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藤原季節×細川岳ら若手俳優が熱演 もがき苦しみ悩む人に勧めたい『佐々木、イン、マイマイン』

  • 2020.11.28
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(c)「佐々木、イン、マイマイン」

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、佐々木のように全裸にはなりませんが、コールをされると応えるべくテンション爆上がり石井が『佐々木、イン、マイマイン』をプッシュします。

●『佐々木、イン、マイマイン』

2016年に公開された映画『ケンとカズ』は、前所属の「映画芸術」でインタビューを担当した最後の作品だったこともあり、非常に思い入れの深い一作です。出演していた俳優陣のその後の活躍も思わず追ってしまいます。今年1月期に放送されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)にも出演し、映画・ドラマに途切れることなく活躍を続けている毎熊克哉、『風の電話』『どうしようもない恋の唄』など出演作では鮮烈な印象を残し続けているカトウシンスケ。そして、ケンとカズの後輩にあたるテルを演じていた藤原季節。主演2人はもちろん、子犬のような佇まい、悪にも正義にもどっちにも染まることができる独特の雰囲気の藤原季節さんに妙に惹かれました。

以降、『何者』や『沈黙 -サイレンス-』など、出演シーンは決して多くないながらも、“藤原季節だ”と分かる存在感がどの作品でもあり、クレジットで名前を見つける度に、順調にステップアップしているんだな、という謎の親心を勝手に抱いていました。その中でも、若松プロダクションを舞台とした映画『止められるか、俺たちを』で演じた荒井晴彦役は最高でした。イライラしたときの動き、タバコの持ち方、吸い方など、荒井さんの完コピとも言える立ち居振る舞い。彼が相当な研究をして取り組んだのが分かりました。

現在放送中のドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)、来年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』への出演が決まるなど、お茶の間にもその名を響かせている藤原さんですが、紛れもなく彼の代表作であり、今後のキャリアを重ねていく上でも重要な一本になること間違いなしなのが、主演作『佐々木、イン、マイマイン』です。

『佐々木、イン、マイマイン』で藤原さんが演じるのは、俳優として鳴かず飛ばずの日々を送る石井悠二。本作についてのインタビューなどでも語っていますが、自分自身や周囲の俳優仲間の境遇とも重なるところが多かったようです。それもあってか、一足先に売れた友人役者(村上虹郎)と今後の身の振り方について語らうシーンでは、もがき続けている悠二の哀愁とともに、藤原さん自身の役者としてどう生きていくかという覚悟も垣間見えます。

あらすじとしては、悠二の高校時代と27歳の現在を描きながら、絶対的な存在だった“佐々木(細川岳)”との日々を悠二が思い返し、現在の自分自身を見つめ直していく物語です。もはや、出演しているだけでその作品を間違いないと思わせてくれる萩原みのり、30代でも高校生を違和感なく演じきれる森優作、『HiGH&LOW』シリーズにも絶対ハマるであろうダーティーさと格好良さを同居できる遊屋慎太郎、2020年映画界の驚きの1人・小西桜子と、今後の活躍が期待される若手俳優がズラリなのですが、本作のもう1人の主役である佐々木役の細川岳がとにかくすごい。

佐々木は、常に“バカ”ができる学校一のムードメーカーで、「佐々木コール」が発生すれば、教室でも町中でも全裸になってしまうクレイジーなキャラクター。程度の差こそあれ、「俺の周りにもあんな奴いたなあ」と思い返す人もいるかもしれません。悠二が佐々木らと過ごしていた高校時代の日々は、特別なことは一切していないのに、これぞ“青春”と呼ぶべきもの。しかし、佐々木の家庭は母親が不在、父親も常に外出、お金にも困窮していることが明らかになるにつれ、不穏な空気が漂っていきます。それでも佐々木を“可哀想なやつ”には本作はしていません。

佐々木は自分を憐れむようなことはせず、自分自身を肯定し続けます。そして、そんな佐々木の存在に知らず知らずのうちに多くの人が救われていた。悠二が高校時代に佐々木からの何気ない一言によって、役者を志していたように。佐々木の底抜けの明るさと時折見せる寂しさ、そして誰にでも愛される無邪気さ。シーンごとに別人のような表情になる佐々木役の細川岳さんにしびれました。

本作はバッティングセンターが印象的な形で登場します。同じタイミングで決められた球数が投げ込まれるバッティングセンターの機械。最初からあっさり打てる人もいれば、何度やっても打てない人もいます。でも、タイミングさえ掴めば打てるようになるし、“ホームラン”も打てるようになる。かといって、ホームランを打つことが正解ではないし、楽しみ方も人それぞれ。人生も同じ。当たり前ではありますが、自分の人生を“勝ち”と思うも“負け”と思うも、どう楽しむかも自分次第。ただ、打てないなら自分を理解して、打てるように工夫するのか、打てないことを楽しむのか、その選択は必要です。本作の悠二と佐々木の姿から、そんなことを思わずにいられませんでした。

(石井達也)

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