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「眼鏡は直せない」投稿話題「接着剤」の種類や耐久性、使用NGの物は?メーカーに聞く

  • 2020.11.17
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接着剤の正しい使い方は?
接着剤の正しい使い方は?

身近な物が壊れたとき、「接着剤」を使って修理する人も多いと思いますが、うまく接合できなかったり、接合部分が白く変色したりするなどのケースもあります。そんな中、接着剤メーカーのセメダイン(東京都品川区)が昨年末、公式ツイッターで、「接着剤で眼鏡は直せない」「応急処置で使うと修理できなくなる場合もある」と注意を呼び掛け、「知らなかった」「差し歯に使って怒られた」などの声が寄せられました。

接着剤の適切な使い方などについて、同社の担当者に聞きました。

皮膚が触れる部分は使用NG

Q.そもそも、接着剤は何種類あるのでしょうか。

広報担当者「日本接着剤工業会(東京都千代田区)によると、接着剤は水を溶剤としている『水性形接着剤』、他の物質と化学反応して固まる『反応形接着剤』など、大きく分けて9種類あります。それらを、さらに主成分で分類することができます。さらに、適した素材や硬化までのスピードなどで細分化され、例えば、当社だけでも数千種類もの接着剤があります」

Q.どのような接着剤があるのか教えてください。

広報担当者「主なものを挙げます」

【瞬間接着剤】「反応形接着剤」に分類されます。一番の特長は短時間で硬化することですが、半面、「耐水性、耐熱性が高くない」「振動・衝撃に弱い」「位置調整の時間がとれない」「接着箇所の周辺が白くなる」「柔軟性があるゴム・皮などを接着すると接着部が硬くなる」などの欠点があり、他の接着剤を使った方がうまくいくケースも多いです。

【多用途接着剤】「反応形接着剤」に分類されます。多くの素材に対応でき、耐水性、耐油性、耐熱性、耐振動性に優れ、さまざまな状況に対応できます。当社製品では「セメダイン スーパーX」シリーズが該当し、国内だけでなく世界中の家庭や工場の製造現場などで使用されています。

【木工用接着剤】「水性形接着剤」に当たり、水分の揮発とともに硬化します。木材などの接着に適しています。

【エポキシ接着剤】「反応形接着剤」に分類され、非常に硬く強靭(きょうじん)な接着が可能です。2種類の液を混ぜて使用するものと、1種類の液を加熱して硬化させるものがあります。

Q.昨年末、眼鏡の修理に接着剤を使わないようツイッターで注意を呼び掛けたのが印象的でした。眼鏡の他に接着剤を使ってはいけない物や素材、また、接着剤での修理が難しい物や素材、ケース(環境)はあるのでしょうか。

広報担当者「水に完全に漬かる部分には使用できません。また安全上の理由から、皿、コップの飲み口など、人の皮膚や飲食物が直接触れる部分の接着や補修には使用しないでください。同様の理由で、水槽など、生き物を入れる容器での使用も一部の接着剤を除き、すすめません。

このほか、プラスチックの中でも、『ポリプロピレン』『ポリエチレン』は接着が難しい素材とされています。専用の接着剤であれば可能で、当社製品では『PPXセット』が該当します。

なお、接着強度は接着面積に比例するため、素材としては可能でも『折れ』『割れ』など破損部分の面積が小さい場合は接着剤だけで直すのは困難です。例えば、当社が昨年ツイートした眼鏡のフレームのように、極端に接着面積が小さいものだと接合しても十分な強度が得られません」

接合部分の耐久性や耐久期間は?

Q.接着剤で接合した部分の強度や耐久性、耐久期間は。

広報担当者「当社では、日本工業規格(JIS)に沿ったさまざまな試験を行うことで、どれだけの荷重に耐えられるかを計測しています。例えば、水平方向へのどれだけの力に耐えられるかの試験によると、瞬間接着剤は1センチ四方の接着面積で鉄板同士を貼り合わせた場合、接着面と平行に引っ張る百数十キロの荷重に耐えられます。

ただ、『接着強度』と『剥がれにくさ』は別物です。先述の通り、瞬間接着剤は強度が高い半面、衝撃に弱く、ハンマーでたたくなどすると剥がれてしまいます。一方、水平方向への強度が数十キロ程度でも、衝撃に強く剥がれにくい接着剤もあるので使用目的に合った製品を選んでください。

耐久期間については、使用する環境にもよるため一概に言えませんが、建築用の製品は単純な接着のみであれば、想定年数を100年と設計しているものもあります。そのような製品は紫外線や雨などを再現した試験を行い、過酷な環境でも剥がれないかチェックしています」

Q.接合部の強度が、何らかの条件で弱くなってしまうことはあるのでしょうか。

広報担当者「塗料やインクなどと同様、接着剤も、水、熱、湿度、衝撃、振動などさまざまな外的要因に影響を受けます。そこで用途に応じて、劣化要因に対しての耐久性を持つ接着剤を使用する必要があります。

例えば、自動車部品のように高温下で強固な接着が求められる箇所には『エポキシ樹脂系接着剤』、雨や激しい気温差にさらされる屋外の用途には、熱や水、衝撃にも強い『弾性接着剤』が適しています」

Q.接着剤を使った際、接合部が白くなってしまうことがあります。きれいに接合するコツはありますか。

広報担当者「瞬間接着剤を使用した場合に多く見られる現象で、揮発した成分が空気中の水分と反応して固まり、粉状に付着した状態です。塗り過ぎや、はみ出しをしないようにすれば、ある程度防げますが、硬化が遅いゼリー状の製品はそれでも白化することがあります。

白化物はこすって除去することが可能な場合もありますが、ハンドメード作品など仕上がりの美しさを重視する用途に関しては、瞬間接着剤以外の接着剤を推奨します」

オトナンサー編集部

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