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弘中綾香の「純度100%」~第37回~

  • 2020.10.23
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ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回はアナウンス部がざわざわするという時期について。

「改編期」

10月というのは、ギョーカイ的にざわつく月である。テレビには改編期といわれる番組が変わるタイミングというのが、大きく年に2回ある。それが4月と10月。

ドラマは3カ月で一区切り、よく聞くワンクールというのはその期間を指している。番組はこの2回に7月と1月を加えた年4回、きっちり3カ月ごとに規則的に変わっていく。何カ月も前から、ともすると何年も前から構想し、キャスティングして俳優さんたちを押さえて、とスケジュール感覚がしっかりしている印象がある。
対して、私の主戦場であるバラエティ番組は始まりも終わりも急なことが多い。正確に言えば、前々から準備をしたり水面下で制作も編成も動いていることは間違いないのだが(編成というのは番組をどの時間に流すのかだったり、番組を新しく始める、もしくは終わらせるなどを決定するテレビ局のブレーン的部署)、私たちに伝えられるタイミングは、公に発表する2、3週間前だったりすることもあるくらい。10月中に始まる番組だったら9月末に収録が始まる。だから、その少し前の9月初めくらいには部長から番組についての話が入る。もうそろそろ来てもいいころだな、という時期にはどこかソワソワした空気が部には流れている。
「誰々があの番組につくらしいよ」とか「誰々と誰々が代わるらしいよ」とかいう噂を聞いたり、部長に声をかけられると何か話があるんじゃないかとドキッとしたり、同僚が部長に呼ばれている姿を見て何を言われているのかが気になったり。私にもそういう時期があった。数がすべてでは決してないけれど、やっぱり番組を一つでも多く任せてもらえるのはうれしくて、新しく番組が始まるらしいと聞くと、自分が選ばれないかな、と願ったりしたものだった。もちろんその願いが叶うことは稀。ほかの誰かがその担当になったりするとショックを受けたり、同僚たちと自分を比べてしまったりした。

入社8年目になると、もう両手で数えきれないほど後輩たちがいる。私にも慕ってくれる子はチラホラいて、昔の私と同じようにみんな思うことはいろいろあるらしく、この時期は相談を受けることが増える。彼女たちより少しばかりキャリアを積んでようやく周りが見えてきた私が伝えられるのは、もうこればっかりは悩んでいたって仕方がないということだ。私たちの力ではどうにもならない要素が多すぎる。
番組が始まるとき、まずメインMCなどの出演者の皆さんが決まる。というかこの方で何をやるのか、と人ありきで内容を決めるということも多いのかもしれない。そこからMCを固めるレギュラー陣が決まっていく。その顔ぶれを見て相性の良さそうなアナウンサーを選ぶ、はたまたアナウンサーがその座組に必要なのかどうかを揉んでいく。バラエティ番組におけるアナウンサーはそのくらい最後の最後に決まるものなのだ。出演者の皆さんありきで、そのあとにパズルのピースを埋めるようにアサインされる。達者なタレントさんだったら進行役もいらないし、今はフリーアナウンサーの方も沢山いるから、元々の席だって少なくなっているのだ。でもだからといって指をくわえて見ていたり、回ってこなかったお鉢をうらやましく思うだけではダメで、結局は誰かがどこかで見てくれていると思って、今ある仕事を精一杯頑張るしかないのだと思う。今ある仕事がちゃんと出来ていない人に新たな仕事を任せようとは思わないから。

かくいう私はどういうツキの回りか、10月から番組が3つ増えた。もはやオーバーワーク気味であることは言うまでもないが、とにかく愚直にひとつひとつやるしかない。

次回:11月13日更新予定

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【弘中のひとりごと】
床暖を解禁しました!快適すぎる。

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