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世界的に人気の「大人の塗り絵」がマインドフルネスのツールとして注目される理由

  • 2020.10.21
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不安が続く毎日…マインドフルネス瞑想を味方につける

よく知られているように、マインドフルネス瞑想とは雑念や無駄な思考のない、静かな精神状態に自分を置くこと。アップル創業者のスティーブ・ジョブズをはじめ、多くのトップ経営者が瞑想を習慣にしていたことは有名ですが、頭の中に情報が溢れたことで起こる脳の疲労を癒す効果があると言われています。

毎日のようにコロナウイルスに関するニュースが報じられる中、私たちの多くは不安な状態に身を置かれています。緊張感を和らげたい時、マインドフルネス瞑想を行なうことで、不安な状態から一定時間でも距離を置くことが出来ます。

「とはいえ、なかなか瞑想状態に入るのは難しい」と言うひとも多いかと思います。インド人講師によるヨガのレッスンでは「瞑想中、なかなか集中できない生徒さんが多いです。雑念が頭の中に現れても、落ち着いてその存在を認め、流すようにしてください」と習いました。日によって、心穏やかに瞑想できる時もあれば、その逆もあったりします。ところが、瞑想に塗り絵を取り入れたところ、雑念が現れる回数が減り、ただひたすら色塗りに没頭集することができたのです。

大学院の研究レポートによる塗り絵の効果とは?

金沢工業大学大学院心理科学研究科のレポートによると、「創作活動を通して心理的な開放感や精神的な安定感を増す絵画療法には様々な技法があるが、絵を描くことを苦手とする人にとっては抵抗感を感じるものが多い。そこで、絵の得意・不得意が関係ない絵画法として「塗り絵」が挙げられる。構造化されている塗り絵は,過度に創造性を要求されないため、精神的な安定感を増しやすく芸術活動の素人にとっては心理療法としての難易度が低く取り組みやすい。また、自由に色彩表現をすることで癒しの効果が得られ、指や手を動かすことで脳の活性化を促すとも言われている」とされています。

また、学術誌「Art Therapy」に掲載された西イングランド大学の研究チームによる論文では、塗り絵が心の安定に効果的だということが証明されました。「約50人の大学生を集め、2種類の実験を行なった中で、被験者には20分の間に読書か塗り絵を行ってもらった。半数が読書から始め、残りの半数が塗り絵から始めたが、最終的には全員が両方を行った。そして、被験者らにその時の気分や不安の程度、マインドフルネス、創造性を測る質問に答えてもらった。タイミングはタスクの前後、さらに読書と塗り絵の間の合計3回。実験で得られたデータをマインドフルネスを測定する指標「Mindful Attention Awareness Scale」で比較したところ、読書よりも塗り絵の方が不安を軽減し、マインドフルネスを向上させる効果が見られた」とのこと。

実際に2種類の塗り絵をしてみて、わかったこと

そこで、筆者も実際に塗り絵をしてみることにしました。大人用の塗り絵は、美しいデザインのものが色々とあります。今回使っているのは、ゴッホの絵画を再現するように同じ色を塗っていくタイプと、曼荼羅(マンダラ)の図案に好きな色を自由に選び、塗っていくタイプの2種類です。

塗り絵 マインドフルネス
photo by Moca Kurio

この2種類の異なるタイプの塗り絵のどちらがマインドフルネス効果が高いのでしょうか?

先出の金沢工業大学のレポートによると「模倣して彩色するように指示された強制選択群と、自分の望む色を使用して彩色する自由選択群に分けて塗り絵を行った結果、強制選択群が自由選択群よりもα波が増加した」とのこと。「強制選択群の方が創造性を要求されないため、精神的に安定したことが考えられる」という結果が出ました。

この結果を、筆者の塗り絵サンプルに置き換えると、色彩見本のあるゴッホの塗り絵の方が、自分で色の組み合わせを考える曼荼羅の図案よりもマインドフルネス効果があると言えそうです。

確かに、疲れているときに着手をしたのは「どの色にしよう」と考えず、雛形を見ながら淡々と着色できるゴッホの塗り絵でした。その後、気力がある時には「好きな色合わせを楽しみたい」と、曼荼羅の塗り絵を手に取るようになりました。

塗り絵 マインドフルネス
photo by Moca Kurio

自由に色を塗れる開放感。カラーセラピーの効果も

着色が終わって、ふと思い出したのが、以前経験したカラーセラピーです。セラピストの方と一緒に大型のフラワーショップに行って好きな花を好きなだけ選び、自分の好みの花束を作るという内容でした。「何も考えず、好きな花だけを選んでください」と言われ、直感で濃淡ピンクのガーベラや、オレンジ色のサンダーソニアといった暖色系の色の花を集めました。

マインドフルネス
photo by Moca Kurio

セラピストの方から「もしかして、過去に色を制限された経験がありましたか」と訊かれました。思えば、子供の頃に母親の好みで白やネイビーの服を着ることが多く、密かに着てみたかったピンクやオレンジ色の服を着る機会がないまま大人になりました。現在のワードローブも白・黒・ネイビー・グレーがメインの私にとって、暖色系は封印された色彩となっています。

そのこととの繋がりがあるのか、筆者が美大生だった頃、デザインの授業で使う色は寒色が多く、教授から「もっと暖色も使って色合わせのパターンを増やしてください」とアドバイスを受けたことがありました。自分から距離のある色を使うと失敗をするのではないかという不安もあり、なかなか手に取ることができず、暖色を使う際には軽いストレスを感じたのを覚えています。

一方、塗り絵にルールや制限はありません。「使いたい色を自由に使っていい」という状況は、深い開放感を得ることが出来ます。みなさんも、買い物中、心惹かれるアイテムに出逢った際に「派手な色だからやめよう」と、自分にブレーキをかけることはないでしょうか。そのような色制限のストッパーをはずし、思い切った色合わせを楽しめるのが、塗り絵の素晴らしさでもあります。

塗り絵の時間は、予想以上に気持ちが落ち着きます。是非、みなさんも静寂の時間を楽しみませんか?

ライター/栗尾モカ

漫画家 / コラムニスト。横浜育ち・シンガポール在住。国際線CAを経て出版社へ。女性誌「STORY」等で10年間取材をした経験をに描いたコミックエッセイ『サロン・ド・勝負』(KADOKAWA)『女のネタ帖』(学研)がある。現在、SingaporeのYoga Instructor Certificate Courseに通学中。また、スパイスの魅力に惹かれインド人料理研究家からアーユルヴェーダを用いた料理を学んでいる。好きな言葉は「SPICE UP YOUR LIFE」=(日常を活気づけ、面白くしよう)どんな時でも、笑いや思いやり、小さな幸せを忘れずに...。Twitter でも発信中。

栗尾モカ

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