1. トップ
  2. お仕事
  3. 社員500人で役職者ゼロ! 「自立分散型組織」はどうすれば成り立つか

社員500人で役職者ゼロ! 「自立分散型組織」はどうすれば成り立つか

  • 2020.10.23
  • 695 views

在宅勤務や分断勤務など柔軟な働き方を認める会社が増えている中、より個人の働きやすさを追求する組織として注目されているのが「自立分散型組織」。現場への権限移譲で業務はどこまでうまく回していけるのか、大手法人1100社の人事部門とネットワークを持つWorks Human Intelligenceの伊藤秀也さんに伺いました。

ビジネスの成功を祝う多民族ビジネスの人々のグループ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)
社員500人で役職者ゼロ

「自立分散型組織」とは、会社全体で目的やミッションを共有したうえで、現場が自立的に判断する、いわゆるティール型やホラクラシー型といわれる組織の総称です。

中央の意思決定機関が存在せず、権限と責任は現場に委譲されているという意味では、変化に強く、このコロナ禍でも注目が集まっています。

トライアルされているベンチャー企業も多く、実はわれわれの会社の前身であるワークスアプリケーションズでも、500人ぐらいの規模になるまでは役職が全くない自立分散型でやっていました。

自立分散型をすすめるにあたり、まず重要なのは、その集団が何を目的に組織されて、何を目指してやっているかということが社員全員に共有されること。つまり集団のミッションやビジョン、目標を社員に浸透させるということです。

当社の場合、私が入社した頃は「日本の大手企業の情報投資効率を最大化する」というミッションが、社員の誰に聞いても金太郎あめのように言えるほど、全員がそれを理解していました。

なおかつ自社の強みと全体の方向性を理解したうえで、現場は目標に向かう最速の方法を考えて実行していくという形で運用されていました。

社内調整が少なく、お客様に集中できる

具体的に現場がどう動いていくかというと、まず機能によってチーム分けされます。たとえば、われわれのようにソフトウエアを作っている会社なら、ソフトウエアを開発するエンジニア、そのソフトウエアを売る営業、それを利用するお客様のコンサルタントといった機能に分けられます。そして、その機能に合わせてチーム編成がなされ、定期的な会議やミーティングで担当の業務を協議し、割り振られていくことになります。

こういうやり方が向いているのは、対お客様の仕事。そのお客様に対してサービスやサポートを行う仕事なら、自分の裁量が大きくなるため、より効率的に動けます。

特にITはテクノロジーの進化が激しいので、個人個人が能動的に情報を収集し、それをお客様に展開する。そういう動きが求められるので、変化が多く複雑なものを取り扱う業種は、より自立分散型という方法は向いているでしょうね。

私自身の経験を振り返っても、社内調整をあまりせずにすむので、非常に仕事がしやすかった。生産性も高かったと思います。

大手企業も動きだした

ただし自立分散型は、会社としても個人としても向き不向きがあります。

先程からお話ししている通り、このやり方は組織が向かっていく方向と現場を一致させるためのトップからの情報発信が重要ですから、人数が増えると難しくなります。当社で行っていたのも500人程度まででした。

数千人の大企業なら、その一部に自立分散型を取り入れることは可能です。今ならDX(デジタルトランスフォーメーション)やイノベーションのための組織ができ始めているので、そういった一部の組織を、立ち上げ時から自立分散型にするというやり方です。

日本企業の中でも、大手のIT企業やメーカーなどが、そういう部署を作り始めています。チームにイノベーション人材を入れて、変革を起こしていこうというときに、自立分散型は有効に働く可能性が大きい。

そう考えると、今後は必要に応じて「一社二制度」を進めていくかたちが増えるだろうと感じます。

自律分散型に向かない人

個人から見た場合、自発的に動くよりも指示に従って仕事をするほうが得意な人には自律分散型は向きません。会社としては、自社で集めている人材が、自立分散型に向いているかどうかということがとても重要です。本当に自立分散型で進めるなら、採用時から自立分散型であるというメッセージを出しておかなければいけませんし、そのためには自社でやろうとしているミッション、ビジョンが強固でなければいけません。そういった姿勢を表に出せば、その会社に新しく入る人との齟齬そごも減っていきます。

先日、当社の一部で、数百名規模の適性検査を行いました。27種類の性格因子が出る検査で、例えば独立性が高く他の人と離れて仕事をするのが得意、あるいは独立性が低く、他の人とコミュニケーションをとりながら仕事をするのが得意、といった性格特性がわかるようになっています。やはり独立性が高いと、在宅勤務のパフォーマンスが上がるし、独立性が低いと他の人とウェブ会議でつながったまま仕事をしたり、出社したりしたほうが能率が上がります。これからはそういった特性をしっかり見極めていくことがより重要になってきます。

一方で自立分散型の会社に魅力を感じて転職を検討している人は、その会社が掲げているミッションやビジョンに共感できることが非常に重要です。

日本だと就職より就社。その会社に入っていくかたちが多いので、なおさらその会社が自ら掲げたミッションやビジョンを実現しているのか、その見極めが自身の働きがいにつながってきます。

さらにその会社に入ったら、オープンマインドやオープンコミュニケーションといった心がけも重要になってきます。

つまり自分が個別にお客様に対応していくと、その中で知恵や工夫が生まれますが、それを自分一人で抱え込まずに、オープンマインドやオープンコミュニケーションによって、他の人に展開していく。それによって他の人も強くなり、組織が強くなっていく。そういったことをお互いにし合えるかどうか、ということも考えてみてほしいところです。

会社としても、それを称賛する制度や評価にしていくことが、自立分散型の成功の秘訣になります。

写真=iStock.com

伊藤 秀也(いとう・ひでや)
Works Human Intelligence 経営企画 Div.
2001年、ワークスアプリケーションズ入社。コンサルタント、HR製品の開発責任者を経て、1100社を超えるユーザー会の企画運営を務める。現在は、Works Human Intelligenceの経営企画部門責任者として、経営戦略の立案・企業文化の醸成・組織改革等、幅広く手がけており、年間100名以上の経営者・人事との面談実績を持つ。

元記事で読む
の記事をもっとみる