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女性活躍推進に落とし穴? 結局、菅新政権で女性は働きやすくなるのか

  • 2020.10.25
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不妊治療への保険適用を選挙公約に掲げるなど、女性活躍社会に精力的な構えを見せる菅新政権ですが、今後さらに求められる課題は何なのでしょうか。しゅふJOB総研所長の川上敬太郎さんが解説します。

女性の就業率上昇の背景

女性の活躍推進は安倍政権によって頻繁に唱えられ、2015年には女性活躍推進法が施行されました。一方で、主に働く女性を支援する意味合いで捉えられることが多く、あえて働かない、あるいはもろもろの事情で働けない女性が、肩身の狭い思いをせざるを得ないケースも見られます。

そのように、活躍する女性像がまばらな状況の中、女性の就業比率は上昇を続けてきました。内閣府の「男女共同参画白書 令和2年版」には、女性の年齢階級別労働力率の推移が掲載されています。

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女性の年齢階級別労働力率の推移(画像:内閣府)

縦軸が就業率、横軸が年齢階級です。15~19歳の層から始まり、年齢層が上がるとともにグラフは上昇を続け、その後就業率はいったん減少し、底を打って再び上昇へと転じます。その形がアルファベットのMのように見えることから、M字カーブと呼ばれています。

M字の底は1979(昭和54)年が47.5%だったのに対し、2019年は76.7%。年を追うごとに就業率が底上げされてきているのがわかります。これら就業率上昇の背景には、ポジティブとネガティブ、ふたつの理由が混在しています。

ポジティブな理由としては、仕事か家庭かどちらかをあきらめざるを得なかった主婦層が、両立できる働き方を見つけやすくなったり、産休や育休などの制度が取得しやすくなったりして、退職しなくても済むようになったことなどが挙げられます。

まだまだ十分とは言えないものの、結婚や出産を経ても職業キャリアを継続したいと考える女性が、少しずつ希望をかなえられるようになってきました。

一方、ネガティブな理由としては、必要な世帯収入を確保するために働かざるを得なくなっていることが挙げられます。実質賃金が伸び悩む中、夫婦共働きでなければ家計を維持できない厳しさを感じている世帯は多く、年金など老後資金の確保に対する不安もあります。

女性の中には男女雇用機会均等法が施行されてからも、十分な働きがいが得られずに活躍の機会を望んでいる人もいれば、“稼ぎ”ではなく家庭での“務め”に特化して、専業主婦として活躍したいと考える人もいます。

菅政権発足後が女性の社会進出に与えるもの

どちらの志向も尊重されるべきですが、2020年9月16日(水)の菅政権発足後、働くことを通して活躍したい女性に影響を与えそうな施策が既にいくつか確認できます。

菅首相が自民党総裁選のときから主張していたのが、不妊治療への保険適用です。

不妊治療にはさまざまな負担がかかります。私(川上敬太郎。しゅふJOB総研所長、ヒトラボ編集長)が所属するしゅふJOB総研が、仕事と家庭の両立を希望する働く主婦層に行ったアンケートでは、不妊治療を経験した女性の約7割が不妊治療中に長期の仕事に就いていました。不妊治療は心身の負担はもちろん、経済的負担も大きく、仕事を辞めれば経済的負担度合いはさらに増すことになります。

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不妊治療当時、「長期の仕事をしていた」女性の割合(画像:ビースタイルグループ)

また、不妊治療のために仕事を休まざるを得ないこともあります。その分を取り返そうと他の日に無理をしてしまうこともあるかもしれません。

さらに、有休がなくなれば休んだ分がそのまま収入減少に直結します。もし不妊治療の保険適用範囲が拡大されれば、全ての課題が解決する訳ではないとしても、その分無理な選択を回避できる余地は生まれるはずです。

菅首相は、男性の育休取得についても積極的に推進する姿勢を示しています。

男性の育休取得には賛否両論がありますが、男性は仕事、女性は育児という暗黙の決めつけが社会に残存している限り、ある程度の強制力を行使して変えて行かなければならない面があります。家庭内での育児や家事のあり方が変われば、女性にとっての働きやすさも向上していくことが期待できます。

デジタル化推進が最重要課題

さらにもうひとつ、菅政権が力を入れている施策の中で注目したいのがデジタル化の推進です。デジタル庁創設の方針を出しただけでなく、河野行政改革担当大臣が積極的にデジタル化の旗振りをし、政府が本気で取り組んでいることが伝わってきます。

コロナ禍で緊急事態宣言が出されたとき、一気に在宅勤務が進みました。しかしそれらの多くは“無理やり在宅”であったため、かえって業務に支障が出てしまったり、生産性が下がったりしてしまったという声が多く聞かれました。

根本的な原因は、在宅勤務でも仕事が滞りなく、かつ生産的に遂行されるように業務設計がなされていなかったことにあります。

象徴的な例として取り上げられたのが押印業務です。他の業務は、オンライン環境さえあればほぼ在宅で対応できるにもかかわらず、印鑑を押すためだけに出社しなければならないというケースが職場のあちこちで見られました。菅政権が進めるデジタル化は、仕事環境を根底から変革させる上で最重要課題のひとつと言っていいものです。

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契約書にハンコを押すビジネスマン(画像:写真AC)

デジタル化が進むことで新たな課題が生まれることも想定されますが、在宅勤務などのテレワークがしやすくなることは間違いありません。空間に縛られない働き方が選択しやすくなれば、女性、男性に限らず、あらゆる立場の人にとって働きやすくなります。

さまざまな女性活躍の模索が必要

ただ、これら政府による一連の取り組みには期待感がある一方で課題も感じます。

菅政権発足当初から指摘されているのが、女性閣僚の少なさです。政権運営において女性視点が弱くなってしまうことはもちろん、女性管理職30%という目標を掲げる政府の方針とは異なるメッセージを発してしまっています。

また、不妊治療や男性育休などの取り組みをどれだけ推進しても、それをきちんと運用できる風土が各職場に醸成されていなければ形骸化してしまうことも気がかりです。

有休取得の義務化などもそうですが、制度を作ったとしても、そもそも休みづらい環境を解消しなければ制度を思うように使えなかったり、休みを取ることが業務のしわ寄せを生んだりして、職場内に新たな亀裂を生じさせることにつながりかねません。

さらにもうひとつ忘れてはならないのが、冒頭にも掲げた、働くこと以外の女性活躍のあり方です。

「女性活躍 = 働くこと」

という限定的な図式が強く認識されればされるほど、働くこと以外の道を選択した人を心理的に追い込んでしまう懸念があります。

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専業主婦のイメージ(画像:写真AC)

政府には家庭運営や子育て、地域活動など、働くこととは違う形で活躍したい人や、働きたくても働くことができない人たちが、最適の選択肢を見つけておのおのの道で輝くことができるよう、施策・メッセージを発信してほしいと願います。

川上敬太郎(しゅふJOB総研所長、ヒトラボ編集長)

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