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井手上漠が謳歌する、「男女らしさ」からの解放

  • 2020.11.20
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2018年のデビューは衝撃だった。
第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに出場し、DDセルフプロデュース賞を受賞。その後「可愛すぎるジュノンボーイ」としてネットはもちろんマスメディアにも登場し大反響を呼ぶ。

その登場は「かわいい」の一言に尽きた。

彼or彼女の存在を、LGBTQ+的な文脈で語るのも自由だけれど、井手上漠を目にした時に、みんな、「男なのに」とか「女らしい」とかいう些末なレッテルを貼るのが馬鹿らしくなるくらい「かわいい」、「美しい」と直感的に感じたし、事実、圧倒的にカワイイのである。それ以上でも、以下でもない。

今回の撮影のテーマは「グラデーション」。
男らしいとか女らしいとか、およそ性別やジェンダーで語られる2軸は、結局はグラデーションの中の「程度」であって、すべての“らしさ”は、ひとつの「美しさ」というまとまりの中の位置関係でしかない。誰にでも、どんな存在でもその「男軸と女軸の美しさ」の幅の中を行き来出来る。自称男だって、自称女だって関係ない。すべては美意識のグラデーションなのだ。今回、まさにそのテーマを体現してくれる撮影だった。

そして、井手上漠のTwitterのプロフィールには「いでがみばくです、性別ないです」とある。それで十分。

ワンピース¥79,000(税抜)/AOI WANAKA、その他/スタイリスト私物Harumari Inc.

Harumari TOKYO編集部が10コ以上年の離れた井手上漠くん(※今回は愛称を込めて「くん」づけにする)の登場に対して思ったこと。それは、ジェンダーニュートラルが当たり前になる未来であり、その先にある、男女関係ない「美しさ」が存在することの再発見だった。美しいという感動に、それが男なのか女なのか、ほんと、どうでもいい。

美容に、メイクに、ファッション。メンズライクな女性ファッションとか、女性らしく振る舞う男性の登場、とか言っている場合じゃなくて、「あ、これは10年後はみんな、あたりまえになるぞ」という風に感じたのだ。

そして、今回、俗に言う「かっこいい」と「かわいい」の2軸のスタイルを表現していただいた井手上くんに、最近考えていることを、いろいろ聞いてみた。

「私、結構韓国が好きで韓ドラばっかみてます。コロナで外出自粛の期間とかずっと。今も、「私のIDはカンナム美人」っていうドラマにハマっています。整形美人の女の子とイケメン男子が恋をするっていう。で、その女の子にはちょっといじめが酷くて。顔のことで。それでまあ決意をして整形をするんですけど、その整形がバレたりとか、顔を変えてもうまく人生が行かなくて、っていう中でクールな、すごく、飾らないイケメン男子とどんどん恋いに惹かれあって、楽しい人生を見つけていくっていうちょっと変わったラブストーリーなんです。このテーマ、すごい深いなあって、今も観終わって余韻が抜けませんね」

と韓流ドラマにどハマりしている話があり、登場する女の子の「美にストイック」な心理に深く考えさせられたという。それは、自分自身の「見た目」に対する意識の変化もシンクロしているようで、テレビやメディアに出演して以降、「みられる」という意識が肥大していく中で、井手上くんのファッション観の変化も起きていた。

ジャケット¥108,000(税抜)、パンツ¥82,000(税抜)/ともにAOI WANAKA、その他/スタイリスト私物Harumari Inc.

「ファッションはこの3年間でだいぶ変わったかな?と思っていて。結構Tシャツにボトムスとか、自分の体のラインをあんまり見せないファッションだったので、それもそれで体つきは男だし、隠したいところは隠すっていうやり方だったんですけど、ローラさんとかすごく過度な露出で、自分のタイトなところ見せたり、そういうのを見ていた時に、別にいいかなっていうか、それがそれで自分らしさかなみたいに思いはじめて、結構タイトなものとか体にフィットするものを全然恥じなくていいよってなりました。だから結構今までは、フワッとして、ダボっとして可愛い系だったんですけど、結構ピチッとして体にフィットする服を着るようになってから、キレイめな感じにジャンルを変えたかなって思います」

自分らしさをポジティブに捉えて、それを美しく魅せようという意識。そこには葛藤もあったかもしれないけれど、ローラや渡辺直美といった井手上くんにとってのミューズの存在に勇気づけられながら、自分をバージョンアップさせていったという話。

そして、メイクについても自意識と美意識の試行錯誤を語ってくれた。

「メイクは、プライベートでは自分でするんですけど、でもだんだん濃くなってると感じます。これって誰しもあると思うんですけど、薄く薄くって思っても、つい濃くなっちゃったり、やっぱり自分にしかわからないコンプレックスとか、自分にしかあんま感じない嫌なところとか、結局化粧で、なんかね、隠しちゃったりするじゃないですか。でも結局やっぱりナチュラルが一番自然体というか、可愛いとはわかってるんですけど、この3年間をみてみたら、高1に比べたらすごくメイクが濃くなってて、まあでもそれはそれでいっかと思うんですけど、もう1回高1のような自然体な感じに戻したいなって思います。メイクってやっぱり挑戦するのって難しくて、それが自分にあってると思ったらずっと続けちゃうんですね。でもこのお仕事してたら、すごく、使ったことない色とか太めな線を引いたりとかで新しい自分に出会って、これも似合うんだ〜とか、すごく感じることが多いから、そういう意味では楽しいです。今日のメイクも個人的には、前のやつよりも後半のやつ方が、すごいよくって」

さて、この韓流ドラマを語り、見た目とファッションのバランスを考え、自分のコンプレックスと向き合ってメイクを試行錯誤する井手上くんの話を聞いて編集部が確信したこと。それはやっぱり「美しい」ことを追求し、新しい自分を発見する喜びは女の特権でも男の不文律でもなく、誰もが感じ、誰もが享受することをもとめていい時代がやってきている、ということに尽きる。

井手上くんのように「自分らしさ」を素直に追求している人たちと会うほどに、HarumariTOKYO読者の中心である30代が抱える「自分らしさの呪い」がいかに狭い世界の話か、を感じてしまう。自戒の念を込めて。

これほど素直に、自由に、自分と向き合える井手上くんが本当にうらやましいと思うのだ。

「男だから」、「女だから」という議論をしている時点ですでに自分の中に意識の壁をつくっているこということ。壁を取っ払おうとか言っている以前に「壁がない」人だっているのだ。だったら私たちの前に立ちはだかる壁ってなんなのだろう?

男なのにメイクやネイルを楽しむ人が増えてきている。男なのにスカートを履く人がいる。それは、男女の壁を壊した人ってわけじゃなくて、そもそも壁がない人たちなのだ。

「結構男の子は、モテたい子が多いじゃないですか。けど、あんまり肌質を変えたいとか、美意識には走らないんですよね。私の場合だったら、モテたいって思ったら中身を変える前に外見を変える派なんですよ。で、外見を変えて、自信をつけて、中身も変えていきたい!みたいなそういう考え方なので、だから、結構肌質を変えたり、髪質を変えたり、ナチュラルでも可愛くしてたら可愛いって言われてそれが自信になって、心もクリアになるのかなみたいな。そういう人なので。だから男の子とかも、スキンケアも普通にしたり、でも多分恥ずかしいんでしょうね。お前そんなんしてんの?みたいな、そういういじりが嫌なんでしょうね。わかるんですよ、気持ちは。でも、時代が時代なので、10年後ほんとにそうなってると思うんですけどね」

ほら、井手上くんの前には壁どころか、「…なのに」という前提条件すらない。だって、モテたいんだったら外見変えよう。肌質変えよう。それに尽きる。井手上くんは、それを「かわいい」と評したけど、肌質のいい男は「カッコいい」とも言われる。かわいいとカッコいいにも、本質的には違いはない。モテるって結果を生むには代わりはない。

さて、こういう話を読んで、読者の皆さんはどう思っただろうか?

まだ「違和感」を感じている人もいると思う。でも、井手上くんの言うように10年後は男女らしさを超えて、みんな外見の美しさを追求し、メイクをし、スキンケアをして「美しい=可愛いorカッコイイ」を楽しむ時代になっている。それは間違いない。

本当?
では、今回の特集を是非読んで欲しい。まずは男目線のジェンダーニュートラル特集。メイクやネイルや日傘、スカートを楽しむオトコたちの「本心」を聞いて、そのリアルを感じてみてほしい。

それでもピンとこない人、最後に井手上漠くんからのメッセージをどうぞ。

「(男がスキンケアやメイクをするべきではないという人たちがいて)そういう人が次は馬鹿にされる時代がくるんです。うん。お前、あー言ってたじゃんって。逆に馬鹿にされる時代だからねって。みとけよっていう感じです(笑)」

「私は私で、10年後も、変わらずマイペースで、好きなことをやっていたいです。多分今とは全く別人のわたしなんだろうけど、それはそれで愛せるような、自分を愛せるような人でありたいと思います。ほんと、どうなるかわかんない。別人だと思いますよ。私もどんどん“進化”しているので(笑)」

井手上漠くんの、これからの“進化”に注目だ。

撮影:藤田一浩
スタイリスト:鈴江英夫(H)
ヘアメイク:松本未央(GON.)

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