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有機米や果物の絞り粕がハンドスプレーに!? 岩手発のゼロウェイストなものづくり革命!【今週のサステナTips】

  • 2020.11.14
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殺菌作用や防腐作用など、さまざまな役割を持つエタノールは、日々使う手指の除菌用アルコールや化粧品、虫除けスプレーや香水などに欠かせない成分だ。けれども、こうしたエタノールがどこでどのように作られているかにまで想像を及ばせる人は、多くないかもしれない。

たとえ自然化粧品や無添加化粧品と表記されていても、そこで使用されているエタノールの中には、効率的に生産できる石油由来であるものも多く、刺激が強い場合もある。あるいは植物由来のエタノールであったとしても、その製造工程まで開示しているプロダクトは世界的にも稀であるのが現状だ。

そんな中、産地はもちろん製造方法、さらには生産者の顔まで見える100%自然由来のエタノールを製造販売しているのが、株式会社ファーメンステーション。OEMの商品だけでなく、自社製品も数多く手掛ける同社は、岩手県奥州市を拠点に、休耕田で栽培された有機米を発酵・蒸留したエタノールで、まさに「ものづくり革命」を起こそうとしている。

同社が生産する高濃度エタノールは日本酒のような吟醸香が漂い、柔らかでやさしいテクスチャーが特徴だ。化粧品やアロマの原料、オーガニックなアウトドアスプレーやピロースプレー、ハンドスプレーなどに用いられていて、塗布すると、石油由来のものとの明らかな違いに驚くはずだ。

今年10月に同社がローンチしたアルコール濃度70w/w%のハンドスプレーは、全てお米由来の成分を使用。使用されている発酵粕には保湿効果があり、気になる手荒れ対策にもなる。容器には、携行する利便性と環境への配慮から再生PETのリサイクル容器を使用している。

また、虫除けスプレーとして活躍するアウトドアスプレーは、同じくお米由来のエタノールとともに虫の嫌がるアロマを調合。ネパール産フェアトレード精油を用いたアロマは深い香りが特徴で、同国の女性の就労支援にもつながっている。スプレーに配合されている蒸留水には、杉のおがくずを用いて新潟の福祉施設で精製されたものが使われている。

さらに、お米由来のエタノールを蒸留する際に発生する米もろみ粕は、スキンケアソープに生まれ変わる。古くから日本人の体を支えてきた米の麹菌や酵母などは、日本人の肌との相性がよく、洗顔後の肌の突っ張り感がないのが特徴だ。米もろみ粕の持つ抗酸化作用や保湿作用が優しく肌をケアしてくれるロングセラーアイテムだ。

また米もろみ粕の一部は、近くの酪農家の手に渡り、鶏や牛のエサとしても利用されている。発酵食品を食べている動物たちの腸内環境は非常によく、鶏たちの生む卵は高い人気を誇る。こうして米もろみ粕で“腸活”をしている家畜の糞は悪臭がなく、良質な肥料としても使わている。その肥料を使って育てられた野菜は、「循環から生まれた野菜」として人気だ。

加えて同社は、2018年から飲料メーカーと提携して、通常はゴミとして廃棄されるか家畜の飼料に利用されるシードル醸造の副産物である「りんごの絞り粕」を再利用したエタノール精製にも取り組み、お米とりんごの除菌用ウエットティッシュもローンチしたばかりだ。

休耕田で育てられたオーガニックのお米やりんごの絞り粕がエタノールへ、その副産物がまた別のプロダクトへ──どこまでも無駄なく原料を活かしきるファーメンステーションのビジネスは、まさに循環型経済の好例であり、未来のものづくりのあり方を示すイノベーションに満ちている。

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Photos: Courtesy of FERMENSTATION Text: Mina Oba

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