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今さら人に聞けない食の基礎知識|日本酒編

  • 2020.11.1
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dancyuの中でも人気の特集テーマ「日本酒」ですが、酒蔵や日本酒販売店によくつるされている玉の正体を知っていますか?今回はそんな日本酒にまつわる道具や物について解説します。

今さら人に聞けない食の基礎知識|日本酒編
□あの球体の正体とは?

軒下に吊るされる杉玉は酒蔵の象徴。酒林(さかばやし)とも呼ばれる球体はどんな意味があるのか。「天の戸」杜氏の森谷康市さんに伺った。
「今年も新酒ができました、というアピールです」。毎冬、新酒の完成とともに新しい杉玉が飾られる。飾りたては濃い緑色だが、だんだん葉が枯れて茶色く変化していく。秋、すっかり焦げ茶色になった杉玉は、ひと夏を越して味の落ち着いた“ひやおろし”が楽しめるサインだ。
材料に杉の葉を使用する由来にはさまざまな説があり「昔は酒の保存に杉の葉を使ったから」「神宮の参道に植えられているように、杉は神聖な存在だったから」など。理由ははっきりしないが、杉玉は年中掲げておける丈夫な素材の“看板”でありつつ、蔵の外からでも酒の熟成具合がわかる“バロメーター”でもあるのだ。「一石二鳥、よくできた先人の知恵だなぁと感心しますね」。
今や酒蔵だけでなく、日本酒を扱う酒販店や飲食店でも目にする杉玉。現在では専門店などから購入できるが、蔵で自作しているところもあり、浅舞酒造もその一つ。蔵人によってつくられ、昨年末に吊るされたばかりの杉玉は、まだ真新しい緑色だ。

□日本酒は”オノマトペ”がお好き

お燗気分を高める二つの酒器について、「蒼穹」の店主・多田正樹さんに教えてもらった。
酒を注ぐ「トクトク」という音から名がついたとも言われる徳利。定番以外にも一風変わったものがある。
うずくまった鳩の形の「鳩徳利」は、胴体を囲炉裏の灰にうずめて使う。灰の余熱を利用したお燗はまろやかな味わいに。「うぐいす徳利」は、注ぎ口に空気穴の仕掛けが施されており、酒を注ぐと「ピヨピヨ」と鳴き声が響く、愛らしい一品だ。
一方のちろりは、お酒が「ちょろり」とすぐに温まることから(諸説あり)。京都や大阪の一部では、古くからちろりではなく「たんぽ(湯婆)」と呼ぶ習慣があるという。湯たんぽと同様の意味合いだ。
燗つけの際の使い分けにもポイントあり。熱伝導性の高い金属製のちろりは、短時間での燗つけが可能。一方、徳利は陶器やガラス製で熱を伝えにくく、時間がかかってしまう。しかしその分、“ぬるいお風呂でじんわり芯まで温まった”ような角の立たない優しい味になる。
複数の銘柄を楽しむ場合や、すぐに飲みたいときにはちろりを。食事を通して一銘柄を存分に味わうときには徳利を。酒器を知れば、いつもの酒を少しだけ上手に楽しめるはず。

イラスト:かざまりさ 文:森田彩子

※この記事の内容は2018年3月号に掲載したものです。

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