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旅に出た気分になれる!?外国の建物をイメージしたカワイイ器

  • 2020.10.24
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工房「potier(ポティエ)」を主宰する陶芸家の手塚美弥さんは、大の旅行好き。これまでに訪れた国の光景と食べたものをテーマに制作をするほどです。その器は象嵌(ぞうがん)という技法をベースにしながら、色や模様はざまざま。それぞれの地の空気が伝わってくるような、素敵な蓋物の器をご紹介します。

旅先の出会いから生み出される、さまざまな器

東京都豊島区に工房「potier(ポティエ)」をもち、陶芸教室を開きながら、自らも制作を行う手塚美弥さん。旅が大好きで、これまでに50ヵ国ほど訪れており、制作のテーマを「訪れた場所のイメージとそこで食べた料理」としています。

旅に目覚めたきっかけは、美術大学の陶磁コースで学んでいたころ、夏休みにモロッコへ行ったこと。卒業後には東南アジアからヨーロッパまで計15ヵ国を、約7ヵ月間かけて巡りました。当時からいずれ陶芸を生業にしたいという思いがあり、旅の間には食と陶芸に触れることも意識し、借りたアパートでその地で食べた料理に挑戦することもあったそう。
それ以降も幾度か海外旅行をしてインスピレーションを受け、作品作りに励んでいます。

制作では、実際に見た風景や建物をデフォルメし、独自の形に変化させていきます。より良いデザインになるようにと作業を進めるなかで、現地で感じた空気感などが自然と表れてくるのだそう。
実際に見たままに近いものと膨らんだイメージを形にしたものの両方があり、器によって格好良い雰囲気だったり可愛らしさが感じられたりと印象はさまざま。それが正に、それぞれの国の風土や文化の違いに触れているようで、ワクワクした気持ちにさせてくれます。

難しい手作業により、温かみのある模様が描き出される

器の多くは、土に模様を彫り、その部分に異なる素材を埋め込んで模様を作る「象嵌(ぞうがん)」という技法を用いたものです。
手塚さんは、やわらかい鉛筆か墨汁で下書きした模様を掘り、顔料を混ぜ合わせた土を木べらなどを使って埋め、はみ出した余計な土を落としてから押さえつけて仕上げています。言葉でいうと簡単ですが、土の乾き具合や押さえつけの加減によってひび割れが起きるリスクもある、とても難しい技法なのだそう。手間暇がかかりますが、それによって温かみのある柔らかな模様が生まれるのです。

アルメニアの修道院をイメージしたスパイス入れ

ここからは、私が特に惹かれた蓋物の器をご紹介します。

写真は、手塚さんが2018年に訪れたアルメニアからイメージされたスパイス入れ。首都のエレバンは、ピンク色の御影石(マグマが地下の深いところで冷え固まった深成岩)で作られた壁が多い街で、修道院がたくさんあるのだそう。このスパイス入れは、セヴァン湖という湖にある修道院の色などのイメージをそのままに表現しています。

オレンジ系の温かな色合いやころんとした丸みのある形で、テーブルに置いておくと目にするたびに心が和みそう。ほかにピンク色のものや、背が高いタイプなども作られています。スパイスや調味料以外に、写真右のこんぺいとうのように小さなお菓子を詰めたり、小物入れとして使ったりするのもおすすめです。

Armenia
spice-orange(S) ショートバージョン
8,250円(税込)

ジョージアの教会からは2つのタイプのスパイス入れが

続いては、同じく2018年に訪れたというジョージアの光景から生まれたスパイス入れの2つ。ジョージア正教会のあるキリスト教の国で、記憶に残ったのは教会などの青い屋根だったそう。写真奥のスパイス入れは、実在するゲルゲティ・トリニティ教会の、空の色よりも深い青色をイメージして作られています。

対して手前は、ジョージアの国旗の赤色を少し緩めてピンク色にし、屋根のイメージと組み合わせて…というように、記憶とアイデアを織り交ぜて完成したもの。これを見た陶芸教室の生徒さんが「サーカスのテントみたい」と言ったことから、作品名にCircusが付けられました。

異なる2つの器は、並べて置いておくと街の一角のよう。あなたはどちらがお好みですか?

Georgia
写真奥 spice-blue(S)
6,600円(税込)
写真手前 spice-circus(S)
7,150円(税込)

ナミビアの砂漠や太陽の光を表現した蓋物

こちらは、2013年に旅したアフリカ南部大西洋側の国、ナミビアをイメージした蓋物。海に接した国ですが、その海岸沿いに広大なナミブ砂漠が広がっています。

手塚さんは当初、現地に暮らす人たちのカラフルな民族服のイメージを作品にしかけたものの、うまくいかなかったのだとか。そこでもう一度記憶をたどってみた結果、生み出されたのは打って変わって白色と黒色がメインの器でした。

白色の器の下方には良く見ると細かな模様が入っています。こちらは、地平線まで砂の山々が広がるナミブ砂漠の光景を象嵌で表現したものです。黒色の器にも共通する金彩(きんさい)の部分は、砂漠に訪れた日に目にした、黄金色の太陽を表しています。
試行錯誤の末に行きついた、「荒涼とした光景と、その中にあったキラキラとした瞬間」(手塚さん)の記憶。それを描き出した、美しい器です。

Namibia
futamono13-w(白)/futamono13-b(黒)
各10,000円(税込)

さまざまな国の空気を感じられる器たち

ご紹介したスパイス入れや蓋物のほかにも、プレートやボウル、カップなどさまざまな器が作られています。Instagram(@potier_miyatezuka)やオンラインショップには、器に料理を載せた画像もあり、実際に使うシーンの参考になりそう。また、旅先の写真や記録もあるので、器のもとになった光景を確かめてみるのも楽しいですよ。

オンラインショップ以外では、展覧会での販売が中心です。現在、10月27日(火)まで開催されている丸善日本橋店での4人展「暮らしの中の陶と木と」に参加されているので、お近くの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

また、器作りに興味がある方は、陶芸教室に参加してみるのもおすすめ。予約をすれば教室日以外の日程にオープンしてもらえることもあり、手塚さんの器のB品や掘り出し物を購入することもできるそう。気になる方はぜひ、お問い合わせしてみてくださいね。

writer / ゆりか photo / potier 手塚美弥

取材協力

手塚美弥

工房・陶芸教室 potier(ポティエ)
東京都豊島区東池袋5‐39‐14 加藤マンション1F
TEL:03-3989-6750
※陶芸教室の詳細日程はサイトにてご確認ください。
http://tougei-potier.jp/

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