危険がある etc.

③奴隷制対策関する政府の対応に遅れや中断が生じる
→ パンデミックによる社会と経済の混乱により、奴隷問題への対処や資金の投入が一時停止となったり、遅延が生じてしまう etc.

ソース:国連大学政策研究センターが立ち上げたプロジェクト「Delta87」にスミス氏が寄稿した『The Impact of COVID-19 on Modern Slavery(COVID19が奴隷制度に及ぼす影響)』より一部抜粋して引用

こういった危機を踏まえ、国連は、11月30日に50名以上の人権活動家や有識者による声明を発表。パンデミックと社会経済的脆弱性や搾取リスクの増大には直接的な繫がりが認められているとしたうえで、各国の政府は、より奴隷問題に関して強固な姿勢を持って取り組み、被害者たちの保護に努めるべきだと呼びかけている。(フロントロウ編集部)

記事内の写真はすべてイメージ画像です。

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