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俳優・小関裕太の“旅、写真、自分”

  • 2020.11.26
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俳優の小関裕太さん。軽井沢に前回来たのは、高校生の時、スキーをしに来たのが最後だそうだ。
「前回は雪の軽井沢の景色を楽しんだんですけど、今回はまた秋の終わりで景色が全然違うなと思いました。ちょっと季節が変わるだけで風景が変わるものですよね。それに当時はビールが飲めなかったので、グルメもそうですけど旅の味覚を楽しむ軽井沢は初ですね。新鮮でした」と軽井沢の短い旅を振り返る。俳優という多忙な仕事をしながらも、旅と写真という趣味を大切にしている小関さん。軽井沢という観光地で束の間の撮影時間を設けた。気持ちのままにファインダーをのぞく小関さんに、旅と写真について話を聞いた。

「旅行は大好きです。国内も海外も。ひとり旅がほとんどです」
海外だと、バックパッカーとしてユースホステルなどに宿泊するようなカジュアルな旅を好む。他の旅行客と顔を合わせるのも好き。その場で知り合った外国人観光客と情報交換をしたり、その得た情報で予定を決めたりするのだそう。その日の気分でどこかへ出かけたり、旅人とその場で友達になったり…とその行動はかなり大胆なようだ。

旅とは、その時の自分を見つめ直す時間そのもの

小関さんにとって旅とはどういうものなのだろうか。
「悩んでいることがあったり、なんか癒されたいなぁと思って旅に出て、綺麗な景色を見たりして“ふとした瞬間”に自分のことを振り返ったりするんですよね。意外と成長できている自分を実感したり。大変な時期ってやっぱりそういうことは気づかなかったりするので、“ふとした瞬間”をつくる、自分を見つめ直す時間こそが旅なのかなって思います」
旅の醍醐味は、新しい発見・経験・価値観だという。旅先で触れる新しい価値観を通して、過去の自分よりちょっとでも成長している自分に気付けたりする…その時間そのものが旅だと語る小関さん。だからこそ、ひとり旅を好むのかもしれない。

「別に友達と行く旅が嫌いってわけではないんですけど、そこはやっぱり自由に写真を撮りたいのが大きいかもしれません。これ撮りたいな、もっと撮りたいな、次あそこで撮りたいな、などが結構僕は秒単位で切り替わるんです。さっきまでは、目的地があそこだったけど、途中で会った旅人の話を聞いたら目的地が変わったり。その変わっていくこと自体を楽しんでいる部分が大きいですね」
確かに、自由気ままに写真が撮りたくて、どんどん気分が変わっていくのでは、友達と合わせるのは大変かもしれない。
「友達は『気にしないで』って言ってくれるんですけどね(笑)。でも、どんなに仲が良くても絶対少しは気にする。少しでも気にすると自由な想像がストップしちゃうから、それはなにかやっぱり違う気がする。だから絶対制限がない、自分だけの時間が好きなんですよ」
小関さんにとって、旅とはただ楽しい観光をするだけでなく、自分のアイデンティティを追求する、とてもクリエイティブでストイックな行為なのかもしれない。

とはいえ、このコロナ禍では、そもそも旅ができない状態。旅欲はどう満たしていたのだろう?
「自分が昔撮った写真を見返してましたね。昔の旅を振り返っていた。でも、旅欲を満たすために昔の写真を見ていたというより、今はそういう時期じゃないのかなって思ってました。世の中が落ち着いて、行けるようになったらその時にリラックスや楽しいことをすれば良い。今はそうじゃないということは、頑張る時期なのかな、って」
行きたい気持ちをどう抑えるかではなく、そもそも今はそうじゃないんだと頭を切り替えられていたからこそ、ポジティブな時間を過ごせるのだろう。
世の中が落ち着いて、行ける状況になったらまず行きたいところはカンボジアだという。
「カンボジアの遺跡で、“ジャングルに飲み込まれている”所があるんですよ。その表現にすごく魅力を感じたんです。(もう動いていない)遺跡が廃墟になって、どんどん山々に飲み込まれていくというのが凄いなって。もうそろそろ飲み込まれてなくなってしまうみたいなので、まだ遺跡が見られるうちにそこへ行きたくて、ちょっと焦ってます(笑)」
行きたい場所もなかなかユニークだ。そういう情報はどこから得るのだろう。
「本もトラベル雑誌もWEBも見るんですけど、一番は旅仲間からの情報ですね。波長が合う人と旅先で出会って、会話して・・『あそこ行った?』みたいな会話を交わす。そうやって広がっていく感じが好きなんです。一回の旅でも人脈が広がる感覚が好き。価値観や世界も広がっていくんです」

写真自体が、旅なんだと思う

小関さんにとって旅と写真はセット。というよりも、「写真自体が旅なんです」と語る。「初めてファインダー覗いたとき、すごくびっくりしたんです。デジタルカメラだったんですけど、カメラの向こう側の景色はひとつなのに、ファインダーの中では、明暗や画角、色味を好きなように選ぶ。好きなものを撮りたくなるから、好きなものを探す。好きな明るさ、好きな画角、好きな色味・・まるで自分の性格を左目だけで探しているみたいですごく面白い。だから、写真は自分探しそのものなんです」

「僕は役者なので、役じゃない自分がわからなくなることが特に若い頃は多かったんです。写真で自分を探す。旅で自分を探す。だからそのふたつは自然と時間軸がリンクしている。旅も写真も、その時その時の自分が表現されているんですよね。だから常にセットなのかなって思ってます」

撮る旅先であえて意識する、「らしさ」

今でも印象的に思っているのは、初めてひとり海外旅・ニューヨークだそう。
もともと、ジャイアント・ピーチ(ティム・バートンがプロデューサーとして携わっている1996年公開のアメリカ映画)やアイ・アム・レジェンド(ウィル・スミス主演2007年公開のアメリカ映画)など、ニューヨークが舞台の映画が好きで、映画の中の景色としてニューヨークの街に憧れがあったんです。もちろんなかなか行ける場所じゃないので、ずっと日本の中でアメリカっぽい写真を撮ってました。電線のない青空とか、ネオンとか。だから初めてニューヨークへ行った時は、『本物のニューヨークを撮ってる!』という実感が凄かったですね。仕事柄エンターテインメントの本場であることもあって、刺激の多い旅でした。
『撮りたいものを撮っている』という実感が初めての場所にして強烈に刻まれた旅だったんですね」
ニューヨークに行っている間に和食の素晴らしさを心から実感したのだそう。
そこで初めて感じた「日本らしさ」ってなんだろう?という感情。それからは、旅先で、“その国らしさ”を意識するようになったのだそう。
「写真の撮り方がすごく変わったんですよ。その国らしさを知る・旅行を行く行き先によって全く変わる。撮ってる自分も変わっているから、その場所と、その時の自分が撮った写真に反映されている。写真は奥深いです」

触れるから得る。深い理解を自分に刻んでいく旅

「学校の社会科の授業で木って習いますよね。針葉樹林とか。その頃に信州あたりに行く機会が多くて、だから授業で習ったことを、目で見ることってすごく大切だなと思ってるんです。ああ、白いなとか細いんだなとか、習った通りだなって。実感して肌で覚えているのがきっと大人になっても刻まれているんだと思います」

それはインタビューの舞台である軽井沢の旧朝吹山荘「睡鳩荘」の見学をした小関さんから出てきた会話。朝吹家の別荘に招待されたという経験が実際にある現場案内の方から、軽井沢の別荘について説明を受けたことから、とてもリアルに感じたのだそう。
「実際に子どもの頃にこの別荘に来たことがあるという方の言葉を直接聞けるっていうのは、ただ見学するより、より魅力を感じる。実際に体感することの醍醐味って、やはり旅ならではですよね。それだけは、ネットや雑誌では味わえない」
小関さんは、まっすぐ話す人の目を見て話す。本や雑誌だけでなく、“目の前にいる人の言葉”を信用して、自分に取り入れていくことで新しい価値観を吸収していくのだろう。そして、それこそがまさに小関裕太の“旅”なのだ。

ちなみに今回、小関裕太の軽井沢旅の短い時間の中で、象徴的な1枚を見せてほしいとお願いした。
彼から帰京後に届いた一枚が、こちら。

@yutakosekiHarumari Inc.

2020年秋、25歳の小関裕太の“いま”を、秋の軽井沢で。

取材協力:軽井沢タリアセン /睡鳩荘

【小関裕太】

stylist/Satoshi Yoshimoto
hair&make/SHUTARO(vitamins)

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