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精神科医が語る! 「自分探し系」の特徴と若者へのアドバイス3つ

  • 2015.5.19
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【ママからのご相談】

高校生と中学生の男の子を持つ40代ママです。先日ある雑誌を読んでいたら、有名な精神科医の先生が、『二世、三世の世襲芸能人を別にすれば、わが国で芸能人になるのは大抵が中央志向や海外志向の強い、地アタマのいいヤンキー層です。 起業家になるのも大抵この層の若者だった人たちです』といった趣旨の発言をされていました。

私の高校時代の同級生でタレントになった子も、会社の社長さんになった子も、地元で大勢の同級生や後輩を束ねていた元祖ヤンキーの人たちだったので、とても納得したのですが、一方、うちの息子たちにはヤンキー性が全くなく、どちらかと言えば、“自分探し系”です。自分探し系の子どもたちがこれから大人になっていく過程で、心がけるべきこととはどのようなことでしょうか?

●A. “自分探し系”の子どもたちの目指すべき方向性は、“ヤンキー系”のようにシンプルではありません。

エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ヤンキー・マイルドヤンキー・オタク・引きこもり・自分探し系……。いずれも2015年の今を生きる若者たちにみられるタイプをうまく表現した言葉だと思います。

精神科医で批評家の斎藤環(さいとうたまき)先生は、こういった言葉で現代の若者を類型化することによって、それぞれのタイプの“良さ”と“問題点”を認識し、世の中を少しでも“健康”な方向へ向けられればと考えていらっしゃる識者の1人です。おそらくご相談者様が目にした記事は斎藤環先生の著述によるものでしょう。

斎藤先生はその著書の中で“自分探し系”の子どもについて、「コミュニケーション能力が高く社交的で場の空気を読むこともでき、傾向としてはスクールカーストの上位に位置するが、他者との関係に生きているため自分を持たず、自分が何者なのかわからない。調子が悪くなると人に依存したり自傷行為やカルトに走ったりする可能性もある」という趣旨の指摘をしており、ヤンキー系の若者のようには目指すべき方向性がシンプルではないことを示唆しています。

ここでは、斎藤環先生と同じく、思春期・青年期の精神病理学を専門としている医師で、都内でメンタルクリニックの院長をなさっているドクターにお話を伺いながら、記述を進めさせていただきます。

●“自分探し系”は、調子が悪くなると問題点が表面化する

『斎藤環先生はやはりその著書の中で、ヤンキー系の人たちには“面倒見のよさ”があるので、介護士や看護師などの“ケア業界”も非常に適した進路であると指摘しています。このように適した方向性がわかりやすいヤンキー系の人たちに対して、自分探し系の人たちは方向性を一つに定めることが難しいと言えるでしょう。

ネットで他人のことを“口撃”しているような人たちの言説をみると、「自分探し系はNPOでの慈善活動などをやって自己満足するが、その実態は薄給で働かされていることに気づいていないだけだ」とか、「収入を得られている人も中にはいるが、その多くは貧乏芸術家や貧乏作家に過ぎない」などのように、相当手厳しい批判をしています。

私は思春期・青年期の精神病理学を専門とする医師としてここ数年そういった言説を注意深く見守ってきた結果、彼らの“自分探し系”に対する嫌悪感の源は、「自分探し系は一見よさそうにみえるけれど、ひとたび調子が悪くなったときに頼りない。リーダーシップが執れない。責任を転嫁する」という部分に端を発していると考えています』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医師)

●70年代に台頭したシンガーソングライターたちは、自分探し系だった

これだけですと、ご相談者様の息子さんたちのような自分探し系のお子さんが夢や希望を持てなくなってしまうので、今度は自分探し系のすばらしいところについて考えてみたいと思います。

1970年代、故・筑紫哲也さんから“若者たちの神々”とまで呼ばれたシンガーソングライターたちの多くは“自分探し系”で、家庭的には薬屋や呉服屋など、“本業そのものは徐々に衰退傾向にある自営の商家で生まれ育った中流家庭”の子弟という共通点があったのです。

『今のわが国では見られなくなった70年代的な中流家庭の自由な雰囲気と、「鶏口となるも牛後となるなかれ」というグローバル化以前の時代の空気の中で育った才能豊かな若者が、自分探しの結果としてフォークやロック音楽というジャンルに集結したことが、“若者たちの神々”が生まれた理由であったと言うことができるのではないかと思います。

小田和正さんは30歳くらいになるまで建築家として生きるかミュージシャンとして生きるかを決めかねていたと自伝で告白していますし、松任谷由実さんにしても、どのようなタイプの若者だったかと考えれば今の言葉でいうヤンキー系でも引きこもり系でもなく、“自分探し系”であったことは、彼らが紡いだ歌詞を読んでみれば、疑う余地のない事実であることが分かります』(50代女性/前出・精神科医師)

●現代の“自分探し系”の子どもたちが心がけるべきこととは?

前出のドクターによると、現代の自分探し系の子どもたちが生きていく上で心がけるべきことは次の3点だそうです。

(1)ある程度まで自分を探してみたら、どこかの時点でいったん、「自分とは○○だ」と決めてみる

(2)「自分とは○○だ」と決めたら、上手く行かなくても簡単には諦めないで、ある程度まで努力をしてみる

(3)それでも上手く行かなかったときは、今はまだそのタイミングではないのだと割り切り、次のチャンスを待つ

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いかがでしたでしょうか。“自分探し系”のお子さんは、とても自分に素直で愛すべき人たちのように思います。自分の中にある“弱さ”の部分を自覚してそれに打ち克つよう心がければ、もともと潜在的な能力には恵まれていますから、きっとすてきな将来をつかめるのではないかと思います。

【参考文献】

・『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』斎藤環・著

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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