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「部下が成長しない、主体性がない」と嘆くリーダーがしている致命的な勘違い

  • 2020.11.26
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優秀な部下を育てることは、管理職に求められる大きな仕事のひとつ。しかし、人材育成法の正解がわからず、悩む管理職は多いと聞きます。「上司塾」を主宰する人材育成コンサルタント・吉田幸弘さんは、「支配型のリーダーシップをとっていた人が、サーバント・リーダーシップに転換を試みるものの、うまくいかない事例が多い」と指摘。「サーバント・リーダーシップ」への意外な誤解とは――。

※本稿は著者・吉田幸弘『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

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支援型リーダーシップをとったのに部下が成長しないワケ

指示した仕事をしっかりやってくれてありがたいのですが、もっと部下に主体的に動いてもらいたいと思うことはありませんか。

大手サービス業の商品企画部のリーダーAさんは個人の実績は抜群で、皆から尊敬されており、部下にどんどん指示を出していく「支配型リーダーシップ」をとっていました。

支配型リーダーは、リーダー自身が主役であり、部下は指示・命令通りに動くべきと考えています。どんどん指示・命令を出して部下を動かします。部下にとっては動きやすいのですが、言われたことしかやらない部下が出てくることが多くあります。

Aさんは部下にもっと仕事を任せていかないと部下が成長しないので、上長から「改めるように」と言われたとのことで、私の研修に参加されました。

私は「支援型リーダーシップ」を推奨しました。「支援型リーダーシップ」は、いわゆるサーバント・リーダーシップです。「サーバント・リーダーシップ」とは、部下たち一人一人の自主性を重んじつつ、成長を促すリーダーシップです。部下が主役であり、リーダーは補佐的な役割を果たします。部下がタレントであり、リーダーはプロデューサーといった位置づけです。支配型はリーダーが主役なので、正反対の考え方です。

支援型は部下に奉仕するという方法をとることで、部下は「仕事を任せてもらえている」とリーダーに感謝の念を持ち、リーダーに貢献するようになるのです。

そのためには、できる限りリーダー自身が主体となって動く業務を減らすことです。極力、部下に仕事を振っていきます。リーダーは、プレイヤーとしての仕事が少なければ少ないほどいいのです。部下に「補佐するから主体となって動いてよ」と伝えて、「できるだけ『自分で動かない』を意識してください」と、リーダーのAさんにアドバイスしました。

ただ、「任せる」はリーダーのAさんもすでに取り組んでいたのです。

先日もAさんは言われたことはきちんとこなすので安心して任せられる部下Cさんに、今回は主体的に仕事に取り組んでほしいと、来年度の商品ラインナップの企画を作成してもらうことにしました。その際、Cさんに主体的に動いてもらおうと、(×)「Cさんの好きなようにしていいよ」と全面的に任せました。しかし、Cさんにその後どうなったかを聞くと、残念ながらCさんは自分で主体的に企画を進めることができず、結局は企画が完成しなかったそうです。

「支援型リーダーシップ」への大誤解

なぜCさんは主体的に企画を進めることができなかったのでしょうか。

ビジネスウーマン
※写真はイメージです

じつは支援型は誤解を生みやすいのです。

常に、リーダーが部下の補佐に回るのがいいわけではないのです。

支援型であっても、時に先頭に立って部下を主導する必要があるのです。

たとえば、「来年度の商品ラインナップの企画書をつくって」と漠然と指示するのではなく、「東京オリンピックと結びつく商品」「エコに基づく商品」など大枠を示して指示するのです。

Cさんにとって主体的に動くのは初めてなので、「大枠はこうで……」という指示をつけるべきなのです。

また、仮にCさんがうまくいかない場合、仕事を取り上げます。リーダーは部下の仕事を奪ってはモチベーションを落としてしまうと感じるかもしれません。部下が主体的に進められないのなら、「(○)この仕事はCさんに任せるのはまだ早いな。私が仕切るから、言ったとおりに動いてくれればいいよ」と奪うのもありです。

ただし、その際はきちんと説明することが条件です。リーダーが主導で動き、部下に補佐をしてもらいながら、再度、時間をあけずに、主体的に動くチャンスを与えます。

決して仕事を奪ったままにしないことが重要です。仕事を取り上げるのは一定の期間です。

同じ仕事でも主導役と補佐役によって見える景色が異なり、立場を変えることで仕事のヒントが見つかります。

部下が主体となって動く場合は、しっかり支援していけばいいのです。一見、荒療治のように見えますが、全面的に任せるより、部下の成長スピードは加速していきます。

優秀な部下には「助走期間」を設ける

優秀なプレイヤーがリーダーになって苦労している話をよく耳にします。

プレイヤーとリーダーは仕事内容が全く違うわけですから、一からのスタートです。苦労するのは仕方ありません。

そこでプレイヤーからリーダーに昇格したときにスムーズに仕事を移行できるように、次世代リーダー候補の部下にはマネジャーになる前の「助走期間」を設けておくといいのです。非公式なナンバー2、マネジャー補佐のような仕事を昇格前に経験してもらうのです。

たとえば、経営会議の資料を一緒に作成したり、あるいは管理職の会議に同席させたりなど、自分のやっている仕事の一部を教えて、手伝ってもらうことです。業務をあらかじめ覚えておくことで、リーダーに昇格した後も、仕事がスムーズにできるようになるでしょうし、俯瞰的な視点で仕事を見られるようになるメリットもあります。

しかし、それ以上にお願いしたいのが人材育成です。リーダーに昇格して一番苦労するのが人材育成だからです。エースプレイヤーである次世代候補のリーダーは優秀ですから、部下に対して「なぜこんな簡単なことができないのだろう」などと葛藤することも多いでしょう。その疑似体験として人材育成をしておくのです。

指導方法は、次世代リーダーに任せるが吉

実際に、人材育成で問題になるのが、「指導の任せ方」です。一度、次世代リーダーに指導を任せたら、うまくいっていないなと思ったり、もっとこんなやり方があるのにと思ったりしても、口出ししないで任せたままにすることです。そうなるのを想定して、(×)「このように指導してください」と方針を明確にすればよいと考えるリーダーが多いのですが、これはよくありません。もちろん、社内や部署のビジョンには従う必要がありますが、他は任せることです。

吉田幸弘『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(ダイヤモンド社)
吉田幸弘『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(ダイヤモンド社)

部下に対して先入観を持たせないこと、エースプレイヤーに自分で考えて部下指導をしてもらうこと。人材育成の大切なポイントです。人は、100人いれば考え方も100通りあり行動もそれぞれ違います。将来エースプレイヤーがリーダーになったときには、いろいろなタイプの部下を育成することになります。

人材育成には、数学などのように明確な答えがありません。(○)「指導方法は任せますよ」と指導方針を伝えず、部下が困ったら手を差し伸べるという方法がいいのです。

この「試行錯誤」が、次世代リーダーとしての成長につながります。実際のリーダーに昇格したとき、その効果が表れてくるでしょう。育成のためにも積極的に「試行錯誤」させていきましょう。

吉田 幸弘
コミュニケーションデザイナー・人財育成コンサルタント・上司向けコーチ
経営者・中間管理職向けに、人材育成、チームビルディング、売上げ改善の方法をコーチングの手法を使ってコンサルティング活動を行なっている。16年間のBtoB営業で2万人への対面プレゼン経験および11年間の管理職経験で累計100人の部下を育成した経験をもとに「営業力アップセミナー」「褒め方・叱り方・伝え方をベースにしたコミュニケーションセミナー」「モチベーションアップセミナー」も開催。リーダーの総合力をアップする「リーダー塾」も主催。著書に『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(ダイヤモンド社)など。

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