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元薬草植物園が蒸留所に。自然の恵みを活かす〈mitosaya 薬草園蒸留所〉へ。【千葉県・大多喜町】

  • 2020.11.22
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漢方の原料となる薬草。千葉県・大多喜町には、かつてその薬草に特化した植物園があった。今、その地には「自然からの小さな発見を形にする」二人がいる。今回は、自然からの小さな発見を形にする蒸留所〈mitosaya 薬草園蒸留所〉を訪れました。

“この場所でしかできない”プロダクト。

アールグレイや緑茶をベースに、萩の花や葛の花など、季節ごとに異なる植物をブレンド。「芽が出て花が咲いて散るまでを、この目でつぶさに見られるのは、まさにここでしかできないこと」と山本さん。

イラストレーターの山本祐布子さん、蒸留家の江口宏志さん夫妻がこの地に移り住んだのは2年前の秋。フルーツや植物を原料に蒸留酒を造る場所を探していた江口さんが見つけてきたのは、広大な敷地に約500種類の薬用植物が植えられた元県立の薬草園。ボロボロだった施設を改修し、住居と加工を行う蒸留所を少しずつ形にしていった。

蒸留所の入り口の左右には、植物園時代からの和漢植物の標本が並ぶ。中へと足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが要となる蒸留機。

江口さんが造る蒸留酒、“オー・ド・ヴィ”はフランス語で「命の水」という意味。果物を発酵させ、幾度か蒸留することで出来上がるお酒は、生命のみずみずしさに満ちたパワフルな香りに圧倒される。月に1度、オンラインショップでの販売のみだが、この“唯一無二”とも呼べる芳香に魅せられた人々が心待ちにしていることもあり、数分でソールドアウトすることも。「加工、醸造、蒸留といった一連の工程をすべて自分たちで行うため、生産個数が限られてしまって。仕込んだ果実によって、発酵の状態も蒸留の回数も異なるので、完成までの時間も予定通りにはいかないんです」(江口さん)

施設内を見学できるオープンデーを定期的に開催。ショップを兼ねたテイスティングルームはサンルームのように柔らかい光が全方位から差し込む。
ずらりと並んだ和漢植物。

一方の山本さんが手がけるのは、敷地内の植物をブレンドしたオリジナルのハーブティー。「子供たちと敷地内を探索中に見つけた業務用の高速乾燥機。これを使って何か出来ないか考えたときに、思い浮かんだのがハーブティーでした。ただ、私は専門家ではないので、本来の漢方では使われないような花の部分を活用するなど、あくまでも自己流(笑)」(山本さん)

“オー・ド・ヴィ”は100ml2,240円、500ml9,370円。ハーブティーは1,500円。
入り口は小さな階段が目印。木々のトンネルをくぐり抜けた先に現れるのは薬草園。

江口さん、山本さんともに、薬草や果実のもつ効果や効能を謳うことはない。二人が目指すのは、あくまでも“自然の恵みを活かすこと”。「実と莢」に由来する〈mitosaya〉の名前には、そんな願いも込められている。薬草植物園発の“この場所でしかできない”プロダクト。この先の展開も楽しみだ。

〈mitosaya 薬草園蒸留所〉

千葉県夷隅郡大多喜町大多喜486
0470-64-6041
※施設内を見学できるのはオープンデーのみ。開催情報ほか、新商品の発売日などはホームページやインスタグラム(@3tosaya)で確認を。

(Hanako1190号掲載/photo:Norio Kidera text:Yoshie Chokki)

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